2022/02/14

連載5 今年のクロマグロはどうなる?そして我々にできることとは。

昨年12月16日に農水省に行き中村農水副大臣にお会いした(水産庁から3人が来て隣席に座って傍聴した)。

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副大臣は釣りが好きらしく、バッグリミットなどレギュレーションの専門用語もすぐに理解しました。俺が渡した要望書にも、すぐに大切な部分は赤ペンを入れてました。釣りの経済効果、キャッチアンドリリース、そしてレギュレーションにもとても関心を持ってました。海外のお話を真剣に聞いてました。俺がプレゼントした写真集もとっても喜んで、大きな魚に驚いてました。アメリカを例に出し、釣り人口は年々増えて5,000万人、そして経済効果は20兆円というとビックリしてました。無規制の日本より、ちゃんと規制をしているアメリカは釣り人口がどんどん増えて、野放しの日本はどんどん減り続けていると話すと悲しそうな顔をしてました。副大臣もキープすることより、魚とやりとりすることが好きだと言ってました。
お話が終わると副大臣は出口まで送ってくれて、最後に「茂木さんがまっすぐな人だとわかりました。今日お話したことは前向きに検討させていただきます」と。

そして副大臣に渡した要望書です。原文です。
※ただし200トンはあくまでも要望です。水産庁が管理している限り、それが実現することは100パーセントありません。


遊漁に関しては、バッグリミットを設けること。そしてキャッチアンドリリースを認めること。枠は最低でも200トン。海域別もしくは都道府県別、もしくは月単位で枠を設けるべき。30キロ未満は採捕不可。
バッグリミット(案):年間1人3匹。サイズリミット(現状):30キロ未満はリリース。
海域別(案):北海道40トン、東北60トン、関東10トン、中部20トン、北陸20トン、九州30トン、沖縄10トン、他10トン、合計200トン、など。
月単位(案):6月20トン、7月40トン、8月40トン、9月20トン、10月10トン、11月10トン、12月10トン、1~5月は各10トン、合計200トン、など。

200トンでも全漁獲のたったの2パーセントにすぎない。地方経済への貢献などを考えて枠を設けるべき。
地方経済への貢献:宿代、船代、飲食、買い物、給油、交通費などなど。

今年のやり方はいわゆるオリンピック方式でした。資源管理先進国ではもう20年以上前から否定されている方式です。現在ほとんどの国がIQ(個別割り当て)、ITQ(譲渡性個別割り当て)です。
オリンピック方式とは「よーいドン」で一斉に始めるので早い者勝ちです。今年は6月1日からよーいどんで開始。九州、富山、石川、新潟のシーズンインが早い地方で枠の半分以上を2週間で達成してしまいました。


世界基準(先進国)
アメリカの大西洋側はスポーツの枠が500トン以上もある。バッグリミットは船中1匹でサイズリミットは叉長27~72インチ以内。キープしたら24時間以内に報告の義務がある。キャッチアンドリリースはOK。
Atlantic Bluefin Tuna Recreational Bag Limits | NOAA Fisheries


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カナダにはキャッチアンドリリースプログラムがあり、国や州が推奨している。

公平に管理すれば、違反に対して厳しい罰則を設けても納得する。現時点ではとてもじゃないが納得できない。広域漁業調整委員会に釣り人、釣り団体が1人もいない。そこで決めることは極めて非民主的。
水産庁は発令する前にパブリックコメントは必ずとること。

さらにその枠を有料にすると良いのではないでしょうか?
遊漁船もプレジャーもライセンス料を払いキャッチ可能とするなど。
その収益で、漁港、マリーナ監視と生態調査に使ってはいかがでしょうか?


