マグロ漁師見習い・その1
勝本は日本海を代表するマグロの一本釣り基地だ。

現在インドネシアのジャカルタでこのブログを書いている。数日前、市内を車で移動しているときに友人のJonがマナー最悪、大渋滞の道路を指して「インドネシア、ノーレギュレーション」と言った。
先週、中国の大連にいたときも運転マナーの悪さと大渋滞にあんぐりした。割り込み、譲らない、信号無視、突然の進路変更などなど、路上はまさに戦場である。クラクションはあちこちでけたたましく鳴り、バイクが右から左から次々と割り込んでくる。歩行者はどこからともなく次々と現れて強引に道路を渡って行く。運転は360度を常に神経を張らないといけないと思うのだが、ほとんどの人は前しか向いてないように見受けられる。
ほとんどの東南アジアはこんな状況である。経済成長により多くの国民が車を所有するようになったが、運転マナーに関しては野放し状態である。車が増えた分、道路を拡張、さらに新しく作らなければならないのだが、ほとんど昔のままなのがインドネシアである。渋滞がひどくなれば、さらに運転マナーは悪くなる。悪循環である。運転手に譲るなんて気持ちの余裕は微塵もない。
ようやく地下鉄建設の動きが見え始めたが、完成がいつになるかは政府関係者でもわからない。おそらく20年以上先のことだろう。
海に関して言えば日本でも同じような状況がずっと続いている。
魚を獲る技術は格段に進化した。イカ釣り漁船でいえば電球の明るさが数年で何倍にも明るくなった。明るい電球はすぐに漁獲に結びつく。みんなこぞって明るい電球を買い求めた。2年も経てば、時代遅れの電球になってしまうので、常に最新の電球を付けてないとイカは周囲の船に持っていかれてしまうのだ。
そしてイカは減少した。儲かったのは電球メーカーだったかも。さらに明るすぎる電球は生態系にも悪影響をもたらした。そりゃそうである。夜は暗いというのが地球上の決まりである。それが昼間のように明るくなったら異変が出てくるのは当然だ。地球が誕生して46億年。その間にゆっくりと進化してきた。急激な変化に自然界は付いていけないのでる。
海外の漁業にも大きな進化があった。巻き網は各国が次々と効率の良いものを開発。最近は巻き網の5倍以上の能力がある「虎網」が台湾で開発されて使われるようになった。これもイカと同じように開発競争である。挙句の果てに海の魚は激減した。そうなるとさらに効率の良い巻き網漁船を開発、製造、大型化するのである。ソナー、魚探、GPSなどの進化も凄い。資源の減少は当然さらに加速する。あと数年でマグロもサバもカツオもサンマもいなくなるかもしれない。マイワシなんて数年前まではうじゃうじゃいたが、今では漁師さんでさえ「幻の魚」と言っているのだ。
6月20日からブラジルのリオデジャネイロで「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)が開催されている。そこで中国の温家宝首相が「我が国は発展途上国」と演説した。「先進国は持続不可能な生産・消費モデルを放棄し、途上国の発展を助けるべきだ」と語って、地球環境問題では先進国が特別な責任を果たすべきだとの考えを改めて強調した。
リオデジャネイロで1992年に開かれた地球サミットでは、工業化を進めた先進国に地球環境劣化の責任があり、技術や資金で途上国を支援すべきだとの考え方が打ち出された。だが現在、二酸化炭素排出量では中国が世界一だ。先進国側では、途上国を含むすべての国が環境保全と経済成長を両立させる「グリーン経済」を目指すべきだとの主張が高まっているが、温首相は演説でこれに反対する立場を明確にした。(読売新聞より抜粋)
有人宇宙船を打ち上げ、GDP世界第2位の中国の首相の発言である。
このリオ+20では公海上の水産資源の持続的利用に関する交渉を開始するという案も出されたが、一部の先進国の強い反対にあい、先送りとなった。強い反対国は5か国で、日本も入っていた。海の面積の3分の2が公海である。これを今後も乱獲し続ければどうなるかは素人にも明白にわかると思うのだが。
「ノーレギュレーション」の国は魚が釣れない。釣れないからリリースをまずしない。そしてターゲットはさらに小型化していく。
「レギュレーション」のある国は魚がいっぱい釣れる。いっぱい釣れれば魚をリリースする余裕が出てくる。魚が増えれば釣れるサイズも大型化していく。
いま、世界が取り組まなければならないことは水産資源の世界規模のレギュレーションだと思うのだが。
PS.クロマグロに関して日本は国内が野放し状態である。日本が世界に規制を訴えてもどの国も動かないだろう。「何をバカなことを!」と一笑されて終わり。
世界のクロマグロの8割を買いあさる国がこんな状態なのである。
日本近海のクロマグロ漁業の現状 その3
http://katukawa.com/?p=3526
昔からの夢だった「マグロ漁師さんの船に乗る」ために博多港から壱岐に向かう。
壱岐のパンフレット

