危機的な北海道の水産資源

この日ロ現場史は見ごたえ十分。北方海域において密漁、癒着、暴力団、スパイ行為などなど。かつてこんなことが平然と行われてきたことに驚く。金のためなら日本の機密も流してしまう。行政がらみの売国行為である。
クジラコンプレックスも面白い。日本の水産行政がいかに世界で孤立しているかがよくわかる。自慢の科学的根拠もオーストラリアに完敗である。あげくに自画自賛するしかなくなってしまった水産庁、見ていて気の毒に感じる。しかし、裁判の判決を無視して調査捕鯨を続けるというのはいただけない。裁判では日本も堂々と戦ったはずである。負けたから判決を無視するなんて絶対にやってはいけない。少なくとも次の裁判で、勝訴するまで捕鯨はやるべきではない。けっして俺は捕鯨反対論者ではないので誤解しないように。
ただし、クジラを獲ったところで売れないだろう。商業捕鯨が行われていた時代も国民のクジラ離れは進んでいた。1947年頃は日本人の肉類消費の46パーセントが鯨肉だったが、1980年にはほぼ0パーセントになった。これでは獲っても売れない。売れないクジラは産業廃棄物になるか、発展途上国に激安で売ることになる?
さて本題だが
あるところで北海道の研究者?に「無知」と言われた。自分から批判的な態度で登場したのだが、俺の質問、疑問に一切答えず(実は答えられない)、イタチの最後っ屁を俺にふっかけて出て行った。情けないと言うか、男らしくないと言うか。我が国の水産行政を代弁しているような男だった。
その北海道の水産業がどういう状態なのか、無知レベルで調べてみた。なんやらほとんどの魚が危機的にまで減少しているではないか。
水産庁関係者の決まり文句は「資源の減少は環境要因」である。ニシンもタラもホッケもイカナゴも資源が減ったのは環境要因らしい。環境要因だというなら他の国も資源が減っているはずだ。しかし一時的には資源が減ったことはあっても、多くの国が資源回復に成功している。どうやって回復させたかと言うと「禁漁」「禁漁区の設定」「大幅な漁獲規制」などである。環境要因が原因なら、こんなことをやっても無駄なはずだが、なぜかほとんどの国が成功している。
日本のニシン漁はかつては100万トン近くも獲っていた。ところが1956年からパッタリと獲れなくなった。近年は3000トン台で推移している。ピーク時の約300分の1ある。こんなに減ったら禁漁するのが当然だと思うが、調べた限りでは禁漁もなければ、漁獲規制もやったことがないらしい。どんなに減っても獲り放題である。無知な人間でもこれでは回復しないと思うだろう。5年くらい禁漁にすべきである。もしくは資源が安定するまで禁漁にすべきである。それでも資源が回復しなければ、環境要因ということが考えられる。と無知な俺は思う。
ホッケもスーパーに並んでいるのは外国産ばかりになってきた。スケトウダラもほぼ資源は壊滅である。イカナゴもどんどん減っている。そしてクロマグロは北海道の日本海側にはほとんど回遊してこなくなった。そりゃ餌がなければ来ないだろ。カナダもケープコッドも餌が大量にあるから来るのだ。
ニシンの漁獲量である。かつては100万トンも獲っていたのだが、近年は3000トン台で推移している。

このグラフを見ると1900年をピークに年々漁獲が減っていることがわかる。1955年以前はABCをオーバーした漁獲だったのでは?
そして1956年に突然ニシンが姿を消した。環境要因、森林伐採など諸説あるが、乱獲が一番の原因ではと無知な俺は考えてます。
ABC(生物学的漁獲可能量)…水産総合研究センターの資料に基づいて行政庁が設定する枠で、科学的に見てこの水準以上獲ったら乱獲になるという数量。
最盛期のニシン漁。どの船も沈むくらい積んで帰ってきた。

ちなみにノルウエーも一時は絶滅寸前まで資源が減ったが、科学的根拠に基づいた資源管理をやった結果、資源回復に成功した。ノルウエーにできて、日本にできないはずはないと思うのだが。

