2017/04/29

豊かな海へ!(腐敗と戦う)

太平洋クロマグロは2014年に絶滅危惧種に指定された。

2014年の親魚資源量は推定17000トン。初期資源量(漁業が無かった場合の資源量)の2.6パーセントまで激減している。


会場は麻布十番駅近くの三田共用会議所
1_20170429063857540.jpg



ISC太平洋クロマグロステークホルダー会合に参加した。
参加にあたってはJGFAの若林事務局長から連絡を受け、参加を勧められて了承した。

ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)
http://isc.fra.go.jp/


会合は25日から3日間だったが、初日は俺自身が奄美大島に行ってたので、JGFAメンバーの森君にお願いした。初日に関しては森君にレポートをお願いしてます。彼は英語は堪能、とても資源管理に熱心な若者でレポートはとても期待できます。2日目と3日目はSFPCの片山君と某テレビ局の三澤さんが同行した。


ISC議長のGerard Dinardoさん

2_20170429063858eff.jpg


写真撮影は初日の冒頭のみOK。

3_2017042906385986c.jpg



世界の海はこのように分けられて管理されている。

4_201704290639017ce.jpg

世界には5つの国際管理機関があります。

WCPFC 中西部太平洋マグロ類委員会
IATTC 全米熱帯マグロ類委員会
CCSBT 南マグロ保存委員会
IOTC インド洋マグロ類委員会
ICCAT 大西洋マグロ類国際保存委員会

さらに北太平洋には、北太平洋におけるマグロ類及びマグロ類類似種に関する国際科学者委員会(ISC)があります。これは国際条約に基づいた委員会ではありませんが、日本、アメリカ、カナダなどの加盟国の合意に基づきWCPFCに委託されてマグロ類の資源評価を行うなど、マグロ管理委員会に準じた活動を行っています。

参考サイト
http://www.gcoe-kinkiuniv.jp/iccat.html



2日目は資源回復に向け、たくさんのシナリオによるシュミレーションが提出され、それに対しての説明から始まった。これに関しては、専門の知識がない俺や漁業者のほとんどはチンプンカンプンだった。シナリオのことで質問をしてくださいと言われても基礎知識がないのでできないのだ。

5_20170429063902cae.jpg


これを理解するためにはもう一度学生になる必要がありそうだ。

6_2017042906390470e.jpg


さらに同時通訳がわかりづらかった。さらに徹夜で勉強してから来たので眠くてしかたない。

7_20170429063905f18.jpg


ところが、このシュミレーションを見て、ふと思ったのは、禁漁にすれば2~3年で安定水準(初期資源量の20パーセント)に達するということである。
一番下の左から2番目シナリオ13が禁漁にした場合のシュミレーションである。最上列の左から2番目シナリオ2は小型魚、大型魚、ともに2010年から2012年の漁獲実績の平均から50パーセント削減した場合のシュミレーションである。

8_20170429063907fee.jpg


難しい計算によるシュミレーションをいくつも出して、ややこしい複雑な資源管理を長期にわたってやるより、2~3年禁漁の方が早期に漁業者の生活を助けることになるのではと思った。その間だけ他の漁をやる、もしくは陸の仕事をやるという選択肢はないのだろうか?

魚が減ったのは漁業者にも責任はあるのだ。

資源管理の進んでいる欧米では、ここまで資源が減る前に禁漁にするだろう。ISC議長も言っていた「早い段階で手を打ち、早期に回復させること」と。病気に例えるなら、手遅れとならないよう早期に治療することである。

しかし、日本は資源回復スピードが最も早い禁漁という手段を使うことはまずない。


会議ではこのような漁業者の発言が多かった。

「資源は回復傾向にある」
「厳しい規制はやらないでほしい」
「魚は増えたが漁師がいなかったでは本末転倒だ」


はじめのころは「皆さん、礼儀正しい発言だな」と感心していたが、午後になって「なんでみんな同じことを言うんだろ?」と疑問を感じ始めた。

これが何を目的としているのか、すぐにわかった。
昨年12月にフィジーで開催されたWCPFCの国際会議で日本は袋叩きにされた。
それに対する水産庁側が考えた作戦だろう。もしくは全漁連あたりが作文を配ったのかもしれない。
「日本は資源が回復している。規制が長引けば日本の漁師は絶滅する。だから初期資源の20パーセントに回復させるというアメリカ案は辞めてほしい。」ということを漁業者に話させたのだ。

※後日、全漁連から全国の漁協などにフォームが送られていたことが判明。補助金など地方の漁業支援の金の動きを水産庁が握っているので逆らえない。言いなりになるしかないのだ。


WCPFCの会議では「日本は科学をマニュピレート(操作)するな」と言われた。
今度は「日本は質問をマニュピレートするな」と言われるかもしれない。


参考にしてください。
「国際会議で完全敗北後の水産庁」
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-456.html


俺は3回質問させていただいた。最後は「皆さん同じことばかり言いますね。作文でもあるんですか?」「今年2月に釣り人2229人のアンケートを取りましたが、漁業者の皆さんと全く反対の結果が出ています」と発言した。前列にいた外国の参加者の間から笑い声が聞こえた。振り向いて笑っている方も数名いた。皆さん気づいていたのだろう。


釣り人には圧力も利権も補助金もないので、真っ正直な結果がでる。

9_2017042906390831d.jpg


もちろん参加者の中には自分の意見を堂々と話した人もいた。ただ、それが少数に感じたのは事実である。

こんな会議に何の意味があるのか?
疑問を感じたのは事実である。
そして水産庁「もしくは全漁連?」はこんなことをやって恥ずかしいとは思わないのか?