ここで高速船ジェットフォイルのチケットを購入

ジェットフォイルはほとんど揺れがなく、実に快適。そして速い!

船ではなくて新幹線に乗っているような感覚だった。
1時間10分で壱岐の郷ノ浦に到着。

レンタカーで勝本漁港へ。約30分。
壱岐の若手漁師「五郎丸」が出迎えに。

遠征が続いているので民宿で少し休んだ後に夕食を食べた。
夜8時にマグロの餌にするトビウオを掬いに出発

港の目の前で船長が次々とトビウオを掬った。

約1時間で50匹も!

船長45匹!俺5匹(-_-;)
朝が早いので10時には寝た。
3時起床、3時半出港。
七里に到着すると、すでにたくさんの漁船が。

この日、釣れている場所はピンポイントだった。ポイントの潮上に船を持って行く。漁船同士の間隔は0.25マイル開けなければならないので船が多いときは3マイルも離れたところに付けることになる。

この日は潮が遅く、風向きも良くないので流れてポイントに到着するまで2時間くらいかかった。
途中で潮が変わったり、風向きが変わったら、目標のところに船は流れない。
上手くポイントに近づけるかが勝負の分かれ道である。
ほとんどの漁船はルールを守って、順番に潮上から流すが、一部に途中から割り込んでくる船もいる。どの世界にもルールを守らない奴はいるもんだ。
五郎丸は誰もが認める優秀な若手漁師だ。1回目の流しでポイントに着くなり2バイト。でも残念なことにすっぽ抜け。
再び潮上に付けて流す。
ポイントの上には鳥が集まり、トビウオが逃げているのが見えた。
2時間後にポイントに着くと、すぐにミヨシ側の竿が曲がった。

数秒後にトモ(後部)のリールからラインが飛び出した。

ダブルヒットである。
俺がトモを担当することになった。ロッドポストにはめたままファイトするなんて初めてなので魚の大きさもわからない。
ミヨシの魚を先に取り込むので、トモのリールはドラグを締めないでファイトをした。巻いても巻いても出て行くドラグである。
先にミヨシのマグロが姿を見せたので、トモの魚はそのままにして、カメラを持ってミヨシに移動した。
落ち着いた取り込みでモリは一発で決まった。

そしてすぐにトモに戻ったが、ロッドがまっすぐになっていた。竿から離れた直後にばれてしまっていた。漁師の手伝いなんて言えたもんじゃない。これじゃ見習いである。
マグロを船上へ上げた。60キロ以上はありそうだ。

すぐに鰓と内臓を抜く。尻尾も落とした。

胃袋からはバライカ(スルメイカの子供)と骨だけになった魚が出てきた。

そして頭に穴を開けて神経締め。

勝本漁協に水揚げ。

内臓、鰓を抜いて58.1キロ。元は65キロ前後だろう。

箱詰めにされて築地へ送られた。

その日は町内の居酒屋でマグロ漁師さんと一緒に盛り上がった。
俺のパソコンを覗いてビックリする漁師さん。

昨年のカナダの動画を見せたのだ。300キロオーバーのマグロが次々と船べりに出てくるのである。七里でも昔はこれに近い光景を見たそうである。今では300キロのマグロなんて七里ではパッタリと見られなくなった。
その動画
そのあとは漁師さんたちのこと。七里に来る遊漁船のこと。マグロの昔と今と未来。いろんなことを話し合った。

