2022/12/14

クロマグロのキャッチ&リリースに関して資源管理先進国との比較

クロマグロのキャッチ&リリースに関して

昨年8月に水産庁はキャッチ&リリースに関しては科学的な検証が必要であり、現時点では認められないという説明をした。ところが1年4か月が経過しても進展は全くない。
海外ではそのような調査、研究は10年以上も前からあちこちで行われている。理由は「キャッチ&リリースは貴重な資源管理のツールだが、生存率の高さが証明されて有効となる」であり、それを証明するために調査研究が進められた。その結果、生存率が高いことが証明されて、キャッチ&リリースは有効な管理ツールと認められた。


今年9月にNHKが放送したクロマグロ生態調査
タグ&リリース


太平洋クロマグロがアメリカ西海岸まで回遊することは50年以上前からわかっているが、2014年に国際会議で厳しい資源管理が採択されると、アメリカはすぐにキャッチ&リリース後の生存率の調査を開始した。結果は40匹のクロマグロにポップアップタグを打ち、1本はファイティングタイムが長すぎた(280分)ことが原因で死亡、1本はサメに食べられて死亡、なんと38本が生存したという報告だった。生存率は95パーセントだった。


必要以上にキープしない。生存率の高いリリースに心がける。
タグ&リリース


太平洋クロマグロのリリースに関する論文はこの1つだが、大西洋クロマグロのリリースの論文は複数ある。その論文だが、日本から出されたものは一つもない。
クロマグロを世界で一番漁獲して、世界で一番食べている我が国だが、調査研究は全く進んでない。
ある人がこう言った「我が国は都合の悪い研究はやらない」
アメリカの友人に広域漁業調整委員会の議事録を送ったら呆れ果ててたことは言うまでもない。
「日本は原始時代から進化してないね」


これは埋め込み式のアーカイバルタグ(電子タグの一つ)。
タグ&リリース



お腹を切って埋め込む。
タグ&リリース



優しく、素早く。
タグ&リリース



これはポップアップタグ(ポップアップサテライトタグともいう)時間を設定して体から切り離し浮上する。
タグ&リリース



海外ではリリース後の生存率の調査に多く使われている。
タグ&リリース



2011年にはアメリカの釣り雑誌に紹介された。死亡率は3.4パーセントだった。
タグ&リリース



カナダでは死亡率は5.6パーセントと公的機関が発表している。
タグ&リリース



デンマークでもスウェーデンでもタグ&リリースは釣り船が協力して行われている。
タグ&リリース



アイルランドでも2017年からタグ&リリースによる調査は始まっている。
タグ&リリース

アメリカのフィッシングルールブック(無償)にはリリースのために必要なことがたくさん記載されている。
タグ&リリース




キャッチ&リリースに関する広域漁業調整委員会での質疑応答。もう呆れるしかない水産庁の応答である。

2022年3月7日 日本海九州西広域漁業調整委員会
https://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_kouiki/nihonkai/attach/pdf/index-216.pdf