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要望書の他に、国民共有の財産提言、世界のスポーツフィッシング、日本と海外の遊漁の現状、日本とアメリカの釣り人口の推移などたくさんお渡しした。

要望書には書いてないが、キャッチアンドリリースに関しては死亡率もお話した。

公的に採用されているリリース後の死亡率
アメリカの太平洋側 6パーセント
カナダの大西洋側 5.6パーセント
アイルランド 5パーセント
日本 データ無し

日本はデータがないことを理由にリリースを認めないという決定だった。
これは今まで調査してこなかった行政の怠慢なのですが。



アメリカの太平洋側は1日1人2匹のバッグリミットが設けられている。期間中に釣りが禁止になったことはない。
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海外のリリース後の死亡率が低い理由は使っているフックがほとんどシングルフックということが大きい。カナダはさらに厳しくてサークルフック(眠り針)のバーブレスが義務付けられている。ファイティングタイムも60分に制限されている。短時間で釣るために使用するライン強度も180ポンド以上となっている。アメリカの大西洋側はルアーキャスティングが盛んでトレブルフックの使用を認めている。死亡率はICCAT(大西洋まぐろ類国際保存委員会)やNOAA(アメリカ海洋大気庁)の資料を調べたが見つからなかった。ただし、スポーツの枠がとんでもなく大きいのでリリースしたマグロの10パーセント以上が漁獲として報告されているのかもしれない。




海外の漁獲データなどを調べて驚いたことはいくつもあった。
ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)のデータを見ると2018年のアメリカの遊漁の漁獲は809トンもあった。日本はISCのメンバーである。水産庁は知らないはずはないのだが。対して2018年のアメリカ太平洋側のまき網の漁獲はわずか12トンだった。同じ太平洋クロマグロを獲っている日本のまき網は約5,000トンの枠が配分されている。
青の部分:漁業(コマーシャル)、赤の部分:遊漁(レクリエーショナル)

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対して日本はわずか20トンで遊漁は釣り禁止となった。キャッチアンドリリースも認めないという厳しい指示だった。禁止の理由は「資源管理の枠組みに支障をきたす」だった。わずか0.2パーセントの漁獲だったが・・・

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昨年の主な漁場(6月~8月)
赤丸:遊漁
緑の線:旋網
黄色の線:延縄
※遊漁は新潟と山形沖は6月に報告が多く、青森と北海道は7月と8月に報告が多かった。

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そして現状で我々釣り人ができることは、キャッチ&リリース後の死亡率を下げる努力である。多くの釣り人は1にマグロとのファイトをやりたいのだ。キープももちろんしたいが、聞き取り調査をして声が多かったのはマグロとのファイトである。青森の小泊の旅館の経営者もリリースも否定した8月23日以降にキャンセルが殺到したと言っていた。それまではキャンセルは1件もなかったと。

日本中のクロマグロアングラーにお願いします。

「シングルフックバーブレスでクロマグロに挑んでください」

「できる限りキャッチアンドリリースをお願いします」

※2021年度はリリースしたクロマグロは報告をしなくてOKでした。2022年はリリースも報告することになるかもしれません。そのとき水産庁は採捕と放流を分けて報告書を作成すべきです。



アイルランドでは長さを計ってからリリースします。

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アメリカ大西洋側も船べりリリースが基本です。

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昨年の北海道・松前沖はあちこちにクロマグロのナブラが沸いた。

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返しのないギャフを使う。

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シングルフックのバーブレスなら安全に簡単に外せます。

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ギャフでしばらく引っ張り、回復させてからリリースする。

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大型はシングルフックバーブレスをカンヌキか下顎に刺してロープで引っ張ってからリリースする。ロープは引っ張り用と外し用の2本を使う。

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SFPC(スポーツフィッシング推進委員会)は毎年電子タグによる生態調査にも協力してます。

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お腹を切って電子タグを埋め込む。

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再捕率は約27パーセント。アメリカ側はさらに再捕率は高いそうです。

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日本側がリリースしたクロマグロの回遊経路。1歳から2歳の間に太平洋を横断してアメリカまで行く。

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20歳以上の大型は南太平洋まで泳いで行く。ただし日本に戻ってきたクロマグロは現在1匹も確認されてない。

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アメリカ側がリリースしたクロマグロの回遊経路。
4歳から6歳くらいで日本に戻ってくる。そのあとは2度とアメリカに行かない。最近は100キロを超すクロマグロがカリフォルニア沖でかなり釣られている。7歳になっても戻らないクロマグロが増えているらしい。

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皆さん、優しく素早くリリースすればクロマグロはほとんど生きているのです。


そして

海は国民共有の財産です!


