2015/10/29

危機的な北海道の水産資源

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この日ロ現場史は見ごたえ十分。北方海域において密漁、癒着、暴力団、スパイ行為などなど。かつてこんなことが平然と行われてきたことに驚く。金のためなら日本の機密も流してしまう。行政がらみの売国行為である。

クジラコンプレックスも面白い。日本の水産行政がいかに世界で孤立しているかがよくわかる。自慢の科学的根拠もオーストラリアに完敗である。あげくに自画自賛するしかなくなってしまった水産庁、見ていて気の毒に感じる。しかし、裁判の判決を無視して調査捕鯨を続けるというのはいただけない。裁判では日本も堂々と戦ったはずである。負けたから判決を無視するなんて絶対にやってはいけない。少なくとも次の裁判で、勝訴するまで捕鯨はやるべきではない。けっして俺は捕鯨反対論者ではないので誤解しないように。

ただし、クジラを獲ったところで売れないだろう。商業捕鯨が行われていた時代も国民のクジラ離れは進んでいた。1947年頃は日本人の肉類消費の46パーセントが鯨肉だったが、1980年にはほぼ0パーセントになった。これでは獲っても売れない。売れないクジラは産業廃棄物になるか、発展途上国に激安で売ることになる?

さて本題だが

あるところで北海道の研究者?に「無知」と言われた。自分から批判的な態度で登場したのだが、俺の質問、疑問に一切答えず(実は答えられない)、イタチの最後っ屁を俺にふっかけて出て行った。情けないと言うか、男らしくないと言うか。我が国の水産行政を代弁しているような男だった。

その北海道の水産業がどういう状態なのか、無知レベルで調べてみた。なんやらほとんどの魚が危機的にまで減少しているではないか。

水産庁関係者の決まり文句は「資源の減少は環境要因」である。ニシンもタラもホッケもイカナゴも資源が減ったのは環境要因らしい。環境要因だというなら他の国も資源が減っているはずだ。しかし一時的には資源が減ったことはあっても、多くの国が資源回復に成功している。どうやって回復させたかと言うと「禁漁」「禁漁区の設定」「大幅な漁獲規制」などである。環境要因が原因なら、こんなことをやっても無駄なはずだが、なぜかほとんどの国が成功している。

日本のニシン漁はかつては100万トン近くも獲っていた。ところが1956年からパッタリと獲れなくなった。近年は3000トン台で推移している。ピーク時の約300分の1ある。こんなに減ったら禁漁するのが当然だと思うが、調べた限りでは禁漁もなければ、漁獲規制もやったことがないらしい。どんなに減っても獲り放題である。無知な人間でもこれでは回復しないと思うだろう。5年くらい禁漁にすべきである。もしくは資源が安定するまで禁漁にすべきである。それでも資源が回復しなければ、環境要因ということが考えられる。と無知な俺は思う。

ホッケもスーパーに並んでいるのは外国産ばかりになってきた。スケトウダラもほぼ資源は壊滅である。イカナゴもどんどん減っている。そしてクロマグロは北海道の日本海側にはほとんど回遊してこなくなった。そりゃ餌がなければ来ないだろ。カナダもケープコッドも餌が大量にあるから来るのだ。


ニシンの漁獲量である。かつては100万トンも獲っていたのだが、近年は3000トン台で推移している。
1ニシン漁獲量

このグラフを見ると1900年をピークに年々漁獲が減っていることがわかる。1955年以前はABCをオーバーした漁獲だったのでは?
そして1956年に突然ニシンが姿を消した。環境要因、森林伐採など諸説あるが、乱獲が一番の原因ではと無知な俺は考えてます。

ABC(生物学的漁獲可能量)…水産総合研究センターの資料に基づいて行政庁が設定する枠で、科学的に見てこの水準以上獲ったら乱獲になるという数量。


最盛期のニシン漁。どの船も沈むくらい積んで帰ってきた。
2ニシン


ちなみにノルウエーも一時は絶滅寸前まで資源が減ったが、科学的根拠に基づいた資源管理をやった結果、資源回復に成功した。ノルウエーにできて、日本にできないはずはないと思うのだが。

