クロマグロ遊漁の規制について
多くのアングラーに夢を与えてきた津軽海峡。ここでは数えきれないほどの釣り人とクロマグロの格闘が行われてきた。

こんなニュースが流れてきた。
河北新報<マグロ資源管理>青森全域漁抑制を要請
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201510/20151001_23042.html
そしてわかっていたかのようにタイミングよく俺のところにこんなポスターが送られてきた。

クロマグロを対象とする遊漁者・遊漁船業者の皆様へ
http://www.jfa.maff.go.jp/j/yugyo/y_kuromaguro/kyouryokuirai.html
ポスターの右下の情報はここで発信されてます。
太平洋クロマグロに係る遊漁者・遊漁船業者に対する協力要請の状況について
http://www.jfa.maff.go.jp/j/yugyo/y_kuromaguro/pdf/270929kuromaguro_kiseizyoukyou.pdf

現段階は青森のみで自粛レベルはBです。青森県以外は自粛の要請はありません。
B:遊漁者は30キロ以上のクロマグロを対象とした遊漁は可能ですが、30キロ未満がかかった場合はリリースしてください。
ちなみにAが発信されると大小を問わずクロマグロは自粛です。
水産庁に問い合わせたところ、要請であって強制ではないそうです。
でも、自粛が望ましいと俺は思います。資源保護をみんなで考える時代です。釣り人が強く願う「産卵期のまき網漁の禁止」を実現させるためにも30キロ未満のクロマグロは狙わない。そして釣れたらリリースに心がけるべきと考えます。
小さいマグロを根こそぎキープしていたら行政やまき網に強いことが言えなくなります。
水産庁「メジは幼魚ですよ。幼魚を根こそぎキープして、まき網に獲るなとは矛盾してますよ!」と言われてしまいます。
青森だけでなく、本州も九州も沖縄も小さいマグロは狙わない、釣れたらリリースをするように心がけましょう。
未来のために、次世代のために、今は我慢する時だと思います。クロマグロの成長は早いです。4歳で60キロ以上になります。大西洋クロマグロを例に取れば、資源管理をしっかりやれば5年で資源は大幅に回復します。
そのためにも釣り人は団結して行政に訴えて行くべきです。
エリアはここで確認できます。
クロマグロの部屋
http://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/bluefinkanri.html
青森県の自粛のニュースは7月10日、11日に地元の新聞に載ってました。6月末の時点で漁獲量が181トンに達し、来年3月までの漁獲の上限216.5トンの8割を超えてました。ここで問題なのは定置網が与えられた101.1トンの枠をこの時点で180.8トンも獲ってしまったことです。あおりを食らったのは延縄と一本釣りです。漁期に入る前に警報発令となってしまったのです。

はえ縄と一本釣りの漁師が怒るのは当然です。

この東奥日報の新聞を見ると定置はすでに枠を大幅に超えているのに、県が「網に入って死んでるマグロは水揚げするように」と指導していることです。これでは何の規制にもならない。混獲を避ける対策を早急に打つ。そして今後定置で水揚げしたマグロは売買禁止にする。そのくらい厳しくやらないと規制とは言えない。それができないのなら、太平洋クロマグロは確実に絶滅への道を歩むことになる。
そして不満は遊漁にも向けられ、一部漁業者から「遊漁も規制すべき」の声が出た。

ただし、遊漁のクロマグロ漁獲はたったの15.6トン。まき網は5098トンである。

現時点では水産庁は遊漁に強い規制をする考えはないようです。でもいつ変わるかわかりません。
青森県・小泊港。たくさんの遊漁船とプレジャーが停泊している。クロマグロ釣りが大人気となり数年で釣り船は10倍以上に増えた。

3年前から小さいマグロをリリースする釣り人がポツポツと増えてきた。しかしまだ9割以上はキープしていると思われます。

赤ペンの中が最近のまき網の漁獲です。今年の枠は大型魚(30キロ以上の成魚)3098トン、未成魚2000トン、合計5098トンですが、成魚は2006年以降達したことがありません。これでは規制とは言わず、獲り放題となります。

どうせ獲れないのなら20トンくらい遊漁に分けていただきたい。いたって簡単なことだと思います。
我が国の資源管理がいかに遅れているか(やる気がない)、大西洋クロマグロとミナミマグロの資源管理と比べれば一目瞭然です。
まず西大西洋側のクロマグロです。日本の遠洋マグロ船の乱獲で一気に資源が減少しました。

1982年から漁獲量が一気に減るのは産卵場であるメキシコ湾を禁漁にしたからです(現在も継続中)。
日本が獲り始めた1970年以降、一気に資源が減少します。

2010年ころからようやく資源が回復していきます。現在はかなりのスピードで増えているそうです。
東大西洋側のクロマグロです。かつては6万トン以上獲っていたのを12900トンまで漁獲枠量を減らしました。その結果、急激に資源が回復しています。