ホッケの漁獲量。数も減ったが、サイズも小さくなった。

スケトウダラの資源量。すでに絶滅直前。

イカナゴの漁獲量。これも減る一方である。

よく魚が減ったのはクジラが増えたからだという人がいる。だったら北大西洋は日本近海以上に魚が減っているはずだ。しかしケープコッドに行けば毎日たくさんのクジラに出くわす。多い日は100頭以上に出くわすのだ。ホエールウオッチングの船は「クジラに会えなかったら全額返金」が売り文句である。そしてイカナゴ、サバなどが無尽蔵にいる。そしてクロマグロ、ストライプトバス、ブルーフィッシュなどのフィッシュイーターもいっぱいいるのだ。カナダもクジラは毎日見るが、ニシンは刺し網にてんこ盛りに掛かるし、サバはサビキで入れ食いである。クロマグロは300キロオーバーが毎日ヒットする。クジラが原因で魚が減ったのならケープコッドやカナダは資源が激減しててもいいはずだが。日本よりはるかに資源が豊かなのだ。それでも魚が減ったのはクジラが増えたからと言いますか?
北海道は今年の6月下旬に行った。焼尻、天売、利尻、礼文、羽幌、留萌、稚内と回ってきた。それぞれのところで郷土資料館を見てきた。ニシン最盛期のころの写真。そして漁獲量の推移。人口の推移などがグラフになって展示されていた。最盛期のころの写真は凄い。すべての船が沈みそうなくらいニシンを積んで帰ってくるのだ。こんな乱獲を続けたらいなくなると考えるは当然だろう。海の資源は無限ではないのだから。そしてニシンが獲れなくなって人口は一気に減少した。
天売島の刺し網は全長4キロである。それだけの長さでも漁獲は300キロ前後。

カナダの刺し網は全長50メートルもないのだが、ニシンが300キロくらい掛かっている。

そしてカナダではこんな巨大クロマグロが毎日釣れるのだ。日本では100年かけても釣れないサイズである。

可哀想なのは漁師、地元民だけではない。海鳥も可哀想だ。あのオロロン鳥はニシンが獲れなくなったころから激減した。1938年ころは天売島だけで4万羽以上もいたのだが、現在はたったの15羽くらいしかいない。
ウトウは現在80万羽が天売島に生息しているが、昨年は餌(カタクチ、イカナゴ、ホッケの幼魚)が獲れず、すべての親が子育てを放棄して北へ飛び立ってしまったそうだ。40万つがいの雛が全滅したのである。今年も雛の発育状況は悪いと聞いた。夕方、ノシャップ岬(稚内)の沖を東から西へ飛んでいくウトウの群れを見た。天売島からオホーツク海まで餌を探しに往復しているのである。往復300キロ以上もあるところまで餌を獲りに行ってるのだ。ウトウが10年後に絶滅してないことを祈る。
ウトウの悲惨な現実

あたりが暗くなると一斉に飛び立ち巣に戻る。

ノシャップ岬の沖を天売方面へ飛んでいくウトウの群れ

オロロン鳥は1938年ころは4万羽。1963年は8000羽。そしてついに15羽。

オロロン鳥の飛行の撮影に成功。ウトウの後ろを飛んでいるのがオロロン鳥である。

ウミネコも餌が獲れないので24時間働くようになった。生きていくのは大変な時代なのだ。

海の資源は全人類の財産です。EEZ内だからといって獲り放題ではないのです。EEZとはその海域を管理する責任を当該国に与えただけです。当然、責任を持って管理しなければなりません。その責任を日本の水産行政は無視しているようにも感じます。
まずは自国の資源管理をしっかりとやるべきです。水産先進国と自負するならなおさらです。そして世界のお手本となるべきです。
ところで
北海道の研究者?に言いたい。
「あなたは今まで何をやってきたの?」
※漁獲量のグラフはすべて水産庁の資料を元にしました。