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ホッケの漁獲量。数も減ったが、サイズも小さくなった。

3ホッケ漁獲量


スケトウダラの資源量。すでに絶滅直前。

4スケトウダラ


イカナゴの漁獲量。これも減る一方である。
5イカナゴ漁獲量


よく魚が減ったのはクジラが増えたからだという人がいる。だったら北大西洋は日本近海以上に魚が減っているはずだ。しかしケープコッドに行けば毎日たくさんのクジラに出くわす。多い日は100頭以上に出くわすのだ。ホエールウオッチングの船は「クジラに会えなかったら全額返金」が売り文句である。そしてイカナゴ、サバなどが無尽蔵にいる。そしてクロマグロ、ストライプトバス、ブルーフィッシュなどのフィッシュイーターもいっぱいいるのだ。カナダもクジラは毎日見るが、ニシンは刺し網にてんこ盛りに掛かるし、サバはサビキで入れ食いである。クロマグロは300キロオーバーが毎日ヒットする。クジラが原因で魚が減ったのならケープコッドやカナダは資源が激減しててもいいはずだが。日本よりはるかに資源が豊かなのだ。それでも魚が減ったのはクジラが増えたからと言いますか?

北海道は今年の6月下旬に行った。焼尻、天売、利尻、礼文、羽幌、留萌、稚内と回ってきた。それぞれのところで郷土資料館を見てきた。ニシン最盛期のころの写真。そして漁獲量の推移。人口の推移などがグラフになって展示されていた。最盛期のころの写真は凄い。すべての船が沈みそうなくらいニシンを積んで帰ってくるのだ。こんな乱獲を続けたらいなくなると考えるは当然だろう。海の資源は無限ではないのだから。そしてニシンが獲れなくなって人口は一気に減少した。


天売島の刺し網は全長4キロである。それだけの長さでも漁獲は300キロ前後。
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カナダの刺し網は全長50メートルもないのだが、ニシンが300キロくらい掛かっている。
7カナダ


そしてカナダではこんな巨大クロマグロが毎日釣れるのだ。日本では100年かけても釣れないサイズである。
8カナダ


可哀想なのは漁師、地元民だけではない。海鳥も可哀想だ。あのオロロン鳥はニシンが獲れなくなったころから激減した。1938年ころは天売島だけで4万羽以上もいたのだが、現在はたったの15羽くらいしかいない。
ウトウは現在80万羽が天売島に生息しているが、昨年は餌(カタクチ、イカナゴ、ホッケの幼魚)が獲れず、すべての親が子育てを放棄して北へ飛び立ってしまったそうだ。40万つがいの雛が全滅したのである。今年も雛の発育状況は悪いと聞いた。夕方、ノシャップ岬(稚内)の沖を東から西へ飛んでいくウトウの群れを見た。天売島からオホーツク海まで餌を探しに往復しているのである。往復300キロ以上もあるところまで餌を獲りに行ってるのだ。ウトウが10年後に絶滅してないことを祈る。


ウトウの悲惨な現実
9ウトウ3


あたりが暗くなると一斉に飛び立ち巣に戻る。
10ウトウ2


ノシャップ岬の沖を天売方面へ飛んでいくウトウの群れ
11ウトウ


オロロン鳥は1938年ころは4万羽。1963年は8000羽。そしてついに15羽。
12オロロン


オロロン鳥の飛行の撮影に成功。ウトウの後ろを飛んでいるのがオロロン鳥である。
13オロロン


ウミネコも餌が獲れないので24時間働くようになった。生きていくのは大変な時代なのだ。
14ウミネコ


海の資源は全人類の財産です。EEZ内だからといって獲り放題ではないのです。EEZとはその海域を管理する責任を当該国に与えただけです。当然、責任を持って管理しなければなりません。その責任を日本の水産行政は無視しているようにも感じます。
まずは自国の資源管理をしっかりとやるべきです。水産先進国と自負するならなおさらです。そして世界のお手本となるべきです。


ところで

北海道の研究者?に言いたい。

「あなたは今まで何をやってきたの?」


※漁獲量のグラフはすべて水産庁の資料を元にしました。


2015/10/03

クロマグロ遊漁の規制について

多くのアングラーに夢を与えてきた津軽海峡。ここでは数えきれないほどの釣り人とクロマグロの格闘が行われてきた。
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こんなニュースが流れてきた。

河北新報<マグロ資源管理>青森全域漁抑制を要請
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201510/20151001_23042.html


そしてわかっていたかのようにタイミングよく俺のところにこんなポスターが送られてきた。

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クロマグロを対象とする遊漁者・遊漁船業者の皆様へ
http://www.jfa.maff.go.jp/j/yugyo/y_kuromaguro/kyouryokuirai.html