資源が増えたおかげで日本の漁獲枠(TAC)も増え続けています。
大西洋クロマグロはICCAT(大西洋マグロ類国際保存委員会)が管理しています。管理の中心はヨーロッパと北米です。
次にミナミマグロです。1950年代から日本の漁獲が一気に増えます。

資源は急激に減少して、1994年にはついに絶滅危惧種となります。
その後、1994年にCCSBT(みなみまぐろ保存委員会)を設立。オーストラリアが中心になって資源管理を進めます。ピーク時には8万トンも獲っていた日本ですが、どんどん枠を減らされて2007年には2700トンとなります。この間には日本でのミナミマグロ不正事件も発生しました。CCSBTに報告されている量よりも、日本で流通している量が大幅に多かったことがわかったのです。調べたのはオーストラリアでした。そして日本は不正があったことを認めています。その後、日本も管理を厳しくしました。その結果、2012年頃から資源は年々回復しています。
上が加入量(その年に生まれたマグロ)、下が親魚資源量です。これからかなり期待できそうです。

資源が回復したことで、日本に割り当てられる漁獲枠も増えています。

我慢すれば、資源は回復するのです。
ちなみに太平洋クロマグロは資源がいまだに減り続けています。管理は日本が中心のWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)がやってます。そして昨年11月についに絶滅危惧種となった。
前回のブログでアメリカのレギュレーションを紹介したけど、そのアメリカで太平洋クロマグロを取り上げた釣り団体の勉強会がありました。
以下、アメリカの友人からの報告です。
現在ロサンゼルス周辺には4つの釣り団体が存在します。先月太平洋クロマグロの資源保護について、合同の勉強会を開催いたしました。
昨年10月のメキシコ太平洋岸でのクロマグロの全面禁漁を追いかけるように、本年7月30日よりアメリカ領海での遊漁の規制も始まりました。今までは対岸のことと切迫した意識がなかった我々ですが、直接的な規制とその規制の理由を調べる中でようやく重い腰をあげることができました。
勉強会最後の討論では、「絶滅危惧種に指定された太平洋クロマグロの問題を、様々な人および関係団体に訴求すること」「自分たちでできることを考え、早期に団体行動に移す」「この勉強会を継続し、多くに参加者に呼びかける」等の意見が出、実際行動に移そうということになりました。
下記は新レギュレーションです。
https://www.federalregister.gov/articles/2015/07/08/2015-16720/international-fisheries-pacific-tuna-fisheries-2015-and-2016-commercial-fishing-restrictions-for
下記、7月30日のCA-DFGからのニュースレターです。
https://cdfwmarine.wordpress.com/2015/05/29/bluefin-tuna-update/
このレターにクロマグロのバッグリミットが10匹から2匹に変更になったと明記されてます。
下記はCalifornia DFGのレギュレーションです。(州ごとに違います)
https://nrm.dfg.ca.gov/FileHandler.ashx?DocumentID=93478&inline=true
日本は行政の動きも遅いけど、釣りメーカーも釣り団体も釣りメディアも動く気配はありません。未来のことを真剣に考えているのかおおいに疑問です。
俺は日本もレギュレーションを取り入れるべきだと考えてます。そして国はあらかじめ遊漁にも漁獲枠を設けるべきです。今の管理方法では漁師が獲りすぎたら遊漁に自粛要請が来ると言うことになります。直前に言われても困ります。ほとんどの釣り人が1匹も釣ってないうちに自粛と言われても困ります。遊漁船、宿の予約もしてあります。そして飛行機で行く釣り人もいます。アメリカのように1日1匹とか、年に何トンとか遊漁枠を決めるべきだと思います。多くのアングラーが1年くらい前から予定を立てているのです。
もちろんレギュレーションはクロマグロだけでなく、釣りの対象となる魚すべてです。すべての対象魚にサイズリミット、バッグリミットを決めます。
今のままでは、漁業者が漁獲する魚は小型化して、資源は年々減少していきます。釣り人の釣る魚も小型化、そして年々少なくなってます。漁業者人口はピーク時100万人だったのが17万人まで激減。釣り人口もピーク時2020万人が810万人まで減少しました。この人口減少には水産資源の減少が大きく関わっていると思います。それは離島や地方の経済を破綻させる大きな要因にもなっていると思います。

こんなニュースが流れてきた。
河北新報<マグロ資源管理>青森全域漁抑制を要請
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201510/20151001_23042.html
そしてわかっていたかのようにタイミングよく俺のところにこんなポスターが送られてきた。

