2015/11/19

疑問だらけの資源管理

調べれば調べるほど、不思議なことだらけ。それが我が国の資源管理である。

前回のブログで紹介した「日ロ現場史」(本田良一著、北海道新聞社)

とにかく驚く内容である。

主なところを簡単に抜粋。

P13
レポ船(密漁を黙認してもらうためにソ連側に日本の機密情報を漏らしている船)
1970年代が全盛期

P18
特攻船の登場(1978年)
特攻船とは33フィートくらいの船に大きな船外機を付けてソ連領内で密漁をする船、警備艇が来ると猛スピードで逃げる)
80年代は100億円産業。暴力団の資金源でもあった。
90年9月に壊滅作戦開始。
91年4月にほとんど姿を消す。

P123
1994年4月15日
93年に日本の密猟者が7500回、国境を侵犯し、約150万トン、10億ドルの水産物を漁獲(インタファクス通信)

P146
VMS装置(船の位置を確認できる衛星追跡装置)
ところが故意に電源を切って操業海域からはるかに離れたロシア領海内で密漁していた。

P239
1990年5月21日
「北朝鮮の漁船に偽装した日本漁船12隻がソ連に拿捕」

P244
1992年5月21日
「北太平洋公海、サケ・マス集団密漁? 船名隠し22隻、米国が水産庁に通報」
「日本漁船は操業水域から900キロも離れた海で密漁」

P255
1992年10月20日
「サケ割当量の27倍漁獲」

P285
漁協組合長が口止め料1000万円を暴力団に払っていた。

P360
沖取りする日本の船団が大きくなるにつれ、ソ連沿岸の定置網のサケ・マス漁獲量は激減していたのだが、
日本国内では日ソ交渉を促進するための圧力と受け止められた。


ほんの少しを紹介しただけだが、驚くばかりだ。しかも政治家、行政までもが絡んでいるケースもある。また見て見ぬ振りも。

まさに海賊である。これでは中国や台湾、韓国に何を言っても無駄であろう。

相手を説得させるためには、まず自分を改めることである。



さて前回の続きだが、ニシンが消えた原因には諸説ある。その中の一つで水産庁が一番力説するのが「水温の上昇説」である。というより、何でもかんでも水温の上昇が資源の減少した原因と言ってるように俺には聞こえるのだが。

水産庁のガードは堅い。肝心な部分は我々国民にはほとんどわからない。ノルウエーなどはVMS(衛星追跡装置)を搭載した全ての漁船の航海及び操業が監視・記録され,インターネットで閲覧可能なのだが、我が国は水産庁以外は閲覧することができない。対馬では海上保安庁が記録データを要求したが断られている。

当然、各水産研究所も水産庁側に都合の良い研究しかしていないふしがある。


今回は水温上昇説について、気象庁のデータを元に素人の俺が解説する。

※画像はクリックすれば拡大画面が出てきます。

この気象庁のグラフを見ると日本海北東部は漁獲が大量にあった1920年代が異常に高く、消滅した1950年代が低いことがわかる。水温上昇が原因でニシンが消えたという説に関しては、どう説明していいのか俺にはわからない。

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出典:気象庁ホームページ (当該ページのURL)
海面水温の長期変化傾向(日本海北東部) 平成27年3月10日更新
http://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/shindan/a_1/japan_warm/cfig/warm_area.html?area=G



このグラフと重ね合わせてみると俺の疑問がよくわかる。
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出典:北海道区水産研究所
平成24年度ニシン北海道の資源評価



これは放流実績。毎年何百万匹も放流しているのだが、成果はほとんど出ていない。
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平成26(2014)年度ニシン北海道の資源評価
北海道区水産研究所



次に北部大西洋の海面水温である。上がったり下がったりしながら全体としては水温は上昇している。
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出典:気象庁ホームページ (当該ページのURL)
北大西洋の海面水温平年差の推移 平成27年 2月10日更新
http://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/climate/glb_warm/natl_trend.html



これはノルウエーのニシンの資源量。水温が低かった1970年ころに資源が絶滅直前まで減った。ところが1990年代から急激に回復している。水温はあきらかに上昇しているのに。まったく不思議である。
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出所:ノルウエー水産審議会
ノルウエーニシンの資源推移