ポスターの右下の情報はここで発信されてます。

太平洋クロマグロに係る遊漁者・遊漁船業者に対する協力要請の状況について
http://www.jfa.maff.go.jp/j/yugyo/y_kuromaguro/pdf/270929kuromaguro_kiseizyoukyou.pdf


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現段階は青森のみで自粛レベルはBです。青森県以外は自粛の要請はありません。
B:遊漁者は30キロ以上のクロマグロを対象とした遊漁は可能ですが、30キロ未満がかかった場合はリリースしてください。

ちなみにAが発信されると大小を問わずクロマグロは自粛です。

水産庁に問い合わせたところ、要請であって強制ではないそうです。

でも、自粛が望ましいと俺は思います。資源保護をみんなで考える時代です。釣り人が強く願う「産卵期のまき網漁の禁止」を実現させるためにも30キロ未満のクロマグロは狙わない。そして釣れたらリリースに心がけるべきと考えます。
小さいマグロを根こそぎキープしていたら行政やまき網に強いことが言えなくなります。
水産庁「メジは幼魚ですよ。幼魚を根こそぎキープして、まき網に獲るなとは矛盾してますよ!」と言われてしまいます。

青森だけでなく、本州も九州も沖縄も小さいマグロは狙わない、釣れたらリリースをするように心がけましょう。

未来のために、次世代のために、今は我慢する時だと思います。クロマグロの成長は早いです。4歳で60キロ以上になります。大西洋クロマグロを例に取れば、資源管理をしっかりやれば5年で資源は大幅に回復します。

そのためにも釣り人は団結して行政に訴えて行くべきです。


エリアはここで確認できます。

クロマグロの部屋
http://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/bluefinkanri.html


青森県の自粛のニュースは7月10日、11日に地元の新聞に載ってました。6月末の時点で漁獲量が181トンに達し、来年3月までの漁獲の上限216.5トンの8割を超えてました。ここで問題なのは定置網が与えられた101.1トンの枠をこの時点で180.8トンも獲ってしまったことです。あおりを食らったのは延縄と一本釣りです。漁期に入る前に警報発令となってしまったのです。
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はえ縄と一本釣りの漁師が怒るのは当然です。
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この東奥日報の新聞を見ると定置はすでに枠を大幅に超えているのに、県が「網に入って死んでるマグロは水揚げするように」と指導していることです。これでは何の規制にもならない。混獲を避ける対策を早急に打つ。そして今後定置で水揚げしたマグロは売買禁止にする。そのくらい厳しくやらないと規制とは言えない。それができないのなら、太平洋クロマグロは確実に絶滅への道を歩むことになる。


そして不満は遊漁にも向けられ、一部漁業者から「遊漁も規制すべき」の声が出た。
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ただし、遊漁のクロマグロ漁獲はたったの15.6トン。まき網は5098トンである。
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現時点では水産庁は遊漁に強い規制をする考えはないようです。でもいつ変わるかわかりません。



青森県・小泊港。たくさんの遊漁船とプレジャーが停泊している。クロマグロ釣りが大人気となり数年で釣り船は10倍以上に増えた。
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3年前から小さいマグロをリリースする釣り人がポツポツと増えてきた。しかしまだ9割以上はキープしていると思われます。
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赤ペンの中が最近のまき網の漁獲です。今年の枠は大型魚(30キロ以上の成魚)3098トン、未成魚2000トン、合計5098トンですが、成魚は2006年以降達したことがありません。これでは規制とは言わず、獲り放題となります。
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どうせ獲れないのなら20トンくらい遊漁に分けていただきたい。いたって簡単なことだと思います。



我が国の資源管理がいかに遅れているか(やる気がない)、大西洋クロマグロとミナミマグロの資源管理と比べれば一目瞭然です。


まず西大西洋側のクロマグロです。日本の遠洋マグロ船の乱獲で一気に資源が減少しました。
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1982年から漁獲量が一気に減るのは産卵場であるメキシコ湾を禁漁にしたからです(現在も継続中)。


日本が獲り始めた1970年以降、一気に資源が減少します。
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2010年ころからようやく資源が回復していきます。現在はかなりのスピードで増えているそうです。