○合瀬委員 まずは今回のように遊漁の方が調整委員会に出ていただいて、お話をされる
ことは大変いいことだなというふうに思いました。資源管理については漁業者だけでなく
て、様々な方が意見を交わすことが重要だというふうに考えております。
その上で、納得感の話ですが、先ほどキャッチアンドリリースの話がありました。キャ
ッチアンドリリースについては、放流した後の生存性のこともあるので、取りあえず採捕
という枠の中で考えるということでありましたが、以前の委員会において今後科学的な検
証を進めるという話もあったと思います。そういう研究が、どこまで進んでいるのか、そ
ういうことも含めて説明された方が納得感が得られるのかなというふうに思いました。
以上です。
○田中会長 これは研究だから、機構の方で誰か答えられるのか。無理だな。
○松尾室長 沿岸・遊漁室長の松尾でございます。
キャッチアンドリリースをどう評価するかということについて、昨年の漁場調整委員会
でも議論が一通りあったと思います。科学的なエビデンスが不足しているということで、
それができない以上は、キャッチアンドリリースだからいいとか、あるいはキャッチアン
ドリリースにつきましては、生存率の問題に加えまして、取締りの実効性ということも問
題としてございます。ですので、昨年の時点でキャッチアンドリリースについて、扱いを
分けるようなルールづくりというのはまだできないということで、御説明申し上げたとこ
ろなんですが、それは残念ながら状況としては変わっておりません。
○合瀬委員 つまりキャッチアンドリリースを認めるかどうかについては、禁止ではなく、
現在、科学的な検証を進めているので、取りあえずは禁止ということで理解すればよろし
いんですね。
○田中会長 藤田部長。
○藤田部長 合瀬委員、御意見ありがとうございます。
まず段階といたしまして申し上げますと、昨年は、もう要するに遊漁によって釣るとい
うことを禁止をせざるを得なかったという状況がまずありまして、その後は、今回の委員
会指示のように、クロマグロ全体の枠が増えるというものをうまく利用いたしまして、遊
漁における扱いをもう少し前進をさせたという形になっておりまして、あの段階で、遊漁
におきまして、キャッチアンドリリースでどれぐらい、生きるか死ぬかみたいな話をなか
なか研究するところでは、たどり着いていないというのが実情でございます。
今後、こういうことで、かなり遊漁関係の方も理解を頂いて、クロマグロの管理を取り
組むという中では、例えばビルフィッシュトーナメントだと放流するパターンみたいなの
がちゃんとルールがあって、タグづけを行っているみたいなのありますけれども、そうい
うキャッチアンドリリースするときのやり方とか、どういう形でやれば、うまく効果とい
いますか、経過が把握できるのかみたいなことは、次の段階として、これはまだ我々は宿
題として遊漁関係団体ですとか、研究機関の方とどういうことだったら調査できるのかと、
協力を得られるのかということを検討していく必要があるというふうに考えているという
状況でございます。
○合瀬委員 とてもよく分かりました。ありがとうございました。
○田中会長 キャッチアンドリリースだから、出ていいというふうになると、これがまた
漁業者の方から不平不満が出てくるんじゃないかというふうに思います。漁業者の方は割
当てに達したら、採捕停止命令という形で全く操業できない形になっていますので、今回
はそれに合わせた形にはなっているわけです。


同じ太平洋クロマグロの漁獲だが、アメリカはスポーツの漁獲が651トンで全漁獲の74パーセントである。対して日本は20トン(2021年)、全漁獲のたった0.2パーセントである。海は国民の共有財産とするアメリカと、国民無視の日本は天と地の差がある。
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将来予測も東太平洋(EPO)は2024年が遊漁(スポーツ)1,228トン。対して西太平洋(WCPO)は遊漁の漁獲は無し。
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アメリカの研究機関が発表した太平洋クロマグロのリリース後の生存率調査
※一部抜粋
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165783619302681

In the eastern north Pacific, Pacific bluefin tuna (PBF, Thunnus orientalis) support seasonal fishing operations aboard a diverse fleet of commercial and recreational vessels. Recent PBF stock projections have identified a reduced spawning stock biomass, which has resulted in management restrictions and capacity reduction in all U.S. west-coast fisheries. Although recreational fisheries only account for a minor component of west coast harvest, a bag limit reduction from 10 to 2 fish person−1 day−1 was implemented in 2014. Considering the potential for increased number of PBF released in the fishery, this study assessed post-release disposition using a combination of electronic (Wildlife Computers sPAT) and conventional tags. Additionally, biochemical indices of capture stress were measured in the blood and coupled with tagging data to better understand the physiological response that is mounted as a result of time on the line (fight time). PBF were caught using standardized recreational fishing gear following protocols and techniques currently used by the southern California fleet.
Survivorship was based on tagging data from 40 electronically tagged PBF ranging in size from 82 to 148 cm FL (∼11-63 kg) and blood sampling was performed on an additional 49 PBF (80 to 170 cm FL). Tagging results yielded only one immediate mortality for the fish with the longest fight time (280 min; 97.5% survivorship).
Additionally, there was also one predation event that occurred seven days after release; if the predation is included as a capture-related mortality, the combined survivorship estimate is 95%. Results from the blood chemistry analyses show a direct correlation between fight time and the levels of blood stress indicators. When compared with the electronic tagging data, it is evident that the physiological impact of the angling event does not appear to be sufficient to impede post release survival, at least when time on the line is less that that examined in this study (< 70 min). Collectively, these data show that when handled properly, PBF can tolerate and survive the acute effects of capture and release when using west coast recreational fishing methods.
As previously demonstrated in several fisheries around the world, catch and release can be a valuable management tool, but it is only effective if post-release survival rates are high (Muoneke and Childress, 1994; Maunder and Aires-da-Silva,2014).