勝本の一本釣りの漁師さんのおかげで我々遊漁はマグロを釣ることができる。それを2年前にある方に教えていただいた。
最近(7~8年前?)まで日本海では操業していなかったマグロの巻き網船団が数年前から次々と現れるようになった。昔は北海道東方沖が巻き網の主な漁場だったが、マグロがパッタリ獲れなくなり日本海へと漁場を変えたのだ。しかも産卵期に集まるマグロを狙ってである。一網打尽にする巻き網はマグロが集結しているときを狙うのが効率が良いのだ。
かつては宮城県の塩釜港がクロマグロの水揚げ日本一と言われたが、近年はほとんど水揚げされてない。塩釜港全体の水揚げは昭和57年がピークで約500億円。平成21年には83億円まで落ち込んだ。
代わりに伸びてきたのが境漁港である。毎年産卵期の6月から7月に卵を持ったマグロが大量に水揚げされる。
産卵期のマグロを獲り続ければマグロがいなくなるのは誰にもわかることである。それが原因でかつては一本釣りでマグロがたくさん取れた山口県萩沖の八里ヶ瀬はほとんどマグロが釣れなくなってしまった。
七里は勝本の漁師さんが農林水産省に出向いたり、七里を常に監視したりして、巻き網船が入ることを防いでいる。そのおかげで多くのルアー船、そして釣り人がマグロを狙うことができるのである。
ほとんどの遊漁の船長はよくわかっていて、七里のルールを守っているが、ときおりプレジャーが問題を起こす。
今年の1月にもプレジャーが漁師さんの仕掛けの上を横切って切るということがあった。七里で釣りを楽しみたかったら漁師さんとトラブルを起こすのは絶対にやってはならない。漁師さん同士でもルールを守っているのだ。
2年前に都内で開かれたマグロシンポジウムに五郎丸船長も出席してスピーチをやった。
マグロシンポジウム
http://itacim.blogspot.jp/2010/08/envngo2010.html
松尾五郎さん(長崎県勝本町漁協)「壱岐のマグロ一本釣りの現場から(1)」
高卒後、父のあとを継いでマグロ一本釣り漁業につき、14年め。同世代はほとんど親子乗り。8年目に父逝去、以来ひとりで一本釣りで格闘。32歳。
本当に魚が少なかったことを実感。マグロは数も少なくなったが、小さいマグロが本当に少なくなった。
産卵期に集まる習性を利用して巻き網で取り尽くしてしまうのだから、減るのは当然。
一本釣り、これからも続けたい。
漁協のマグロ研究会で築地を訪れたとき、「やけ」たマグロを初めて食べて、呑み込めなかった。(やけ:釣り上げるときマグロの体温が上昇するが、それが十分下がらず、血抜きなどの処理も不十分だと、酸味が入ってしまって味が落ちる。そうした状態を「やける」「やけた」と言う。)
大久保 晃さん(同じく勝本町漁協)「壱岐のマグロ一本釣りの現場から(2)」
漁師の父の背中をみて育った。中卒後、漁師に。40代。
昔は、多くのマグロがジャンプする様子を毎日見ていた。もう今は見られない。
勝本漁協では、漁場監視船をつくるなどして、資源管理型の漁業を試みている。しかし、次の世代に魚を残せるか心配。息子は「お父さんと一緒に海で漁をしたい」と言うが、それが実現できるか本当に心配。
これからの漁業がどうあるべきか、漁師で話し合い、試行錯誤している。現状のままでは、とても駄目。勝本の漁師だけでは勝本の海を守れなくなっている。
勝本の漁師さんと話をして、考えていることはほとんど同じなんだなと思った。
このままでは近い将来、マグロは姿を消してしまうだろう。
一本釣りの漁師さんに頼らないで、我々釣り人も遊漁船も団結して動く時である。
打倒巻き網!
巻き網に規制をかけなければ多くの魚が消えていくぞ!
行政は何を考えているのだ!
何も動いてないのではないか!
学者も資源の飢渇をもっと強く訴えろ!
一部に頑張っている学者もいるが、現状を打破できてないのは事実。
その2へ続く