データは水産庁とISCの資料を主に使わせていただきました。
2021/11/09

連載4 クロマグロの遊漁の規制は釣り人不在で決められた。

俺と水産庁のやりとりはもう5年以上になるが、今回のクロマグロ新ルールに関しては2020年9月から開始した。

昨年の9月14日に俺が水産庁に送ったメール

クロマグロの遊漁、プレジャーもライセンス制を取り入れたらどうですか?
レギュレーションは30キロ以上を1人1日1匹です。
そして遊漁の枠を漁業の枠とは別に設けることです。
アメリカはコマーシャル(漁業)とスポーツ(遊漁)の枠が別々に設けられてます。ですから漁業者と遊漁のトラブルはありません。そして海洋水産資源は国民共有の財産として公平に管理されてます。

北海道の沿岸(知事管理)は30キロ未満が102トン、30キロ以上が288トン、合計390トンの枠があります。このうちの3パーセントにあたる13トンを遊漁の枠にしたらどうでしょうか?
そしてレギュレーションは1人1日1匹。30キロ未満は採捕不可、もし釣れてしまった場合はリリースすること。捕獲したマグロの売買は禁止とする。捕獲の報告は1週間以内(アメリカは24時間以内)にする。

罰則も設けないと効力は半減。悪い人が得することになります。
違反したら罰金の他にライセンスの取り上げ、もしくは停止でいいと思います。

俺の案は水産庁内で共有されて、新ルールの骨格の一部となった。

そして3月18日の日本海・九州西の広域漁業調整委員会に釣り人として初めて傍聴参加した。

驚いたことはこの広域漁業調整委員会の委員に釣り人は1人もいないのである。その会議で釣り人の規制が決められているのだ。民主主義はここには存在しない。


今回出された(案)
※画像はクリックすると大きくなります。


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そのときの発言の一部(議事録から)

○山内委員
遊漁者についての最終的には枠を与えて管理するというようなお話もありましたけれども、そもそもこの遊漁者、700万人ほどいらっしゃるということですが、数の多さにちょっとびっくりしております。ですので、漁業者よりは多いのかなと思ったりはしますが、厳格な管理をしていただきたいなと思います。
今回の内容については非常に甘いんじゃないかなと思っております。小型魚に関しては直ちに放流しなさいということではあるんですが、大型魚についてはなぜ釣り上げることを許しているのか、そして報告するのは当然のことだと思いますけれども、遊漁者の皆さんには放流という文化もありますので、大型魚についても放流すべきじゃないのかと思ったりもします。

○中島委員
ただし、5トン、6トンといいますけれども、大型魚、各都道府県に配分されている量というのは、各都道府県ごとに言いますと、5トン、6トンもないところもあるわけですね。ですから、漁民感情からすれば、ちょっと許せる数値じゃないのかなというような気もいたします。

この5トン6トンに関して調べてみると、5トン以下の都道府県はほとんど瀬戸内海だった。クロマグロが回遊してこない地域であり、クロマグロを生業とする漁師もいない。姑息な発言としか思えない。

しかも釣り人の漁獲は我が国の全漁獲10,400トンの0.2パーセントしかない。これを規制しても資源回復への効果はほとんどない。


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6月1日に遊漁によるクロマグロ釣りの新しい規制がスタートした。
30キロ未満が釣れてしまった場合は速やかに放流。30キロ以上を釣ったときは10日以内に水産庁に報告。このときも遊漁の枠は未公表だった。どのポスターにも20トンという数字は書かれてない。


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釣り人は30キロ以上のクロマグロを釣った場合、枠の制限が決められてないのだから報告をちゃんとやれば何匹キープしてもよいと思ったのは事実である。そして直前の採捕実績が資源管理の基本となることが国際会議では常識である。海外のそのような例を参考にして、俺も釣り人に「採捕報告は必ずやってください」と伝えていた。20トンという枠がわかっていたならリリースする釣り人が多かっただろう(リリースすれば採捕報告はしなくてよい)。
その結果、開始2週間で報告は10トンを超えた。