2022/05/30

連載6 いよいよクロマグロ釣りが解禁です。しかし・・・

5月22日、突然ビッグニュースがアメリカから飛び込んできた。日本はまだ釣り禁止期間である。


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それはアメリカのカリフォルニア沖で長年の友人である88歳の日系人が大きなクロマグロをジギングで釣ったという報告だった。しかも手動のリールである。俺の仲間は還暦を過ぎたら電動リールを使うものがどんどん増えたが。還暦男のお父さんと同年代の人が手動のリールで釣ったのである。もう驚き、感動、感激でしばらく興奮が止まらなかった。


さて、日本もクロマグロ釣り解禁まで残り2日となった。ところが海外からは素晴らしい報告ばかりだが、国内は違反、密漁、そんな報告が次々と来た。もう腹が立つやら、情けないやら。

違反ばかり繰り返していたら未来はありません!!



勘違いしている人が多いので確認してください。

採捕報告は釣り人がやります。船長は報告する必要はありません。またリリースしたマグロも報告をする必要はありません。キープ(陸揚げ)したマグロだけ報告してください。

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昨年の報告に「遊漁船の名称・都道府県名」という項目が増えてます。

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資源管理とか、資源保護に関心が薄いのは釣り人だけではありません。こんな統計もありました。
消費者を対象に調査したところ、そういう意識は調査した国の中で最下位だったそうです。サスティナブルに関しても下から2番目のロシアでさえ70パーセントなのに、日本はダントツ最下位の40パーセント。小学校から教育のやり直しですね。


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出典(シーフードレガシー)
資源管理を可能にする条件とは。漁業という日本の問題を考え続ける(前編) | SEAFOODLEGACY TIMES



ただし、釣り人に同情もあります。あまりにも不公平で不透明な遊漁対策。日本のクロマグロの漁獲枠は令和4年度で11,102トン。そのうちまき網が5,246トンである。それに対して遊漁の枠はたったの40トン。全体の0.36パーセントである。しかも遊漁枠と言うのはない。留保枠の一部を回すので、漁業に突発的な何かが起きたら、その遊漁への配分はさらに減らされる。

令和4年度の漁獲枠
全体 11102.4トン
まき網(小型30kg未満)1398.3トン
沿岸(小型30kg未満)2759.8トン
まき網(大型30kg以上)3847.7トン
沿岸(大型30kg以上)2116.2トン
遊漁 40トン(全体の0.36パーセント)
※遊漁枠というのはない。留保枠の一部が遊漁に回される。


昨年は20トンで釣り禁止となった。その理由は「資源管理の枠組みに支障をきたす」。
全体の0.2パーセントが資源管理に支障をきたすという理由は

どこかの独裁者と全く同じである!!!

さらに追い打ちをかけるように、枠に達して釣り禁止になったら「キャッチ&リリースも認めない」。先進国でキャッチ&リリースを認めてないのは

そんなヒデェ国は日本だけである!!!

その理由はと聞くと「リリース後の死亡率などの科学的検証が必要」だと。

そんなことはとうの昔からわかっているんだから

とっくにやっとけ!!!

そして1年近く経った今も水産庁はなにもやってない。

忘れてんのか?


前号でリリースの必要性を説明した。

その中で委員会で決めたことに関してはパブリックコメントを必ず実施するように水産庁に求めたが、今回もそれは無視された。民主国家としてはあるまじき行為が平然と行われている。理由は圧倒的な数の反対意見が届き、それに対して不透明、非民主的、非科学的な中で決めている現状では対応は困難と考えて逃げたのだろう。他の省庁の官僚は「パブコメも取らずに決めるのは考えられない」と話していた。

逃げるな水産庁!!!


こんな記事も書きました。しばらく人気ランキングで1位でした。

原始時代から変わらぬ日本の釣り 科学的なルール作りを


太平洋クロマグロは日本だけの魚ではない。太平洋狭しと泳ぎ回るのだ。

あの持久力、あのスピードがあるからこそ世界中を泳ぎ回れるのだ。


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アメリカもカナダもアイルランドもノルウェーもスウェーデンもニュージーランドも、海を国民共有の財産と考えている国は

どこでも科学的調査はとっくの昔からやってます!!!