現在インドネシアのジャカルタでこのブログを書いている。数日前、市内を車で移動しているときに友人のJonがマナー最悪、大渋滞の道路を指して「インドネシア、ノーレギュレーション」と言った。
先週、中国の大連にいたときも運転マナーの悪さと大渋滞にあんぐりした。割り込み、譲らない、信号無視、突然の進路変更などなど、路上はまさに戦場である。クラクションはあちこちでけたたましく鳴り、バイクが右から左から次々と割り込んでくる。歩行者はどこからともなく次々と現れて強引に道路を渡って行く。運転は360度を常に神経を張らないといけないと思うのだが、ほとんどの人は前しか向いてないように見受けられる。
ほとんどの東南アジアはこんな状況である。経済成長により多くの国民が車を所有するようになったが、運転マナーに関しては野放し状態である。車が増えた分、道路を拡張、さらに新しく作らなければならないのだが、ほとんど昔のままなのがインドネシアである。渋滞がひどくなれば、さらに運転マナーは悪くなる。悪循環である。運転手に譲るなんて気持ちの余裕は微塵もない。
ようやく地下鉄建設の動きが見え始めたが、完成がいつになるかは政府関係者でもわからない。おそらく20年以上先のことだろう。
海に関して言えば日本でも同じような状況がずっと続いている。
魚を獲る技術は格段に進化した。イカ釣り漁船でいえば電球の明るさが数年で何倍にも明るくなった。明るい電球はすぐに漁獲に結びつく。みんなこぞって明るい電球を買い求めた。2年も経てば、時代遅れの電球になってしまうので、常に最新の電球を付けてないとイカは周囲の船に持っていかれてしまうのだ。
そしてイカは減少した。儲かったのは電球メーカーだったかも。さらに明るすぎる電球は生態系にも悪影響をもたらした。そりゃそうである。夜は暗いというのが地球上の決まりである。それが昼間のように明るくなったら異変が出てくるのは当然だ。地球が誕生して46億年。その間にゆっくりと進化してきた。急激な変化に自然界は付いていけないのでる。
海外の漁業にも大きな進化があった。巻き網は各国が次々と効率の良いものを開発。最近は巻き網の5倍以上の能力がある「虎網」が台湾で開発されて使われるようになった。これもイカと同じように開発競争である。挙句の果てに海の魚は激減した。そうなるとさらに効率の良い巻き網漁船を開発、製造、大型化するのである。ソナー、魚探、GPSなどの進化も凄い。資源の減少は当然さらに加速する。あと数年でマグロもサバもカツオもサンマもいなくなるかもしれない。マイワシなんて数年前まではうじゃうじゃいたが、今では漁師さんでさえ「幻の魚」と言っているのだ。
6月20日からブラジルのリオデジャネイロで「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)が開催されている。そこで中国の温家宝首相が「我が国は発展途上国」と演説した。「先進国は持続不可能な生産・消費モデルを放棄し、途上国の発展を助けるべきだ」と語って、地球環境問題では先進国が特別な責任を果たすべきだとの考えを改めて強調した。
リオデジャネイロで1992年に開かれた地球サミットでは、工業化を進めた先進国に地球環境劣化の責任があり、技術や資金で途上国を支援すべきだとの考え方が打ち出された。だが現在、二酸化炭素排出量では中国が世界一だ。先進国側では、途上国を含むすべての国が環境保全と経済成長を両立させる「グリーン経済」を目指すべきだとの主張が高まっているが、温首相は演説でこれに反対する立場を明確にした。(読売新聞より抜粋)
有人宇宙船を打ち上げ、GDP世界第2位の中国の首相の発言である。
このリオ+20では公海上の水産資源の持続的利用に関する交渉を開始するという案も出されたが、一部の先進国の強い反対にあい、先送りとなった。強い反対国は5か国で、日本も入っていた。海の面積の3分の2が公海である。これを今後も乱獲し続ければどうなるかは素人にも明白にわかると思うのだが。
「ノーレギュレーション」の国は魚が釣れない。釣れないからリリースをまずしない。そしてターゲットはさらに小型化していく。
「レギュレーション」のある国は魚がいっぱい釣れる。いっぱい釣れれば魚をリリースする余裕が出てくる。魚が増えれば釣れるサイズも大型化していく。
いま、世界が取り組まなければならないことは水産資源の世界規模のレギュレーションだと思うのだが。
PS.クロマグロに関して日本は国内が野放し状態である。日本が世界に規制を訴えてもどの国も動かないだろう。「何をバカなことを!」と一笑されて終わり。
世界のクロマグロの8割を買いあさる国がこんな状態なのである。
日本近海のクロマグロ漁業の現状 その3
http://katukawa.com/?p=3526
昔からの夢だった「マグロ漁師さんの船に乗る」ために博多港から壱岐に向かう。
壱岐のパンフレット

