カナダの巨大マグロに挑む・こんなリールで上がるわけがない!
到着の翌日、芝生でファイトの練習をやったときにすべてのリールのドラグをチェックした。そしてストライクポジション、ファイティングポジション、そして時間の経過とともにドラグを上げていくなどの指導をした。最後の船べり攻防のときが一番大切。船下に入られたらドラグを緩めて交わさないといけない。ラインが船に触れないように。そしてロッドを折らないように。そして再び船下から出てきたらドラグを締めなければいけない。せっかく寄せたマグロをなるべく離さないように。そのときはスプールを指で押さえる、ラインを掴むなどして限界までプレッシャーをかける。
ケンマツはファイト中にドラグMAXを上げることができる。この機能を備えているのはケンマツだけである。これが大きな武器となる。タリカやマカイラは熱で低下したドラグMAXを上げることができない。3年前ノーマルのケンマツはカナダのマグロが横方向へ猛スピードで走るのに耐えられなかったが、2年かけて改良したカナダ用スペシャルドラグシステムは完璧だった。スムーズであり、なんのトラブルも起きない。
スピニングはレバードラグではないし、ラチェットがないので、ドラグ操作が難しい。どこまで締めれば何キロなのかもわからない。ヒットまではゆるゆるにしておかなければならない。ヒットしたらロッドを持って一気に7~10キロくらいまで締めてフッキングする。そのあとは13キロ以上に上げる。いったん止まったらさらに15キロ以上に上げる。しばらくは15~20キロの範囲でファイトをする。30分を過ぎたらMAXまで上げてさらにスプールを押さえてプレッシャーをかける。船べりでの攻防はナイロンラインまで巻かれているから、さらにプレッシャーをかけて距離を詰めていく。ドラグは熱に弱いからファイト中に他の者がペットボトルの水をスプールにかける。船下に入られたらロッドベルトからロッドを抜いて船にラインが触れないように交わす。
13ステラ30000は公表ドラグMAXは20キロだった。これに関しては発表されたときにガッカリした。なんで18000や14000が25キロなのに30000が20キロなのか。30000を出した意味がないと思った。
08ステラ20000は公表25キロでも実際に締めると29キロ以上になった。だから今回の13ステラ30000の公表20キロでも23キロくらいにはなるだろうと思っていた。23キロなら勝負になるだろう。
ところが芝生でドラグをチェックしたらMAX16キロしか出ないのだ。どんなに締めこんでも3台とも16キロ未満なのだ。
MAX16キロでは「無理だな」と思った。
まして制限時間60分なんて・・・
すぐに(現地時間3日)シマノにクレームの連絡を入れた。
返事は7日に交換品を送ると言うことだった。
ここに到着するのは12日以降だろう。ボンガキの挑戦には間に合わない。
そういえば7月中旬に13ステラ14000を使って種子島で48キロのGTを釣った時も異変に気づいていた。あまりにGTが走るのである。ドラグをどんどん締めても止まらなかった。いつもなら4分くらいでキャッチするが、このときは6分くらいかかった。キャッチ後にドラグを計測したら13キロしかなかった。そのときは「締めが甘かったかな」と思った。ところがそうではなかったのだ。
そのときに30000もチェックしておけば・・・
今頃後悔しても遅い(-_-;)
この写真はカナダから戻って、店のリールをチェックしているところ。

リールはお客さんの購入した9台である。ドラグに問題があるので発送を待たせておいてチェックした。お客さんには断りの電話を入れた。いかがわしいものは売りたくないからである。
30000が3台、14000が2台、10000が4台である。
チェックに使ったのはシマノのドラグチェック用バネバカリ2個。

この秤はマグロの時はいつも持参している。そしてファイト前とファイト終了後に必ず計っている。
結果は9台とも公表の80パーセント以下だった。中には50パーセントしか出ないのもあった。
車でいえば150馬力のエンジンを公表250馬力と言って売っているようなもんである。
ドラグ以外は世界最強のスピニングリールには違いないだけに、このドラグは残念だった。
※この件に関しては、現在は解決済み。うちの店にあるリールも8月下旬以降に納品されたリールは問題ない。そして問題のあるリールはメーカーにクレームで送れば無料で調整してくれる。
若いボンガキに完璧な状態で挑んでもらいたかった。
昨年の暮れ「来年ステラから30000が出るから挑めよ」と言って連れてきた。
ボンガキは本体を2台、替えスプールを2個購入した。
7年前にニュージーランドでスピニングで挑んだときは17歳だった。そのときは船のアクシデントでキャッチできなかった。
今回はドラグに問題が起きた。
ドラグ力の不足をどうやって補うか、ボンガキの経験に任せるしかなかった。

