巨大クロマグロに挑んで7年目となった。
2007年から4年連続ニュージーランド南島に挑んだ。まったく未知の世界で試行錯誤の連続だった。1年目は完敗、2年目にリベンジ成功(最大は300キロ)、3年目はスピニングタックルで250キロをキャッチした。4年目は陸上実測322キロと推定400キロをキャッチした。
5年目から場所をカナダに変えた。カナダで釣れるマグロは正式には大西洋クロマグロで日本やニュージーランドで釣れる太平洋クロマグロより一回り大きくなる。
いきなり1回目の挑戦で小西健滋が431キロを45分でキャッチした。
そのときのレポート
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-166.html他にも太平洋では10年かかっても釣れないような巨大クロマグロが何匹もキャッチされた。
カナダは巨大クロマグロを狙うなら世界最高だと確信した。
しかもニュージーランドに比べて短時間でキャッチできるのだ。
カナダが有利な理由
カナダは水深が浅いので、ニュージーランドや日本の与那国、宮古、久米島などに比べて釣り人に有利。マグロは深く潜る習性があり、深く潜られれば潜られるほどファイティングタイムは長引く。カナダは水深30メートル未満なので、船で追いかければマグロとの距離はすぐに30メートル以内になる。ニュージーランドは700~900メートル、潜水艦でない限り、船でマグロに近づくことはできない。カジキは深く潜らないから大きくても短時間で上がる。
またカナダは俺が知る限り、巨大マグロの魚影が一番濃い。マグロがいなければヒットもしない。出船すればほぼ100パーセントの確率でマグロがヒットする。しかもカナダのアベレージは375キロである。
また水温が高い8月はマグロのスピードもパワーも桁違いに強い。ロッドが折れる、リールが壊れるなどのトラブルはこの時期に集中しているのだ。リールが壊れる一番の原因はマグロのスピード。水深が浅いので水圧がかからず、右に左にと猛スピードで泳ぐ。このスピードでドラグの熱が一気に上がる。
水温が下がる9月中旬以降はマグロのパワーも落ちてくるので取りやすい。アメリカの常連はこの時期に集中して来る。そのため9月中旬以降の予約はなかなか取れない。俺はすべて断られている。予約でいっぱいなのだ。
カナダの海域は水温8度まで釣れるらしい。8度というとマグロにとっては厳しい水温。クロマグロは水温2度まで心臓が動くことが研究でわかっている。クロマグロの適水温は15~20度。
また2年前から釣り人が釣ったマグロはすべてリリースとなった。ただし漁師さんはIQ方式(個別割り当て方式)で1シーズンに1匹だけキープできる。そのキープされたマグロの9割以上が日本へ空輸で送られる。
最近になって聞いた話だが、その漁師さんの1匹の権利を買うことができるらしい。9月中旬以降になるとその権利が頻繁に売買されるらしいのだ。権利を買うのは主に漁師(釣り船含む)だが、釣り人も買えるらしい。そして釣り人はそのマグロを売ることもできるのだそうだ。
しかし我々はスポーツとしてマグロを釣りに来ている。巨大クロマグロは大西洋西海域全体で9000匹しかいないと報告されている。そんな貴重なクロマグロをキープなんか絶対にしたくない。まして売るなんてもってのほかだ。そうでなくても日本は世界中のマグロを獲りまくり、買いまくり、海外での評判はとにかく悪い。資源保護に関してはノルウェー、ニュージーランド、カナダ、アメリカなどの国に比べ30年遅れていると言われている。それは水産業の実態を見てもわかる。ノルウエーやニュージーランド、カナダでは水産業は成長産業なのだ。かつては世界一の漁業大国だった日本は1970年代をピークに水産業は衰退の一途なのである。漁業者は毎年1万人前後減り続け、現在は20万人しかいない。しかも平均年齢は毎年上がり続け、現在は60歳以上の人が全体の40パーセントに達している。このままではあと20年後に我が国の漁業は消滅してしまうのだ。
我々はレギュレーション、マナー、モラル、海外でいろいろと見てきた。それらがしかっかりと根付いている国は魚はいっぱい釣れて、しかもサイズが大きかった。レギュレーションの存在しない国はどこに行っても魚が少なく、小さかった。