ここで高速船ジェットフォイルのチケットを購入

ジェットフォイルはほとんど揺れがなく、実に快適。そして速い!

船ではなくて新幹線に乗っているような感覚だった。
1時間10分で壱岐の郷ノ浦に到着。

レンタカーで勝本漁港へ。約30分。
壱岐の若手漁師「五郎丸」が出迎えに。

遠征が続いているので民宿で少し休んだ後に夕食を食べた。
夜8時にマグロの餌にするトビウオを掬いに出発

港の目の前で船長が次々とトビウオを掬った。

約1時間で50匹も!

船長45匹!俺5匹(-_-;)
朝が早いので10時には寝た。
3時起床、3時半出港。
七里に到着すると、すでにたくさんの漁船が。

この日、釣れている場所はピンポイントだった。ポイントの潮上に船を持って行く。漁船同士の間隔は0.25マイル開けなければならないので船が多いときは3マイルも離れたところに付けることになる。

この日は潮が遅く、風向きも良くないので流れてポイントに到着するまで2時間くらいかかった。
途中で潮が変わったり、風向きが変わったら、目標のところに船は流れない。
上手くポイントに近づけるかが勝負の分かれ道である。
ほとんどの漁船はルールを守って、順番に潮上から流すが、一部に途中から割り込んでくる船もいる。どの世界にもルールを守らない奴はいるもんだ。
五郎丸は誰もが認める優秀な若手漁師だ。1回目の流しでポイントに着くなり2バイト。でも残念なことにすっぽ抜け。
再び潮上に付けて流す。
ポイントの上には鳥が集まり、トビウオが逃げているのが見えた。
2時間後にポイントに着くと、すぐにミヨシ側の竿が曲がった。

数秒後にトモ(後部)のリールからラインが飛び出した。

ダブルヒットである。
俺がトモを担当することになった。ロッドポストにはめたままファイトするなんて初めてなので魚の大きさもわからない。
ミヨシの魚を先に取り込むので、トモのリールはドラグを締めないでファイトをした。巻いても巻いても出て行くドラグである。
先にミヨシのマグロが姿を見せたので、トモの魚はそのままにして、カメラを持ってミヨシに移動した。
落ち着いた取り込みでモリは一発で決まった。

そしてすぐにトモに戻ったが、ロッドがまっすぐになっていた。竿から離れた直後にばれてしまっていた。漁師の手伝いなんて言えたもんじゃない。これじゃ見習いである。
マグロを船上へ上げた。60キロ以上はありそうだ。

すぐに鰓と内臓を抜く。尻尾も落とした。

胃袋からはバライカ(スルメイカの子供)と骨だけになった魚が出てきた。

そして頭に穴を開けて神経締め。

勝本漁協に水揚げ。

内臓、鰓を抜いて58.1キロ。元は65キロ前後だろう。

箱詰めにされて築地へ送られた。

その日は町内の居酒屋でマグロ漁師さんと一緒に盛り上がった。
俺のパソコンを覗いてビックリする漁師さん。

昨年のカナダの動画を見せたのだ。300キロオーバーのマグロが次々と船べりに出てくるのである。七里でも昔はこれに近い光景を見たそうである。今では300キロのマグロなんて七里ではパッタリと見られなくなった。
その動画
そのあとは漁師さんたちのこと。七里に来る遊漁船のこと。マグロの昔と今と未来。いろんなことを話し合った。