水温上昇が資源の減少というなら、北部大西洋も資源は減っているはずだが、ニシンもシシャモもサバもホッケもクロマグロも資源は安定、もしくは増えているのである。おなじ北部大平洋のアラスカや極東ロシアも日本よりははるかに資源が安定している。だから危険を覚悟で密漁に行ったのだ。

資源の回復に成功した国と、失敗続きの日本との違いは資源管理である。成功した国は禁漁、もしくは大胆な漁獲削減で資源を回復させてきたのである。水温も影響はあるだろうが、それに原因を擦り付けて乱獲していたら、未来永劫資源が増えることはない。逆に絶滅と言う悲劇を招くことになる。

日本は禁漁ということをまずやらない。毎年ニシンを放流して、その少ない資源をすぐに獲りきってしまう。これでは100年経っても資源は回復しない。ここまで減ったニシンである。禁漁にしたところで増える保証はない。でも放流を無駄にしないためにも禁漁にすべきである。

また漁師も悪い。明らかに乱獲で減ったのに、漁師自ら乱獲とは絶対に言わない。
それは漁師の本能。漁獲量が急激に減り続けているときも、漁師は来年も獲りたいから乱獲ではないと言い張ってきたのでは推測する。目先の金に心を奪われて、自分の首を絞めて行ったのである。



資源管理への疑問その2

ここからは北海道大学・水産資源・海域環境保全研究会の資料を基に説明する。

我が国のABCとTAC、そして漁獲量に関する疑問

ABC
(生物学的漁獲可能量)…水産総合研究センターの資料に基づいて行政庁が設定する枠で、科学的に見てこの水準以上獲ったら乱獲になるという数量。

TAC制度
200カイリ漁業水域において、魚種ごとに総漁獲可能量(TAC : total allowable catch)を定め、漁獲総量を規制することによって海洋生物資源の保存を図ろうとする制度。国連海洋法条約は、沿岸国に対しTACに基づく漁業管理によって、水産資源を量的に管理することを求めている。TAC制度は海洋生物資源の保存及び管理に関する法律によるもので、この法律をTAC法と呼ぶ場合もある。2006年現在、日本ではマアジ、サバ類、マイワシ、スケトウダラ、サンマ、ズワイガニ、スルメイカの7魚種にTACを設定。


基本的にはTACはABCを上回ってはいけないはず。
ところが、我が国のTACはサンマを除いてほとんどがABCよりTACのほうが多いのである。これは乱獲を認めていることでは。
※赤い線がABC。それに対する各魚種のTACの割合。
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ABCとTACの関係は年々まともになってきてはいる。



サンマのABCは多すぎでは?スケトウダラは海域によっては絶滅直前まで資源は減ってます。TACと言うより禁漁にすべきです。
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TACとは漁獲してよい量のことだが、サンマは毎年頑張ってもTACに達しない。これを資源管理と言えるのか?漁獲努力量というなら納得するが。
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どう見てもサンマのABCは多すぎる。
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我が国のサンマの漁獲量はあきらかに下降線。ABCよりはるかに漁獲してないのに減るのはなぜ?
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※道東海域へのサバ・サンマの来遊動向をさぐる(サンマの資源動向と国際的な漁業の動き)より引用

その間に、台湾、中国がどんどん漁獲を伸ばしてきた。これは公海上なので日本は管理できない。かつて、日本が世界中の海でやってきたことを台湾と中国がやってるのだ。



サンマの資源量は日本近海が大幅に減っている。ABCの30パーセント前後しか漁獲してないのに・・・
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※道東海域へのサバ・サンマの来遊動向をさぐる(サンマの資源動向と国際的な漁業の動き)より引用



台湾に追い越され、このままではやがて中国にも追い越されそうだ。
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※道東海域へのサバ・サンマの来遊動向をさぐる(サンマの資源動向と国際的な漁業の動き)より引用