そして
ファイトが始まった。

教えられたとおり、前半はスタミナを温存した。

始めのうちは数回ランを繰り返すが、適度のプレッシャーをかけて走らせる。

水分補給は必ずやる。

リールにも水をまんべんなく。
30分後、ナイロンラインがスプールに入り、ここまでマグロは近付いた。

ラインはPE10号を300メートル、リーダーはナイロン(ジンカイ)40号を50メートル、先端はフロロ100号を約4メートル、ロッドはカーペンターのKLL50である。
そこからは勝負に出た。マグロが走るときはスプールを押さえてドラグ力を補った。

マグロとの距離は約20メートル

そのあとまた走られる。
また寄せる。
また浮いた。

また走られる。
また浮いた。

腰を落として全体重で耐える。

マグロとの距離は10メートル未満。

また走られる。
再び10メートル未満に浮いた。

また走られる。
また10メートル以内に寄った。

ハリスがグレンの手前2メートルくらいまで近付いた。

また走られる。
ドラグ力がないので、どうにもならない。
そのたびにスプールを押さえるのだが・・・
頑張れ!あと一歩だ!

また走られる。
ボンガキ「あと何回寄せればいいんですか?」
俺「わからん」
アドバイスになってない(-_-;)
運も味方しなかった。
どんどん深い方へ走った。水深は38メートル(128フィート)。

そしてまた浮いた。

また走られる。
ボンガキからは大量の汗が。スタミナもどんどん消耗している。

制限時間を超えたのでグレンがハリス以外のリーダーを掴んだ。

グレンは掴んだだけでドラグ力がわかる。
グレンは「ドラグが弱すぎる」と言った。
でもすでにMAXまで締めている。
リーダーを掴んであげるしかなかった。
時間が過ぎているのでグレンが強引に回収に入った。
「バチーン」
リーダーブレイクで終了。40号のジンカイが切れてしまった。
すぐにドラグを計ると13キロしかなかった。

補強用に巻いたテープはボロボロになっていた。

ボンガキが小学校3年生のときから見ているけど、立派に成長したなと思った1日だった。
敗者は語らず・・・
最後は「皆さん長い時間をかけてしまってすいませんでした」の一言だった。
でも
俺はシマノを許せない。
カタログ通りのMAX20キロのドラグだったら絶対にキャッチできた。
何度も10メートル以内に寄った。でもトニー船のハリスは5メートル未満(だいたい4~5メートル)が鉄則。そこまで近づかないとラインを掴んでくれない。
何度も寄せたけど、その度に走られた。そんなことが数えきれないくらい繰り返した。ドラグが20キロ以上ならほとんど走られなかっただろう。
ドラグが弱いので、そのたびにスプールを押さえて必死に止めようとした。
ドラグノブは3回締めなおした。力いっぱい締めても数十分後には緩くなっていた。
最後はリーダーブレイク・・・
トニー船長「ロッドとアングラーは問題ない。リールのドラグが弱すぎる」
ハーネスは最後まで使わなかった。
そしてボンガキの夢への挑戦は終わった。

俺はボンガキにどうしても釣らせたかった。
だから悔しいのである。
問題の交換品は13日に届いた。

しかし、俺が使う気になれなかったのは事実である。
これで釣ってもボンガキに申し訳ない。
俺は2009年にスピニングで世界で初めて250キロオーバーを釣った。
そのときもリールに問題は起きていた。
ドラグを上げるとスプールが回転枠に接触するのだ。

ラインが出れば出るほどドラグは上がる。ドラグはスプールに巻かれたラインを含んだ直径に反比例して強くなっていく。スプールが回転枠に接触するころは35キロくらいになっている。
またラインローラーから出るラインの角度はこんな危険な状態になる。

このときも最後までハーネスは使わなかった。

この問題点は13ステラでは解消されている。
9月4日、カナダから凄いニュースが届いた。
俺の海外遠征ツアーに7年前から毎年2回くらい参加しているヤガラが386キロのクロマグロをスピニングでキャッチしたのだ。世界初のスピニングによる300キロオーバーである。

