クロマグロのキャッチ&リリースに関して資源管理先進国との比較
クロマグロのキャッチ&リリースに関して
昨年8月に水産庁はキャッチ&リリースに関しては科学的な検証が必要であり、現時点では認められないという説明をした。ところが1年4か月が経過しても進展は全くない。
海外ではそのような調査、研究は10年以上も前からあちこちで行われている。理由は「キャッチ&リリースは貴重な資源管理のツールだが、生存率の高さが証明されて有効となる」であり、それを証明するために調査研究が進められた。その結果、生存率が高いことが証明されて、キャッチ&リリースは有効な管理ツールと認められた。
今年9月にNHKが放送したクロマグロ生態調査

太平洋クロマグロがアメリカ西海岸まで回遊することは50年以上前からわかっているが、2014年に国際会議で厳しい資源管理が採択されると、アメリカはすぐにキャッチ&リリース後の生存率の調査を開始した。結果は40匹のクロマグロにポップアップタグを打ち、1本はファイティングタイムが長すぎた(280分)ことが原因で死亡、1本はサメに食べられて死亡、なんと38本が生存したという報告だった。生存率は95パーセントだった。
必要以上にキープしない。生存率の高いリリースに心がける。

太平洋クロマグロのリリースに関する論文はこの1つだが、大西洋クロマグロのリリースの論文は複数ある。その論文だが、日本から出されたものは一つもない。
クロマグロを世界で一番漁獲して、世界で一番食べている我が国だが、調査研究は全く進んでない。
ある人がこう言った「我が国は都合の悪い研究はやらない」
アメリカの友人に広域漁業調整委員会の議事録を送ったら呆れ果ててたことは言うまでもない。
「日本は原始時代から進化してないね」
これは埋め込み式のアーカイバルタグ(電子タグの一つ)。