海外の中でもアメリカのスポーツフィッシングはとんでもなく恵まれている。1950年代はほとんどクロマグロの釣果はないが、釣り人口が激増してクロマグロ釣りもどんどん釣果報告が増えている。ここ10年間は500トン前後で推移し、昨年は記録的に釣れたと言うから1000トンを超えているだろう。それでも途中で釣りが禁止にならない。対してまき網の漁獲はここ数年は限りなく0トンに近い。

どうして、こんなに違うの?

アメリカ太平洋側の漁獲(太平洋クロマグロ)
    IATTC資料(漁業) ISC資料(漁業) スポーツ(遊漁)
2013年 0トン      0トン    809トン
2014年 404トン    401トン    420トン
2015年 96トン     86トン    399トン
2016年 347トン    316トン    368トン
2017年 480トン    466トン    450トン
2018年 39トン     12トン    484トン
2019年 269トン
2020年 117トン
2021年 0トン          推定800~1000トン

ISC資料

IATTC累積漁獲量
https://www.iattc.org/en-US/Data/Cumulative-catch



アメリカの太平洋側のクロマグロのバッグリミットは1日1人2匹である。

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1日で1トンオーバーは珍しくない。

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アメリカの1950年代は遊漁(スポーツ)よりまき網(Purse Seine)の方がはるかに漁獲は多かった。

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ところが2000年以降は遊漁(スポーツ、赤丸)のほうがまき網(青丸)より多くなる。釣り人口の激増と経済効果の大きさという明確な根拠が釣り人優先の施策に繋がった。これもアメリカの釣り団体と釣り人が団結して国に訴え続けてきたからである。



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黙っていたら何も変わらないのだ!!!



そして漁業法の改正により、やがて遊漁も資源管理の枠組みの中に入っていきます。

そこで水産庁に強く言います(水産庁は俺のSNS等は全て毎日チェックしてます)

公平、透明に、科学的根拠に基づき、さらに経済効果も考えて遊漁(スポーツ)枠を設けてください。

アメリカは昔からコマーシャル(漁業)とレクリエーショナル(遊漁、スポーツ)を分けてますが、多くの魚種で遊漁の方が枠が多いです。


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なんだかんだと言ったけど、今年は我慢するしかない。違反ばかりでは国民の理解を得られません。

クロマグロの資源は2018年から大幅に回復してます。おそらく6月の10トンと言う枠は1週間で到達すると予想してます。皆さんがリリースに専念してくれれば月末まで釣りができますが。

美味しくない夏の時期はリリースを心がけて、9月以降の枠があるのだから、美味しくなり始める9月以降のクロマグロをキープするようにしたらよいと思います。年末までに枠を消化しきれなかったら翌年1月以降に繰り越されます。2月に友人にいただいたクロマグロを食べたけど絶品でした。夏のクロマグロとは雲泥の差でした。


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涎が・・・

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いつかはこんな大きなクロマグロを日本で釣ってみたい。

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最後に

水産庁の遊漁室長の広域漁業調整委員会での発言。俺には何が言いたいのか、何度読んでもわかりません。外人さんはさらにわからないでしょう。

○遊漁室長 水産庁

今回、キャッチ・アンド・リリースの位置付けというのが、この指示の中ではキャッチ・アンド・リリースを最初からする予定の遊漁が認められるのかどうかというところには正面から答えられるような形になっておりません。飽くまでもクロマグロを、遊漁者はクロマグロを採捕してはならないということになっておりますので、狙ってやるということを認めていいかと言われたら、それは私ども、認められないとしか言いようがありません。

ただし、その結果として釣れたものについてキャッチ・アンド・リリースをしたということであれば、その委員会指示の違反にはならないということでお答えしております。

キャッチ・アンド・リリースの扱いにつきましては、今回の御指摘も踏まえまして、今後このような規制を行っていく場合にはどのように位置付けるかということについては検討課題とさせていただきたいと思います。




2021/09/18

連載3 太平洋クロマグロは増えているか(後編)

クロマグロの水揚げが激減、沿岸マグロ漁師の叫び!