勝本の一本釣りの漁師さんのおかげで我々遊漁はマグロを釣ることができる。それを2年前にある方に教えていただいた。
最近(7~8年前?)まで日本海では操業していなかったマグロの巻き網船団が数年前から次々と現れるようになった。昔は北海道東方沖が巻き網の主な漁場だったが、マグロがパッタリ獲れなくなり日本海へと漁場を変えたのだ。しかも産卵期に集まるマグロを狙ってである。一網打尽にする巻き網はマグロが集結しているときを狙うのが効率が良いのだ。
かつては宮城県の塩釜港がクロマグロの水揚げ日本一と言われたが、近年はほとんど水揚げされてない。塩釜港全体の水揚げは昭和57年がピークで約500億円。平成21年には83億円まで落ち込んだ。
代わりに伸びてきたのが境漁港である。毎年産卵期の6月から7月に卵を持ったマグロが大量に水揚げされる。
産卵期のマグロを獲り続ければマグロがいなくなるのは誰にもわかることである。それが原因でかつては一本釣りでマグロがたくさん取れた山口県萩沖の八里ヶ瀬はほとんどマグロが釣れなくなってしまった。
七里は勝本の漁師さんが農林水産省に出向いたり、七里を常に監視したりして、巻き網船が入ることを防いでいる。そのおかげで多くのルアー船、そして釣り人がマグロを狙うことができるのである。
ほとんどの遊漁の船長はよくわかっていて、七里のルールを守っているが、ときおりプレジャーが問題を起こす。
今年の1月にもプレジャーが漁師さんの仕掛けの上を横切って切るということがあった。七里で釣りを楽しみたかったら漁師さんとトラブルを起こすのは絶対にやってはならない。漁師さん同士でもルールを守っているのだ。
2年前に都内で開かれたマグロシンポジウムに五郎丸船長も出席してスピーチをやった。
マグロシンポジウム
http://itacim.blogspot.jp/2010/08/envngo2010.html
松尾五郎さん(長崎県勝本町漁協)「壱岐のマグロ一本釣りの現場から(1)」
高卒後、父のあとを継いでマグロ一本釣り漁業につき、14年め。同世代はほとんど親子乗り。8年目に父逝去、以来ひとりで一本釣りで格闘。32歳。
本当に魚が少なかったことを実感。マグロは数も少なくなったが、小さいマグロが本当に少なくなった。
産卵期に集まる習性を利用して巻き網で取り尽くしてしまうのだから、減るのは当然。
一本釣り、これからも続けたい。
漁協のマグロ研究会で築地を訪れたとき、「やけ」たマグロを初めて食べて、呑み込めなかった。(やけ:釣り上げるときマグロの体温が上昇するが、それが十分下がらず、血抜きなどの処理も不十分だと、酸味が入ってしまって味が落ちる。そうした状態を「やける」「やけた」と言う。)
大久保 晃さん(同じく勝本町漁協)「壱岐のマグロ一本釣りの現場から(2)」
漁師の父の背中をみて育った。中卒後、漁師に。40代。
昔は、多くのマグロがジャンプする様子を毎日見ていた。もう今は見られない。
勝本漁協では、漁場監視船をつくるなどして、資源管理型の漁業を試みている。しかし、次の世代に魚を残せるか心配。息子は「お父さんと一緒に海で漁をしたい」と言うが、それが実現できるか本当に心配。
これからの漁業がどうあるべきか、漁師で話し合い、試行錯誤している。現状のままでは、とても駄目。勝本の漁師だけでは勝本の海を守れなくなっている。
勝本の漁師さんと話をして、考えていることはほとんど同じなんだなと思った。
このままでは近い将来、マグロは姿を消してしまうだろう。
一本釣りの漁師さんに頼らないで、我々釣り人も遊漁船も団結して動く時である。
打倒巻き網!
巻き網に規制をかけなければ多くの魚が消えていくぞ!
行政は何を考えているのだ!
何も動いてないのではないか!
学者も資源の飢渇をもっと強く訴えろ!
一部に頑張っている学者もいるが、現状を打破できてないのは事実。
その2へ続く