東大西洋側のクロマグロです。かつては6万トン以上獲っていたのを12900トンまで漁獲枠量を減らしました。その結果、急激に資源が回復しています。
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資源が増えたおかげで日本の漁獲枠(TAC)も増え続けています。

大西洋クロマグロはICCAT(大西洋マグロ類国際保存委員会)が管理しています。管理の中心はヨーロッパと北米です。



次にミナミマグロです。1950年代から日本の漁獲が一気に増えます。
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資源は急激に減少して、1994年にはついに絶滅危惧種となります。

その後、1994年にCCSBT(みなみまぐろ保存委員会)を設立。オーストラリアが中心になって資源管理を進めます。ピーク時には8万トンも獲っていた日本ですが、どんどん枠を減らされて2007年には2700トンとなります。この間には日本でのミナミマグロ不正事件も発生しました。CCSBTに報告されている量よりも、日本で流通している量が大幅に多かったことがわかったのです。調べたのはオーストラリアでした。そして日本は不正があったことを認めています。その後、日本も管理を厳しくしました。その結果、2012年頃から資源は年々回復しています。


上が加入量(その年に生まれたマグロ)、下が親魚資源量です。これからかなり期待できそうです。
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資源が回復したことで、日本に割り当てられる漁獲枠も増えています。
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我慢すれば、資源は回復するのです。


ちなみに太平洋クロマグロは資源がいまだに減り続けています。管理は日本が中心のWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)がやってます。そして昨年11月についに絶滅危惧種となった。


前回のブログでアメリカのレギュレーションを紹介したけど、そのアメリカで太平洋クロマグロを取り上げた釣り団体の勉強会がありました。

以下、アメリカの友人からの報告です。

現在ロサンゼルス周辺には4つの釣り団体が存在します。先月太平洋クロマグロの資源保護について、合同の勉強会を開催いたしました。
昨年10月のメキシコ太平洋岸でのクロマグロの全面禁漁を追いかけるように、本年7月30日よりアメリカ領海での遊漁の規制も始まりました。今までは対岸のことと切迫した意識がなかった我々ですが、直接的な規制とその規制の理由を調べる中でようやく重い腰をあげることができました。
勉強会最後の討論では、「絶滅危惧種に指定された太平洋クロマグロの問題を、様々な人および関係団体に訴求すること」「自分たちでできることを考え、早期に団体行動に移す」「この勉強会を継続し、多くに参加者に呼びかける」等の意見が出、実際行動に移そうということになりました。


下記は新レギュレーションです。
https://www.federalregister.gov/articles/2015/07/08/2015-16720/international-fisheries-pacific-tuna-fisheries-2015-and-2016-commercial-fishing-restrictions-for

下記、7月30日のCA-DFGからのニュースレターです。
https://cdfwmarine.wordpress.com/2015/05/29/bluefin-tuna-update/

このレターにクロマグロのバッグリミットが10匹から2匹に変更になったと明記されてます。

下記はCalifornia DFGのレギュレーションです。(州ごとに違います)
https://nrm.dfg.ca.gov/FileHandler.ashx?DocumentID=93478&inline=true


日本は行政の動きも遅いけど、釣りメーカーも釣り団体も釣りメディアも動く気配はありません。未来のことを真剣に考えているのかおおいに疑問です。

俺は日本もレギュレーションを取り入れるべきだと考えてます。そして国はあらかじめ遊漁にも漁獲枠を設けるべきです。今の管理方法では漁師が獲りすぎたら遊漁に自粛要請が来ると言うことになります。直前に言われても困ります。ほとんどの釣り人が1匹も釣ってないうちに自粛と言われても困ります。遊漁船、宿の予約もしてあります。そして飛行機で行く釣り人もいます。アメリカのように1日1匹とか、年に何トンとか遊漁枠を決めるべきだと思います。多くのアングラーが1年くらい前から予定を立てているのです。

もちろんレギュレーションはクロマグロだけでなく、釣りの対象となる魚すべてです。すべての対象魚にサイズリミット、バッグリミットを決めます。

今のままでは、漁業者が漁獲する魚は小型化して、資源は年々減少していきます。釣り人の釣る魚も小型化、そして年々少なくなってます。漁業者人口はピーク時100万人だったのが17万人まで激減。釣り人口もピーク時2020万人が810万人まで減少しました。この人口減少には水産資源の減少が大きく関わっていると思います。それは離島や地方の経済を破綻させる大きな要因にもなっていると思います。