突然、水産庁から「30キロ以上も採捕自粛のお願い」のメールが採捕報告をした釣り人に届いた。

これが6月18日水産庁から釣り人に送られたメールだが、俺には届かなかった。


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釣り人からのメールが午前中次々届いた。まったく予想もしてなかった水産庁の対応に裏切られたという怒りがこみあげてきた。何度も電話をするが担当者は不在という返事。このコロナ禍の中で3人とも不在なんてあるわけない・・・
メールを送っても返事がなかった。

送ったメール

真面目に報告した結果が採捕禁止ですか?
青森や北海道の遊漁船や旅館、ホテルは経営難になりますよ。
そして今後水産庁へ協力することはなくなります。
10トンを超すなんて、真面目に報告すれば誰でもわかっていたことです。
それと俺には無報告というのも腹が立ちます。
全国に出向いて釣り人、船長に会い、今後の対策を話し合ってきました。
交通費も宿泊費も自腹です。

ようやく夜の9時過ぎに水産庁から返事が来た。

茂木様

 お世話になっております。
ご連絡いただきありがとうございます。
また、お電話も頂いており、不在で失礼しました。

 電話にて対応した者からも説明有ったかと思いますが、
今回の措置は採捕禁止ではありません。

 また、キャッチ&リリースしていただく分には大丈夫ですし、本措置は、現在、漁獲が著しい日本海への注意喚起であり、太平洋側は大丈夫ですが、文書の本文にも記載しておりますとおり、国の枠が決まっている以上、このままの状況が続けば、採捕禁止などの措置も検討せざるを得ない状況ではあります。

 また、遊漁で年間10トン程度を採捕するであろうということは、過去の実績値から想定はしていましたが、2週間で超えるとは予想していませんでした。

 茂木さんへの報告が出来なかったことは、素直にお詫びいたします。申し訳ございません。

 失礼いたします。      水産庁


7月29日太平洋広域漁業調整委員会の会議で初めて20トンという枠の話が出た。

また、クロマグロの我が国の漁獲枠の中で、国の留保枠として留保しておりますのが81.7トンございますが、遊漁による漁獲というのはこの中で吸収していかなければならないというものなのですが、ただ、この81.7トンのうち50トン程度は漁業における突発的な漁獲の積み上がりに備えておく必要があると。それから、10トン程度は試験研究、実習船などによる漁獲への充当分として取っておく必要があるという状況にあります。
 すなわち、遊漁による漁獲に充当できるのは、これらの差引き20トン程度の数量が限界ということになります。

いまさら20トンと言われても・・・

遅すぎます。


参考人として出席したJGFA代表の森さんの会議での発言の一部
※参考人は意見を言うだけで議決権はない。

特にクロマグロ、今回のクロマグロに関して採捕禁止の意味合い、リリース前提で釣りはしていいのかどうか、そこを明確にしてほしいと思います。
 もしキャッチ・アンド・リリースが認められるんであれば、「採捕禁止」という言葉ではなく、別の言葉を使っていただきたいと思います。

それに対する水産庁の返事

それから、JGFAの森様から幾つか御指摘を頂いていた話のうち、まず最後の方で頂きました採捕禁止の意味合い。キャッチ・アンド・リリースの取扱いというものを明確にする必要があるということなんですけれども、キャッチ・アンド・リリース、放流との関係につきましては、この委員会指示の39号、今回の40号もそうなんですけれども、明確にしてはおります。資料の1-2を御覧いただければと思うんですが、今回の大型魚の採捕の制限につきましても、資料1-2の2の(2)の後段、まず「採捕してはならない」とありますけれども、「意図せず採捕した場合には、直ちに放流しなければならない」という書き方にしております。これは39号の小型魚についても同じです。これ「意図せず」というところが若干引っかかるかもしれませんけれども、仮に釣り人がキャッチ・アンド・リリースをしたという場合には、これは採捕禁止の違反になるのかというと、これはならないですし、報告義務というのも発生しないということで、お問合せ、照会があれば、そのようにお答えしておりますし、規制の意図としては、キャッチ・アンド・リリースは対象としないということになります。これはここにこうはっきり書いてあるからなんですけれども。