クロマグロを対象とする遊漁者・遊漁船業者の皆様へ
http://www.jfa.maff.go.jp/j/yugyo/y_kuromaguro/kyouryokuirai.html
ポスターの右下の情報はここで発信されてます。
太平洋クロマグロに係る遊漁者・遊漁船業者に対する協力要請の状況について
http://www.jfa.maff.go.jp/j/yugyo/y_kuromaguro/pdf/270929kuromaguro_kiseizyoukyou.pdf

現段階は青森のみで自粛レベルはBです。青森県以外は自粛の要請はありません。
B:遊漁者は30キロ以上のクロマグロを対象とした遊漁は可能ですが、30キロ未満がかかった場合はリリースしてください。
ちなみにAが発信されると大小を問わずクロマグロは自粛です。
水産庁に問い合わせたところ、要請であって強制ではないそうです。
でも、自粛が望ましいと俺は思います。資源保護をみんなで考える時代です。釣り人が強く願う「産卵期のまき網漁の禁止」を実現させるためにも30キロ未満のクロマグロは狙わない。そして釣れたらリリースに心がけるべきと考えます。
小さいマグロを根こそぎキープしていたら行政やまき網に強いことが言えなくなります。
水産庁「メジは幼魚ですよ。幼魚を根こそぎキープして、まき網に獲るなとは矛盾してますよ!」と言われてしまいます。
青森だけでなく、本州も九州も沖縄も小さいマグロは狙わない、釣れたらリリースをするように心がけましょう。
未来のために、次世代のために、今は我慢する時だと思います。クロマグロの成長は早いです。4歳で60キロ以上になります。大西洋クロマグロを例に取れば、資源管理をしっかりやれば5年で資源は大幅に回復します。
そのためにも釣り人は団結して行政に訴えて行くべきです。
エリアはここで確認できます。
クロマグロの部屋
http://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/bluefinkanri.html
青森県の自粛のニュースは7月10日、11日に地元の新聞に載ってました。6月末の時点で漁獲量が181トンに達し、来年3月までの漁獲の上限216.5トンの8割を超えてました。ここで問題なのは定置網が与えられた101.1トンの枠をこの時点で180.8トンも獲ってしまったことです。あおりを食らったのは延縄と一本釣りです。漁期に入る前に警報発令となってしまったのです。

はえ縄と一本釣りの漁師が怒るのは当然です。

この東奥日報の新聞を見ると定置はすでに枠を大幅に超えているのに、県が「網に入って死んでるマグロは水揚げするように」と指導していることです。これでは何の規制にもならない。混獲を避ける対策を早急に打つ。そして今後定置で水揚げしたマグロは売買禁止にする。そのくらい厳しくやらないと規制とは言えない。それができないのなら、太平洋クロマグロは確実に絶滅への道を歩むことになる。
そして不満は遊漁にも向けられ、一部漁業者から「遊漁も規制すべき」の声が出た。

ただし、遊漁のクロマグロ漁獲はたったの15.6トン。まき網は5098トンである。

現時点では水産庁は遊漁に強い規制をする考えはないようです。でもいつ変わるかわかりません。
青森県・小泊港。たくさんの遊漁船とプレジャーが停泊している。クロマグロ釣りが大人気となり数年で釣り船は10倍以上に増えた。

3年前から小さいマグロをリリースする釣り人がポツポツと増えてきた。しかしまだ9割以上はキープしていると思われます。

赤ペンの中が最近のまき網の漁獲です。今年の枠は大型魚(30キロ以上の成魚)3098トン、未成魚2000トン、合計5098トンですが、成魚は2006年以降達したことがありません。これでは規制とは言わず、獲り放題となります。

どうせ獲れないのなら20トンくらい遊漁に分けていただきたい。いたって簡単なことだと思います。
我が国の資源管理がいかに遅れているか(やる気がない)、大西洋クロマグロとミナミマグロの資源管理と比べれば一目瞭然です。
まず西大西洋側のクロマグロです。日本の遠洋マグロ船の乱獲で一気に資源が減少しました。

1982年から漁獲量が一気に減るのは産卵場であるメキシコ湾を禁漁にしたからです(現在も継続中)。
日本が獲り始めた1970年以降、一気に資源が減少します。

2010年ころからようやく資源が回復していきます。現在はかなりのスピードで増えているそうです。
東大西洋側のクロマグロです。かつては6万トン以上獲っていたのを12900トンまで漁獲枠量を減らしました。その結果、急激に資源が回復しています。

資源が増えたおかげで日本の漁獲枠(TAC)も増え続けています。
大西洋クロマグロはICCAT(大西洋マグロ類国際保存委員会)が管理しています。管理の中心はヨーロッパと北米です。
次にミナミマグロです。1950年代から日本の漁獲が一気に増えます。