お腹を切って埋め込む。

優しく、素早く。

これはポップアップタグ(ポップアップサテライトタグともいう)時間を設定して体から切り離し浮上する。

海外ではリリース後の生存率の調査に多く使われている。

2011年にはアメリカの釣り雑誌に紹介された。死亡率は3.4パーセントだった。

カナダでは死亡率は5.6パーセントと公的機関が発表している。

デンマークでもスウェーデンでもタグ&リリースは釣り船が協力して行われている。

アイルランドでも2017年からタグ&リリースによる調査は始まっている。

アメリカのフィッシングルールブック(無償)にはリリースのために必要なことがたくさん記載されている。

キャッチ&リリースに関する広域漁業調整委員会での質疑応答。もう呆れるしかない水産庁の応答である。
2022年3月7日 日本海九州西広域漁業調整委員会
https://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_kouiki/nihonkai/attach/pdf/index-216.pdf
○合瀬委員 まずは今回のように遊漁の方が調整委員会に出ていただいて、お話をされる
ことは大変いいことだなというふうに思いました。資源管理については漁業者だけでなく
て、様々な方が意見を交わすことが重要だというふうに考えております。
その上で、納得感の話ですが、先ほどキャッチアンドリリースの話がありました。キャ
ッチアンドリリースについては、放流した後の生存性のこともあるので、取りあえず採捕
という枠の中で考えるということでありましたが、以前の委員会において今後科学的な検
証を進めるという話もあったと思います。そういう研究が、どこまで進んでいるのか、そ
ういうことも含めて説明された方が納得感が得られるのかなというふうに思いました。
以上です。
○田中会長 これは研究だから、機構の方で誰か答えられるのか。無理だな。
○松尾室長 沿岸・遊漁室長の松尾でございます。
キャッチアンドリリースをどう評価するかということについて、昨年の漁場調整委員会
でも議論が一通りあったと思います。科学的なエビデンスが不足しているということで、
それができない以上は、キャッチアンドリリースだからいいとか、あるいはキャッチアン
ドリリースにつきましては、生存率の問題に加えまして、取締りの実効性ということも問
題としてございます。ですので、昨年の時点でキャッチアンドリリースについて、扱いを
分けるようなルールづくりというのはまだできないということで、御説明申し上げたとこ
ろなんですが、それは残念ながら状況としては変わっておりません。
○合瀬委員 つまりキャッチアンドリリースを認めるかどうかについては、禁止ではなく、
現在、科学的な検証を進めているので、取りあえずは禁止ということで理解すればよろし
いんですね。
○田中会長 藤田部長。
○藤田部長 合瀬委員、御意見ありがとうございます。
まず段階といたしまして申し上げますと、昨年は、もう要するに遊漁によって釣るとい
うことを禁止をせざるを得なかったという状況がまずありまして、その後は、今回の委員
会指示のように、クロマグロ全体の枠が増えるというものをうまく利用いたしまして、遊
漁における扱いをもう少し前進をさせたという形になっておりまして、あの段階で、遊漁
におきまして、キャッチアンドリリースでどれぐらい、生きるか死ぬかみたいな話をなか
なか研究するところでは、たどり着いていないというのが実情でございます。
今後、こういうことで、かなり遊漁関係の方も理解を頂いて、クロマグロの管理を取り
組むという中では、例えばビルフィッシュトーナメントだと放流するパターンみたいなの
がちゃんとルールがあって、タグづけを行っているみたいなのありますけれども、そうい
うキャッチアンドリリースするときのやり方とか、どういう形でやれば、うまく効果とい
いますか、経過が把握できるのかみたいなことは、次の段階として、これはまだ我々は宿
題として遊漁関係団体ですとか、研究機関の方とどういうことだったら調査できるのかと、
協力を得られるのかということを検討していく必要があるというふうに考えているという
状況でございます。
○合瀬委員 とてもよく分かりました。ありがとうございました。
○田中会長 キャッチアンドリリースだから、出ていいというふうになると、これがまた
漁業者の方から不平不満が出てくるんじゃないかというふうに思います。漁業者の方は割
当てに達したら、採捕停止命令という形で全く操業できない形になっていますので、今回
はそれに合わせた形にはなっているわけです。
同じ太平洋クロマグロの漁獲だが、アメリカはスポーツの漁獲が651トンで全漁獲の74パーセントである。対して日本は20トン(2021年)、全漁獲のたった0.2パーセントである。海は国民の共有財産とするアメリカと、国民無視の日本は天と地の差がある。

将来予測も東太平洋(EPO)は2024年が遊漁(スポーツ)1,228トン。対して西太平洋(WCPO)は遊漁の漁獲は無し。

アメリカの研究機関が発表した太平洋クロマグロのリリース後の生存率調査
※一部抜粋
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165783619302681
In the eastern north Pacific, Pacific bluefin tuna (PBF, Thunnus orientalis) support seasonal fishing operations aboard a diverse fleet of commercial and recreational vessels. Recent PBF stock projections have identified a reduced spawning stock biomass, which has resulted in management restrictions and capacity reduction in all U.S. west-coast fisheries. Although recreational fisheries only account for a minor component of west coast harvest, a bag limit reduction from 10 to 2 fish person−1 day−1 was implemented in 2014. Considering the potential for increased number of PBF released in the fishery, this study assessed post-release disposition using a combination of electronic (Wildlife Computers sPAT) and conventional tags. Additionally, biochemical indices of capture stress were measured in the blood and coupled with tagging data to better understand the physiological response that is mounted as a result of time on the line (fight time). PBF were caught using standardized recreational fishing gear following protocols and techniques currently used by the southern California fleet.
Survivorship was based on tagging data from 40 electronically tagged PBF ranging in size from 82 to 148 cm FL (∼11-63 kg) and blood sampling was performed on an additional 49 PBF (80 to 170 cm FL). Tagging results yielded only one immediate mortality for the fish with the longest fight time (280 min; 97.5% survivorship).
Additionally, there was also one predation event that occurred seven days after release; if the predation is included as a capture-related mortality, the combined survivorship estimate is 95%. Results from the blood chemistry analyses show a direct correlation between fight time and the levels of blood stress indicators. When compared with the electronic tagging data, it is evident that the physiological impact of the angling event does not appear to be sufficient to impede post release survival, at least when time on the line is less that that examined in this study (< 70 min). Collectively, these data show that when handled properly, PBF can tolerate and survive the acute effects of capture and release when using west coast recreational fishing methods.
As previously demonstrated in several fisheries around the world, catch and release can be a valuable management tool, but it is only effective if post-release survival rates are high (Muoneke and Childress, 1994; Maunder and Aires-da-Silva,2014).