8月20日水産庁から俺へのメール

 キャッチ&リリースについては、先日行われた広域漁業調整委員会でも、当室の松尾室長から、確かJGFAの立場として出席されていた森さんと、何度も議論したと記憶していますが、採捕禁止の措置を出している以上、狙って良いかと聞かれれば、公式見解として「良い」とは言えませんが、他方で、速やかに海中に放流すれば違反とはならないことも何度も説明させていただきましたので、その文脈で当方の意図を汲んでいただければと思います。

公式的にC&Rを認めるには、リリース手法の確立、リリース後の生残についての科学的知見の積み上げにより、欧米のようにC&Rが一般化する必要が有りますが、現状では、確か、太平洋の広域漁業調整委員会だったと思いますが、どこかの大学の先生から、茂木さんたちが行っているリリース方式について、疑問が投げかけられていたと記憶しています。



ところが

そして8月21日に突然採捕禁止となった。


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さらに8月23日の午後5時ころにキャッチアンドリリースも認めないと発表があった。

ここには公開できないが(電話をしたのは別人なので)、23日の昼ころまで「キャッチアンドリリースをすれば違反ではない」という回答だった。


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なぜ突然キャッチアンドリリースも認めないとなったのか?

数日後、自民党関係者から「自民党の某代議士が動いた」という話を聞いた。派閥の領袖クラスの代議士である。

パブリックコメントも取らず、民主的な方法を一切無視して釣り人の「釣り禁止」は決定されたのである。

※パブリックコメントの定義
行政機関が規制の設定や改廃をするとき,原案を公表し,国民の意見を求め,それを考慮して決定する制度。1999年(平成11)から全省庁に適用された。


水産庁のFacebookページには反論、不満のコメントが圧倒的に多かった。

俺も全く納得がいかないのでコメントした。



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水産庁の二転三転する返事にも振り回されたが、肝心なところは電話で話すやり方は姑息としか言いようがない。iPhonには通話を録音する機能がない。

8月24日 委員会で参考人として発言した森君のFacebookコメント

初日(太平洋側)の会議が終わり、2日目(日本海側)の会議が始まる前に、水産庁から直接お電話を頂き、キャッチ&リリースは認めるから、会議に於いてあまり採捕禁止の意味合い等について追及しないで欲しいと言われました。
そして2日目の会議に於いて、採捕禁止の意味合いについて水産庁から説明があり、意図的に狙う事を良いとは言えない、そして採捕禁止とは、準備行為も含めて違反となると言われましたが、先の電話の件もあったので、ぐっと堪えて追及しませんでした。
結果的には議事録として残るのは水産庁の意図的に狙う事は良いとは言えないと言った発言。電話は議事録に残りません。
キャッチ&リリースは認めるから、あまり深く公の場では話し難い事を追及しないで欲しいと電話で言われ事は、議事録にもメールにも残らず、結果的に私は会議で黙らされ、騙されたと言う感想を抱いています。証拠は残ってませんが、私の記憶は消せませんし、水産庁に対する不信感も、きちんと納得がいく説明が無い限りは消えません。


水産庁にたいする不信感。これは修復不可能なレベルである。


そして、多くの釣り人が自粛した。


ところが、釣り人が自粛しても資源回復の効果がゼロになるような出来事が日本のあちこちで起きた。



五島沖でクロマグロを100トン以上捨てたまき網


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青森のスーパーには1匹100円、重さ300グラム未満のメジ(クロマグロの子供)が大量に並んだ。

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対馬沖でまき網が6キロ前後のメジ(クロマグロの子供)を合計200トン以上も水揚げ。匹数に換算するとなんと3万匹以上である。

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大間漁協のクロマグロ無報告事件。国と県は1000本以上の無報告があったと指摘している。漁獲報告をしないで仲買に渡していたのである。これは脱税でもある。

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愚かすぎる我が国のクロマグロ漁業。

資源管理を無視した漁業。

我々釣り人はなんのために自粛したのか?