ヤガラは2009年に俺がスピニングで250キロを釣ったときも同行している。
素晴らしい快挙には違いないが・・・
その1か月後に俺はヤガラとコスタリカで合流した。
そして言った。
俺「購入した客にインチキなリールを売っておいて、お前がプロトのリールで釣っても素直に誉められないんだよ」
ヤガラは真摯に聞いていた。目には涙までにじんでいた。
ヤガラのリールはドラグMAX25キロのプロトタイプだった。ファイト終了時は22キロだった。
これをボンガキが使っていたら1時間以内でキャッチしていただろう。
次は再び問題爺登場です。なんと日本人最高記録も飛び出します。恐るべし問題爺です。
ケンマツはファイト中にドラグMAXを上げることができる。この機能を備えているのはケンマツだけである。これが大きな武器となる。タリカやマカイラは熱で低下したドラグMAXを上げることができない。3年前ノーマルのケンマツはカナダのマグロが横方向へ猛スピードで走るのに耐えられなかったが、2年かけて改良したカナダ用スペシャルドラグシステムは完璧だった。スムーズであり、なんのトラブルも起きない。
スピニングはレバードラグではないし、ラチェットがないので、ドラグ操作が難しい。どこまで締めれば何キロなのかもわからない。ヒットまではゆるゆるにしておかなければならない。ヒットしたらロッドを持って一気に7~10キロくらいまで締めてフッキングする。そのあとは13キロ以上に上げる。いったん止まったらさらに15キロ以上に上げる。しばらくは15~20キロの範囲でファイトをする。30分を過ぎたらMAXまで上げてさらにスプールを押さえてプレッシャーをかける。船べりでの攻防はナイロンラインまで巻かれているから、さらにプレッシャーをかけて距離を詰めていく。ドラグは熱に弱いからファイト中に他の者がペットボトルの水をスプールにかける。船下に入られたらロッドベルトからロッドを抜いて船にラインが触れないように交わす。
13ステラ30000は公表ドラグMAXは20キロだった。これに関しては発表されたときにガッカリした。なんで18000や14000が25キロなのに30000が20キロなのか。30000を出した意味がないと思った。
08ステラ20000は公表25キロでも実際に締めると29キロ以上になった。だから今回の13ステラ30000の公表20キロでも23キロくらいにはなるだろうと思っていた。23キロなら勝負になるだろう。
ところが芝生でドラグをチェックしたらMAX16キロしか出ないのだ。どんなに締めこんでも3台とも16キロ未満なのだ。
MAX16キロでは「無理だな」と思った。
まして制限時間60分なんて・・・
すぐに(現地時間3日)シマノにクレームの連絡を入れた。
返事は7日に交換品を送ると言うことだった。
ここに到着するのは12日以降だろう。ボンガキの挑戦には間に合わない。
そういえば7月中旬に13ステラ14000を使って種子島で48キロのGTを釣った時も異変に気づいていた。あまりにGTが走るのである。ドラグをどんどん締めても止まらなかった。いつもなら4分くらいでキャッチするが、このときは6分くらいかかった。キャッチ後にドラグを計測したら13キロしかなかった。そのときは「締めが甘かったかな」と思った。ところがそうではなかったのだ。
そのときに30000もチェックしておけば・・・
今頃後悔しても遅い(-_-;)
この写真はカナダから戻って、店のリールをチェックしているところ。

リールはお客さんの購入した9台である。ドラグに問題があるので発送を待たせておいてチェックした。お客さんには断りの電話を入れた。いかがわしいものは売りたくないからである。
30000が3台、14000が2台、10000が4台である。
チェックに使ったのはシマノのドラグチェック用バネバカリ2個。

この秤はマグロの時はいつも持参している。そしてファイト前とファイト終了後に必ず計っている。
結果は9台とも公表の80パーセント以下だった。中には50パーセントしか出ないのもあった。
車でいえば150馬力のエンジンを公表250馬力と言って売っているようなもんである。
ドラグ以外は世界最強のスピニングリールには違いないだけに、このドラグは残念だった。
※この件に関しては、現在は解決済み。うちの店にあるリールも8月下旬以降に納品されたリールは問題ない。そして問題のあるリールはメーカーにクレームで送れば無料で調整してくれる。
若いボンガキに完璧な状態で挑んでもらいたかった。
昨年の暮れ「来年ステラから30000が出るから挑めよ」と言って連れてきた。
ボンガキは本体を2台、替えスプールを2個購入した。
7年前にニュージーランドでスピニングで挑んだときは17歳だった。そのときは船のアクシデントでキャッチできなかった。
今回はドラグに問題が起きた。
ドラグ力の不足をどうやって補うか、ボンガキの経験に任せるしかなかった。