資源は急激に減少して、1994年にはついに絶滅危惧種となります。
その後、1994年にCCSBT(みなみまぐろ保存委員会)を設立。オーストラリアが中心になって資源管理を進めます。ピーク時には8万トンも獲っていた日本ですが、どんどん枠を減らされて2007年には2700トンとなります。この間には日本でのミナミマグロ不正事件も発生しました。CCSBTに報告されている量よりも、日本で流通している量が大幅に多かったことがわかったのです。調べたのはオーストラリアでした。そして日本は不正があったことを認めています。その後、日本も管理を厳しくしました。その結果、2012年頃から資源は年々回復しています。
上が加入量(その年に生まれたマグロ)、下が親魚資源量です。これからかなり期待できそうです。

資源が回復したことで、日本に割り当てられる漁獲枠も増えています。

我慢すれば、資源は回復するのです。
ちなみに太平洋クロマグロは資源がいまだに減り続けています。管理は日本が中心のWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)がやってます。そして昨年11月についに絶滅危惧種となった。
前回のブログでアメリカのレギュレーションを紹介したけど、そのアメリカで太平洋クロマグロを取り上げた釣り団体の勉強会がありました。
以下、アメリカの友人からの報告です。
現在ロサンゼルス周辺には4つの釣り団体が存在します。先月太平洋クロマグロの資源保護について、合同の勉強会を開催いたしました。
昨年10月のメキシコ太平洋岸でのクロマグロの全面禁漁を追いかけるように、本年7月30日よりアメリカ領海での遊漁の規制も始まりました。今までは対岸のことと切迫した意識がなかった我々ですが、直接的な規制とその規制の理由を調べる中でようやく重い腰をあげることができました。
勉強会最後の討論では、「絶滅危惧種に指定された太平洋クロマグロの問題を、様々な人および関係団体に訴求すること」「自分たちでできることを考え、早期に団体行動に移す」「この勉強会を継続し、多くに参加者に呼びかける」等の意見が出、実際行動に移そうということになりました。
下記は新レギュレーションです。
https://www.federalregister.gov/articles/2015/07/08/2015-16720/international-fisheries-pacific-tuna-fisheries-2015-and-2016-commercial-fishing-restrictions-for
下記、7月30日のCA-DFGからのニュースレターです。
https://cdfwmarine.wordpress.com/2015/05/29/bluefin-tuna-update/
このレターにクロマグロのバッグリミットが10匹から2匹に変更になったと明記されてます。
下記はCalifornia DFGのレギュレーションです。(州ごとに違います)
https://nrm.dfg.ca.gov/FileHandler.ashx?DocumentID=93478&inline=true
日本は行政の動きも遅いけど、釣りメーカーも釣り団体も釣りメディアも動く気配はありません。未来のことを真剣に考えているのかおおいに疑問です。
俺は日本もレギュレーションを取り入れるべきだと考えてます。そして国はあらかじめ遊漁にも漁獲枠を設けるべきです。今の管理方法では漁師が獲りすぎたら遊漁に自粛要請が来ると言うことになります。直前に言われても困ります。ほとんどの釣り人が1匹も釣ってないうちに自粛と言われても困ります。遊漁船、宿の予約もしてあります。そして飛行機で行く釣り人もいます。アメリカのように1日1匹とか、年に何トンとか遊漁枠を決めるべきだと思います。多くのアングラーが1年くらい前から予定を立てているのです。
もちろんレギュレーションはクロマグロだけでなく、釣りの対象となる魚すべてです。すべての対象魚にサイズリミット、バッグリミットを決めます。
今のままでは、漁業者が漁獲する魚は小型化して、資源は年々減少していきます。釣り人の釣る魚も小型化、そして年々少なくなってます。漁業者人口はピーク時100万人だったのが17万人まで激減。釣り人口もピーク時2020万人が810万人まで減少しました。この人口減少には水産資源の減少が大きく関わっていると思います。それは離島や地方の経済を破綻させる大きな要因にもなっていると思います。
コメント
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2015-10-05 19:11 編集
Re: Re: 茂木さん頑張って
> > 行政は、釣り人なら規制を受け入れてくれると思って、今回の「セレモニー」を行ったのです。
> > 巻き網を始め漁業者側に規制を要請しても、反発を食らって恥をかきます。(人事評価に悪影響)
> > しかし、行政として資源保護に取り組んでますよというアピールをして、釣り人の協力だけでも得られれば、それだけでも評価に加点されるのです。
> > 水産庁に行政としての充分な能力はありません。
> > 政治的な調整がまったくできないのです。
> > ですので、このような所でポイント稼ぎをしただけですね。
2015-10-07 00:12 茂木陽一 URL 編集