2016年4月、まずは1本釣りクロマグロの西の代表「壱岐島」でマグロサミットが開かれた。
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ただし、沿岸漁師がどんなに叫んでも国はほとんど動かなかった。水産庁はまき網を擁護する発言を繰り返した。


2016年7月、日本海側のまき網が集結する鳥取県の「境港」を訪れた。
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毎年10トンくらいのクロマグロの卵が養殖の餌となる。
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境港のまき網関係者との話し合いは2時間に及んだ。境港側からはまき網会社の社長、山陰旋網組合、境港水産振興協会、県の水産課、県の水産試験場などなど18名が出席した。
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まき網の動き
2015年日本海のまき網は自主規制枠を1800トンに減らす
2016年まき網は個別割り当てを特定期間開始
2017年共和水産(ニッスイグループ)がまき網で獲ったクロマグロを畜養に移し始める。
2018年日本海のまき網は自主規制枠を1500トンまで減らす。


農林水産省も訪問。※水産庁は農林水産省の管轄。
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水産庁側からは審議官とマグロ資源グループ長が出席した。
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公益財団法人「水産研究教育機構」の宮原理事長とも対談した。
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青森県の深浦漁協をクロマグロ釣り第一人者の佐藤偉知郎と訪問。山本組合長と対談した。
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ISC議長のジェラルドさんはいつも良いお話をしてくれた。俺の発言の理解者でもあった。
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海外の研究者にはいつも励まされた。PEWの代表、モントレーベイ水族館の研究者など。
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そのころ、大西洋クロマグロは厳しい管理が進んでいた。
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2010年ごろから東大西洋のクロマグロは一気に資源が回復する。急激に回復した原因はまき網を大幅に規制したことである。まき網の漁獲は2007年は48994トンあったが、2008年から厳しい管理が始まり、2011年には4293トンにまで減っている。
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そして大西洋は資源が急激に回復した。
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ところが太平洋クロマグロはなかなか資源が増えない。資源回復計画は国際会議で決議され、2014年から規制は始まっているのだが。

その理由の一つとして投棄と無報告があげられる。

まき網の海上投棄の噂は延々と絶えない。捨てているのは確実だろう。その理由は大西洋ではまき網にオブザーバーの乗船が義務付けられているが、日本のまき網は頑なに拒否してオブザーバーどころか水産庁も乗せない。悪いことをやってないなら拒否する理由は無いのだ。

定置網はいったん水揚げしたクロマグロを計量後に放流するなど投棄というべき事件が相次いだ。
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バカバカしい景色。一度陸揚げしたマグロを放流しても生き返らない。
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北海道の南茅部漁協は枠の10倍以上も水揚げしてしまい大問題となった。
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はえ縄も数量管理が始まってからはいったん船に上げて尻尾を切り、脂がのってないマグロは海へ捨てて、良質のマグロだけ水揚げするということが日常茶飯事的に行われるようになった。

無報告の噂も後を絶たない。ある漁協では無報告の漁獲の方がはるかに多いらしい。県もわかっているが、見て見ぬふりと聞く。これらの話は現役のマグロ漁師から聞いた。


親魚資源量の増加速度は大西洋に比べるとはるかに遅い。
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まあ、それでも緩やかであるが資源は回復していった。

そして日本のあちこちでクロマグロのナブラが見られるようになった。
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資源が回復すると、それを狙う釣り人と釣り船が一気に増えた。地方の経済へ大きく貢献するようになった。

船が増えすぎて、停泊場所が全く足らなくなった。
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津軽海峡はクロマグロ釣りのメッカとなった。
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水産庁の予測では2021年は親魚資源量は7万トン前後まで回復している。これは1970年以降では一番多い資源量だ。
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国際自然保護連合(IUCN)は9月4日、絶滅の恐れのある生物を記載した最新のレッドリストを公表した。絶滅危惧種に分類されていた太平洋クロマグロを「準絶滅危惧」に、大西洋クロマグロを絶滅の可能性が低い「低懸念」にそれぞれ危機のランクを引き下げた。

ここで勘違いしないでほしいのは太平洋クロマグロと大西洋クロマグロは増えたのは事実だが、その増えた量は大西洋の方がはるかに多いということだ。

親魚資源量(2018年)
太平洋クロマグロ 推定28,000トン
大西洋クロマグロ 推定500,000トン

太平洋クロマグロはまだまだ予断を許さない。遊漁の管理も当然だが、それよりもはるかに漁獲の多い漁業の管理は、密漁、無報告を無くすために今以上に厳しくしなくてはならない。