ニュージーランドでもほとんどのマグロを船べりでリリースしたが、カナダでも1年目に1匹キープ(このマグロは船長の今シーズンの割り当て分)しただけで、あとはすべて船べりでリリースしている。それは世界最高の場所で最大級のクロマグロに挑むならアングラーとして当然の義務と考えている。
先日、台湾で地元アングラーとの懇親会に出席した。台湾の釣りマナーやモラルを向上させたいのだそうだ。台湾のアングラーは今でも釣った魚はほとんどキープらしい。
そのとき俺はこう言った「釣りたいのか、食べたいのか?」「どっちが優先なんだ」
台湾アングラー全員が「釣りたい」と答えた。
俺「ならばリリースしなければ」
全員がうなづいた。
日本からアメリカ、カナダ、ニュージーランドまで釣りに行く人は、100パーセントが「釣りたい」人である。
だから全員が迷わず進んでリリースする。
7年間で学んだこと
その一番がリリースなのだ。
マグロ、GT、ヒラマサ、カンパチ、カジキ・・・etc
さて
そろそろ
マグロ釣りのお話を(笑)
巨大マグロを釣るためのラインシステム
ナイロンラインを長くとることが重要。PEラインは細くて水切りが良いのでウオータープレッシャーがほとんどかからない。実際に100匹以上の巨大マグロとのファイトを見てきたがナイロンラインが長いほうが魚の動きがおとなしくなる。また走る距離も短くなる。リールのラインキャパに合わせてPEラインとナイロンラインの比率を変える。
例
ケンマツ50の場合 PE10号600メートル+ナイロン65号約100メートル
ケンマツ80の場合 PE12号600メートル+ナイロン65号約200メートル
タリカ50の場合 PE10号500メートル+ナイロン50号約100メートル
ステラ30000の場合 PE10号300メートル+ナイロン50号約40メートル
理想はナイロン100メートル以上だが、ステラ30000の場合100メートル巻くとPEがほとんど巻けなくなる。
ファーストランは200メートル以上走るケースが多いが、セカンドラン、サードランと走る距離は短くなる。30分くらいで魚との距離は落着き、ほとんど100メートル未満でのやりとりとなる。スピードもはじめのうちはかなり速いが、徐々に遅くなり30分を過ぎればほぼ落ち着いてくる。そして船下をぐるぐると回り始めたらキャッチまであと僅かとなる。
ケンマツの場合、ドラグは最初5キロくらいで走らせて、ロッドをポストから外してアングラーにセットしたら15キロ以上に上げる。走りが止まったら20キロ以上に上げて20~30分間はそのドラグでやりとりをする。マグロにもよるが平均的なマグロなら30分を過ぎたらドラグを25キロ以上に上げる(アングラーの基礎体力、経験にもよる)。残り30分以内で勝負をかける。ときには35キロ以上までドラグを上げることもある。
水中でのドラグ1キロは陸上での10キロとほぼ等しいと言われている。300キロのマグロでさえ3キロドラグを上げるだけで走る距離がぐんと短くなる。そして浮いてくるのも早くなる。
7年間でほぼ巨大マグロを釣るためのタックル、テクニックは完成された。これからはいかに力を使わないで、短時間で上げるかである。カナダには昨年から60分未満でキャッチ&リリースと言う厳しいルールができた。時間制限がなければ女性や子供(中学生以上)でも経験を積めば釣れるだろう。
60分ルールはなんでできたか?
このレポートが参考になる。ファイティングタイムが長引くとリリース後の生存率が下がるのだ。
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-163.htmlスピニングでの挑戦は昨年までは封印してた。理由は3年前にアメリカのアングラーから「そんな無謀な挑戦は魚を傷つけるだけだからやるべきではない」と言われたのと、いきなり1日目に大型トローリングリールが2台壊れたからである。カナダは浅いので横方向へ猛スピードで走る。ラインキャパが最低でも300メートル欲しいからである。ステラ20000ではPE10号を300入れるとナイロンを入れる余裕はない。最低でもナイロン30メートルは入れたい。
今年ステラ30000が出たので挑むことにした。しかし大問題が起きていた(内容は後日)。
毎年出発前は準備で忙しい。