釣り人は釣りをするために一生懸命働き納税の義務を果たしている。そして地方経済に大きく貢献している。そんな釣り人の楽しみを勝手に奪っていいのだろうか?


それは現在も続いている。


来年は水産庁に従わない釣り人と漁業者がさらに増えるだろう。


その原因は水産庁にある。



2021/09/14

連載2 太平洋クロマグロは増えているか(前編)

漁業が無かった時代にどれだけ資源があったのかを科学機関が計算して弾き出した推定資源量のことを初期資源量と言う。太平洋クロマグロの成魚の初期資源量は推定65万トンである。その初期資源量だが長年続く乱獲が原因で2010年代には11,000トン(1.8パーセント)にまで減少する。資源管理先進国ならとうの昔に禁漁のレベルである。

日本のクロマグロ漁は縄文時代初期には始まっていた。おそらく湾内に入ってきたところを浅瀬に追い込んで銛で突き刺して獲っていたと思うが証拠はない。三陸海岸では今から5500年前の縄文時代中期の遺跡からクロマグロの骨が大量に出土している。その中には300キロを超すような大型の骨もたくさんあった。
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鉄もナイロンもエンジンも無い時代にたくさん獲れていたということは海が今よりもはるかに豊かだったのだろう。
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三陸海岸の縄文時代の遺跡は東日本大震災後に海抜30メートル前後のところで次々と発見された。おそらく縄文時代の人は津波が来ることを知っていたのだろう。
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三陸海岸はリアス式海岸となっていて入り江が多い複雑な地形となっている。資源が現在よりはるかに多かった縄文時代はこの入り江の中にまでクロマグロが入ってきたのだろう。
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これは唐津城に展示されていた江戸時代のマグロ漁。当時は岸近くを回遊するクロマグロも多く、このよう囲んで浅瀬に追い込む漁もあった。
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これは駿河湾の沼津のマグロ漁。明治40年ころもまだまだクロマグロは多かったらしい。
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日本漁業史(東大出版会)には明治30年ころから乱獲が進み、漁場は沿岸から沖合へ移っていったと書かれている。明治24年は520万貫(約2万トン)の漁獲があった。これは主にクロマグロとキハダの漁獲らしい。
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明治40年ころには動力付きの船が現れはじめ、さらに大型のまき網が現れるとクロマグロの資源は急激に減少していった。

1982年の日本海のまき網漁では、わずか18回の出漁、しかも山陰沖の一部だけで1637トンのクロマグロを水揚げしている。平均サイズも121キロと驚くことばかりだった。しかし5年も経たないうちに日本海からクロマグロはほとんど姿を消した。そして漁場は太平洋側へと移っていった。
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その太平洋もまき網の乱獲が進み、2000年代に入ると漁獲は急激に減少していき、2008年にはついに漁獲は0トンとなった。これは群れが見つからないので出漁そのものを取りやめたらしい。

そしてまき網は再び日本海側を狙い始める。その漁獲は2004年から一気に増えている。すると壱岐や萩のマグロ漁師の漁獲がどんどん減っていった。主要な産卵場でもあった八里ヶ瀬や七里ヶ曽根などをまき網が狙い撃ちした結果だった。

かつては東の大間、西の勝本(壱岐)と言われたが、まき網が日本海に現れるようになると壱岐の漁獲は急激に減っていった。
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和歌山の那智勝浦の延縄も2000年代に入り、漁獲は急激に減っていった。
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日本海側のまき網はほとんど境港に運んで水揚げする。その境港の成熟(大型)クロマグロの漁獲も減少していった。平均サイズも100キロ台から30キロ台にまで小型化した。
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まき網は産卵期を集中的に狙った。その理由は産卵期は群れが濃くなり、もっとも効率よく獲れるからだ。産卵行動中はさらにまとまるので最も簡単に巻くことができた。
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ただし、産卵期は一番美味しくない時期である。卵や白子に養分を取られるので脂は少ない。さらに血抜きも〆もしないので、身には血が残り、血栓が多かった。そのため数日で色変わりしてしまう。
市場ではまき網のクロマグロが並ぶ床はいつも血で真っ赤になった。
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まき網の漁獲は6月7月に集中するため、値崩れを起こし、さらにセリでは大半が売れ残る。このような資源の無駄遣いはいまだに続いている。
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産地の境港では2016年7月に安値キロ200円、平均単価キロ384円を記録した。