そして
ファイトが始まった。

教えられたとおり、前半はスタミナを温存した。

始めのうちは数回ランを繰り返すが、適度のプレッシャーをかけて走らせる。

水分補給は必ずやる。

リールにも水をまんべんなく。
30分後、ナイロンラインがスプールに入り、ここまでマグロは近付いた。

ラインはPE10号を300メートル、リーダーはナイロン(ジンカイ)40号を50メートル、先端はフロロ100号を約4メートル、ロッドはカーペンターのKLL50である。
そこからは勝負に出た。マグロが走るときはスプールを押さえてドラグ力を補った。

マグロとの距離は約20メートル

そのあとまた走られる。
また寄せる。
また浮いた。

また走られる。
また浮いた。

腰を落として全体重で耐える。

マグロとの距離は10メートル未満。

また走られる。
再び10メートル未満に浮いた。

また走られる。
また10メートル以内に寄った。

ハリスがグレンの手前2メートルくらいまで近付いた。

また走られる。
ドラグ力がないので、どうにもならない。
そのたびにスプールを押さえるのだが・・・
頑張れ!あと一歩だ!

また走られる。
ボンガキ「あと何回寄せればいいんですか?」
俺「わからん」
アドバイスになってない(-_-;)
運も味方しなかった。
どんどん深い方へ走った。水深は38メートル(128フィート)。

そしてまた浮いた。

また走られる。
ボンガキからは大量の汗が。スタミナもどんどん消耗している。

制限時間を超えたのでグレンがハリス以外のリーダーを掴んだ。

グレンは掴んだだけでドラグ力がわかる。
グレンは「ドラグが弱すぎる」と言った。
でもすでにMAXまで締めている。
リーダーを掴んであげるしかなかった。
時間が過ぎているのでグレンが強引に回収に入った。
「バチーン」
リーダーブレイクで終了。40号のジンカイが切れてしまった。
すぐにドラグを計ると13キロしかなかった。

補強用に巻いたテープはボロボロになっていた。

ボンガキが小学校3年生のときから見ているけど、立派に成長したなと思った1日だった。
敗者は語らず・・・
最後は「皆さん長い時間をかけてしまってすいませんでした」の一言だった。
でも
俺はシマノを許せない。
カタログ通りのMAX20キロのドラグだったら絶対にキャッチできた。
何度も10メートル以内に寄った。でもトニー船のハリスは5メートル未満(だいたい4~5メートル)が鉄則。そこまで近づかないとラインを掴んでくれない。
何度も寄せたけど、その度に走られた。そんなことが数えきれないくらい繰り返した。ドラグが20キロ以上ならほとんど走られなかっただろう。
ドラグが弱いので、そのたびにスプールを押さえて必死に止めようとした。
ドラグノブは3回締めなおした。力いっぱい締めても数十分後には緩くなっていた。
最後はリーダーブレイク・・・
トニー船長「ロッドとアングラーは問題ない。リールのドラグが弱すぎる」
ハーネスは最後まで使わなかった。
そしてボンガキの夢への挑戦は終わった。

俺はボンガキにどうしても釣らせたかった。
だから悔しいのである。
問題の交換品は13日に届いた。

しかし、俺が使う気になれなかったのは事実である。
これで釣ってもボンガキに申し訳ない。
俺は2009年にスピニングで世界で初めて250キロオーバーを釣った。
そのときもリールに問題は起きていた。
ドラグを上げるとスプールが回転枠に接触するのだ。

ラインが出れば出るほどドラグは上がる。ドラグはスプールに巻かれたラインを含んだ直径に反比例して強くなっていく。スプールが回転枠に接触するころは35キロくらいになっている。
またラインローラーから出るラインの角度はこんな危険な状態になる。

このときも最後までハーネスは使わなかった。

この問題点は13ステラでは解消されている。
9月4日、カナダから凄いニュースが届いた。
俺の海外遠征ツアーに7年前から毎年2回くらい参加しているヤガラが386キロのクロマグロをスピニングでキャッチしたのだ。世界初のスピニングによる300キロオーバーである。

ヤガラは2009年に俺がスピニングで250キロを釣ったときも同行している。
素晴らしい快挙には違いないが・・・
その1か月後に俺はヤガラとコスタリカで合流した。
そして言った。
俺「購入した客にインチキなリールを売っておいて、お前がプロトのリールで釣っても素直に誉められないんだよ」
ヤガラは真摯に聞いていた。目には涙までにじんでいた。
ヤガラのリールはドラグMAX25キロのプロトタイプだった。ファイト終了時は22キロだった。
これをボンガキが使っていたら1時間以内でキャッチしていただろう。
次は再び問題爺登場です。なんと日本人最高記録も飛び出します。恐るべし問題爺です。