調べれば調べるほど、知れば知るほど疑問は湧いてくる。今回はこのへんにしておいて。



3月に開催したスポーツフィッシングフェスティバルのアンケートの一部を公開します。今回のアンケートは項目が多く、集計が大変でした。


レギュレーションの導入については賛成が圧倒的に反対を上回ってます。資源管理に関しても、多くの国が厳格にやっていることを知ってるようです。ただし漁業関係に関してはまだまだ知らない人は多い。釣りと漁業は密接な関係があります。もう少し勉強をしましょう。
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クロマグロに関しては資源が減っているが増えているより圧倒的に多い。資源の減少の原因は乱獲がダントツ。さすがにリリースはまだまだ少ない。まあ1匹釣るのに何十万、もしくはそれ以上の大金を使っている人がほとんど。リリースできない気持ちは痛いほどわかります。これも資源が増えれば気持ちに余裕ができるので変わっていくと思います。
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キハダに関しては、資源の減少をさほど感じてない人が多い。6~7年くらい前から相模湾で大型のキハダが釣れ始め、現在も続いています。キハダが回遊してくるようになったのはエサのカタクチイワシが増えたことが原因?
しかし、そのカタクチが最近減りつつあるようです。これも巻き網が原因とか。キハダも巻き網がどんどん巻いてます。このままではいつかパタッと来なくなると思います。
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GTアングラーは入門の時点からリリースを教えられます。リリースが完全に定着しているのです。そのせいか、他の魚を釣ってもリリースする人が多いです。でも資源は減っていると感じている人が多いです。リリースの方法も真剣に考えなければいけません。漁師さんはほとんど獲らないので、資源管理は我々釣り人と釣り船にかかっています。
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ヒラマサは資源の減少をそんなに危惧してないようです。外房などは福島原発の影響もあると思います。漁業が縮小したことで資源が多少なりとも守られたのかもしれません。関東ではかなりリリースする人が増えてきてます。10年前は誰もリリースしませんでした。ただし、地元の船長のお話では、資源はどんどん減っているそうです。ルアーマンの腕が上がったから釣れてるだけかもしれません。
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集計した魚種は38種ありました。その中で資源が増えていると言う回答の方が多かったのはヒラメだけです。これは福島原発事故の後に急激に増えたことがわかっています。



11月9日は東京海洋大学の和泉副学長に呼ばれ、奥山客員教授のフィッシング教室の場を借りて講演をしました。こんなツリキチが大学で講演なんて、61年間一度も考えたことがありません。世界を開拓してきたことを和泉副学長は素晴らしいこととおっしゃってくれました。チャレンジですね。これからもいろんなことにチャレンジしていきます。
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講演が終わっての懇親会は最高に楽しかったです。新しい仲間もいっぱい増えました。
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また昨年より一般社団法人「海の幸を未来に残す会」の顧問もさせていただいてます。まだまだこの分野では若輩なので、会の皆さんに迷惑をかけないように活動をして行こうと思ってます。

でも、昔から短気なので、爆発したときは大目に見てくださいm(__)m

海の幸を未来に残す会
ホームページ http://www.uminomirai.or.jp/
Facebookページ https://www.facebook.com/uminomirai/


本日は夕方18:30から早稲田大学で「海の幸シンポジウム」が開催されます。俺も参加します。興味のある方は参加して見てはいかがですか。資源管理、流通関係の第一人者のお話をたくさん聞くよい機会です。


追記
グラフや図を引用したときは引用元を載せることにしました。少し前にあるサイトに載せた図が俺が作ったとある方に勘違いされ、その内容が反則だ、騙しているとまで言われました。その図は水産庁関係のサイトから引用したものでした。何が反則なのか、いまだに俺にはわかりませんが、誤解を招かないように引用元を載せることにしました。心に誓って言いますが、反則とか騙すとか、そんな気持ちも考えもこれっぽっちも持ってません。また名誉棄損とまで言われましたが、弁護士に確認したところまったく名誉棄損にはならないと断言されました。そしてそんなくだらないことで争いたくないのが本音です。
また反省するところもあります。御用学者とか、過激な言葉は慎むようにします。見ている方が多いので、いろんな意味でよくないことだと反省してます。
ただし、おとなしくなることは絶対にありません。目標を達成するまでは全力でやらせていただきます。