今年はこれだけタックルを持参した。
リール:ケンマツ80、ケンマツ50×2台、タリカ50×3台、13ステラ30000×3台、マカイラ80
ロッド:カーペンターBB55/60SG、同BB55/70SG、同BB54SG、同KLL50(スピニングロッド)×2
ライン:サンラインPEジガー8HG10号、サンライン・モンスターバトル12号
リーダー:ジンカイ130lb、150lb、200lb
ハリス:マンユウ50号、60号、80号、100号、120号
それにカメラ2台、レンズ4個である。
現地に先に入ってレンタカーを確実に受け取るために俺は1日前に出発した。いつもの便だとシャーロットタウン到着が深夜になるのでレンタカーを受け取れないケースが2年連続続いているのだ。
トロント空港のラウンジで

この飛行機で最終目的地のシャーロットタウンへ

俺の荷物の総重量は80キロ以上

132リットルの大型スーツケースと同じ容量のスポーツバッグ、それにカメラバッグとロッドケースである。
今回借りたレンタカー。レンタルカーズドットコムというところで予約しているが、いつも予約した車種より小さいような気がする・・・

安いからなんだけど、ハーツやエイビスならこういうことはなかった。
今回はいつものRollo Bay innが満室で取れず、この宿となった。

1875年に建てられたそうな。どうりで床がミシミシ言うわけだ。

冷房はありません。扇風機だけです。

この宿に泊まったのは1日目だけです。2日目からはトニー船長が新しく建てたキャビンに泊まった。そのキャビンはとっても快適です。
到着日は一人で夕食。やっぱりロブスター(^O^)

ちょっと寝て、夜11時ころに起きて空港へ。
今年は定刻通り深夜1時に着きました。

昨年は5時間遅れで朝の6時ころ到着でした。
空港から宿までは約1時間。
深夜の2時を過ぎてました。

今回は全員が初挑戦です。
1日目はトニーキャビンの隣の広い芝生でファイトの練習です。
まずは浦爺から
いきなりバテてます(笑)

ほとんどファイトになってません。

向こうの方でマグロ役をやっているのは俺ですが・・・

あまりに余裕なので寝ちゃってます(笑)

浦爺「あか~~ん」「もう許して」

5分でノックアウト(-_-;)

「夜逃げしよ・・・」

浦爺は頸椎5本にセラミックが入ってます。そのため左足に力が入らず踏ん張れません。しかも肺に穴も開いてます(原因は内緒)。そして50歳で11歳の孫がいます。さらに1日100本のタバコ吸います。
何から何まで規格外(-_-;)
でもチャレンジ精神が凄い!
それこそ俺が言う重要なことだけど・・・
釣れるのか?
俺「絶対無理」
浦爺とは昨年の8月に青森で初めて会った。SFPC主催の青森マグロキャスティングセミナーに和歌山から船をトラックに積んで孫を連れて参加した。

ほんまに何から何まで規格外(笑)
さらに
もう一人規格外がいます。
65歳の爺さんです。
毎日自宅の裏山600メートルに登ってます。今年になって7月末までに191回登ったそうです。登らなかったのはノースカロライナに行ってる時と身内に不幸があったときだけ。
さらに山から降りてきてスクワット300回・・・
ヒマラヤにも4回登りました。一度血を吐いてタンカで運ばれたそうです。それで片方の肺の半分がつぶれてるとか・・・
そのスーパー爺さんは森爺と呼ばれてます。
マグロ役をやらせたら一番元気。

何回もニコニコしながらダッシュしてました。息も全然切れません。
ファイトも全然余裕。ドラグ25キロです。船べりと違って手すり等がないので実戦よりしんどいのですが。

この爺さん、ほんまに何者?
最近は森爺ではなくて、毒爺とか、猛毒爺とか、もうろく爺とか、いろいろ呼ばれてます(笑)
3人目は
ダントツで若い24歳!
ボンガキです。小学校3年の時から俺と釣りしてます。
師匠は何と福井健三郎と小西健滋です。俺は何も教えてません。怒るだけです。
7年前、17歳の時にニュージーランドのマグロにスピニングで挑みました。そのときは船にアクシデントがありダメでした。
そのときのレポート
http://grouperboys.web.fc2.com/07report_a/0708grey_2/grey_c.htmGT65キロ、カンパチ48キロ、ヒラマサ45キロ・・・ボンガキはプロも顔負けの実績です。
若いけど経験は一番なのでトップバッターで本番に挑ませます。

ちなみに俺は全員がキャッチするまでやりません。これはニュージーランドからずっと続けてます。
みんなに挑んでいただきたいのが、このツアーを続けている一番の理由です。
2番目は海外へ行かなければわからないことがいっぱいある。それを学んでほしいからです。
挑戦する気持ちと常に学ぶ気持ちが大切です。
屋外特訓が終わった後は、キャビンに戻ってビデオを見ながら勉強会です。

先人たちのファイトをたっぷりと見て、実戦に備えます。何も知らぬまま挑むんで勝てる相手ではありません。
そして明日からのタックル準備
ボンガキがみんなのシステムを作っていますが、窓の外では・・・

浦爺がエンジン全開で吸ってました(笑)

俺「早死にしたいの?」
浦爺「中途半端に吸うのがよくない」「1日100本吸えば免疫出来まっせ」
この日から「ヤニ貴」と改名しました(笑)
さあ明日から本番です。