太平洋側のまき網は2008年には群れが見つからず漁獲は0トンとなった。その後、しばらく狙わなかったことが幸いして資源は回復へと転じる。
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日本海は2004年からまき網の漁獲が急激に増えていき、山陰から九州西沖は2010年ごろにはクロマグロはほとんど姿を消した。しかし2013年ごろに山形と新潟にかけての沖に3歳前後のマグロが集まる漁場を発見して、再び漁獲は増加するが、2015年から自主規制を開始する。最初1800トンとして、2018年から1500トンに自主規制している。

そして釣り人にとっては、2008年ころから青森や玄界灘へ行っても坊主で帰るのが当たり前の暗黒時代に突入した。

そんなとき、海外へ行く釣り人が現れた。日本で100キロのクロマグロを釣ろうと思えば数百万円以上かかる時代だった。釣りに使ったお金をキロ単価にすると軽く5万円以上になった。ところが海外(アメリカ、カナダ、アイルランドなど)へ行けばキロ5000円以下だった。
※タックル代、交通費、宿泊費等を合計した金額をマグロの重量で割る。

アメリカのノースカロライナは150キロ前後が多かった。出船すれば5割以上の確率でヒットした。3日間の釣りで400キロ以上釣る人もいた。
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カナダのプリンスエドワード島はアベレージが300キロ以上もあり、1釣行で1トンを超える人も出た。これだとキロ500円である。
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どんどん釣れなくなる日本と違って、海外はどこも期待を裏切らなかった。ニュージーランドは毎年8月に4年連続で行き、200キロから400キロを31匹釣った。ノースカロライナは2011年から毎年3月に10年連続で行き、100匹以上キャッチした。カナダのプリンスエドワードも2011年から毎年8月と9月に行き、300キロオーバーを100匹以上キャッチした。海外では9割以上をリリースした。レギュレーションがあり、監視と罰則も厳しく複数キープは絶対にできない。それでも夢のような大物が釣れるので世界中から釣り人が押し寄せている。キャッチアンドリリースは資源を減らさずに換金できるという夢のような商売でもある。

そんな夢のような海外での釣りを経験するうちに日本の遊漁に対する疑問がどんどん湧いてきた。「釣れない」「小さい」などなど。レギュレーション、ライセンス制、スポーツフィッシング、キャッチアンドリリース、資源保護、海外のそんな取り組みを知れば知るほど、日本の問題がたくさん見えてきた。

そして2013年からクロマグロの資源保護活動を本格的に開始。
絶滅危惧種のクロマグロを守れ!」「産卵期は禁漁に!」

2013年から国内クロマグロ釣りにレギュレーションを設けた(茂木ツアー、SFPCメンバー)
1.シングルフックのバーブレスを使用
2.30キロ未満はリリース
3.1日1人1匹まで
4.6月と7月はマグロ釣りを自粛(これは2020年に解除)

2015年からクロマグロに関する会議やシンポジウムなどに片っ端から参加した。
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2015年から2018年まで4年連続水産庁前でデモをやった。1回目90人、2回目105人、3回目120人、4回目115人が参加した。
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参加者はニュージーランド、タイ、台湾、沖縄、九州、北海道などから集まった。全員が交通費等自腹。
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テレビ、新聞、雑誌など多くの取材を受けた。
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チラシは2万部。街頭で配ったり、釣具店に送ったりした。
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署名は13270人、コメント1228人分を農林水産大臣と水産庁長官に届けた。
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そして資源は回復へ(続く)