漁業者の発言には「お上には逆らえない」という空気を俺は強く感じた。

かつては巨大なクロマグロで栄えた漁港が、大きなクロマグロが獲れなくなりヨコワ(幼魚)専門の漁港になっていた。組合長「ヨコワを獲って生計を立ててます」。なんとも寂しい。

水産庁関係者も漁業者同様長期の規制、高い資源回復目標に否定的な意見が多かった。

目の前しか見えない日本人。
漁業者はもう余裕がないのかもしれない。
何か悲しく感じる会合である。



外国の参加者(ISC議長、各国代表、NGOなど)からは「増えたと言っても、それは一番悪いときから少しだけ増えたかもしれないが、それはまだまだ増えたと言えるものではない」「早期に目標値まで回復できれば漁獲枠を増やすことができる。まずは安全な初期資源量の20パーセントまで回復させるべき」「いま、枠を増やしたら、元の最悪の状態に戻ります」と長期展望にたった冷静な発言が多かった。

WCPFCの議長も「B020パーセントは国際合意です」とはっきりと答えていた。
B0(ビーゼロ):初期資源量、推定65万トン

もしかしたら幼魚(ヨコワ)は増えているかもしれない。でももう少し待てばマグロと呼ばれるようになるのだ。5キロのヨコワなんて5000円もしないだろう。3年待てば50キロになり、1匹が25万円以上になるだろう。3年で50倍になるのだ。もう3年待てば100キロになり、100万円くらいになるだろう。6年で200倍である。

あるマグロ漁師に聞いてみた。

俺「大きなマグロを釣りたいとは思わないのですか?」
漁師「大きいマグロを釣りたいのはマグロ漁師の本能です」



我が国の問題はクロマグロだけではない。かつてはニシン、そしてホッケ、スケソウダラ、カタクチイワシ、サバ、シシャモ、イカナゴ、サンマ、スルメなどなど、戦後大幅に資源を減らしている。

水産庁は1948年に誕生した。その目的の一つが水産物の資源管理であることは言うまでもない。

ところが水産資源は大幅に減り、水揚げの減少を止めることができない。

世界のほとんどの国の水産業は成長産業なのだが、日本は衰退産業なのである。

国連の食料農業機関(FAO)では以下のように定めている。※一部抜粋

第6条「一般原則」
魚を獲り過ぎたり獲り過ぎてしまうような漁獲能力を持ったりしないこと(第3項)
最良の科学的情報に基づき管理を行うこと(第4項)
予防的アプローチを適用すること(第5項)
小さい魚などは獲らないような選択性のある漁具を使用すること(第6項)
魚などの生息地を守ること(第8項)
ルール違反の漁業はしっかり監視し、取り締まっていくこと(第10項)
小規模で伝統的な漁業を大切にしていくこと(第18項)


果たして日本はこの一般原則をどこまで守っているのか?
俺の目にはほとんど無視しているようにしか見えない。


水産庁サイトからの発言には疑問に感じるものも多かった。

産卵場の規制に関して、このような発言があった。

1.「地中海は産卵場を保護してない。産卵期に待ち伏せて一網打尽である」
2.「日本海側で産卵期にまき網で漁獲される個体は3歳4歳が多く、ほとんどが初産卵であるという発言があったが、3歳から7歳ではないのか」


1に関しては水産庁所管の国立研究開発法人「水産研究・教育機構」から以下の現況報告がある。

平成26年度国際漁業資源の現況

ICCATでは様々な漁業規制を行っている(ICCAT 2014d [Rec.14-04])。禁漁期は、はえ縄については6月1日~12月31日(ただし、地中海及び東部大西洋の一部(西経10 度以西、北緯42度以北、及びノルウェーEEZ内)は2月1日~7月31日)、まき網は5月26日~6月24日以外(ノルウェーEEZ内は6月25日~10月31日以外)とする。

ようするにまき網は5月26日から約1か月しか漁ができないのである。これは規制であり、資源保護を目的としていると言って間違いないだろう。地中海でのまき網の漁獲も2007年は22000トン以上あったが、禁漁期間を設けた結果2011年は4300トンまで減少している。

2の日本海の3歳から4歳の個体が多いという根拠は、日本海側の産卵場で漁獲したマグロのほとんどが水揚げされる境港のマグロのアベレージサイズのデータを見ればわかる。
2007年 43.9キロ
2008年 50.0キロ
2009年 53.2キロ
2010年 37.6キロ
2011年 40.7キロ
2012年 65.0キロ
2013年 34.8キロ
2014年 35.6キロ

3歳は30キロ前後、4歳は50キロ前後、5歳だと70キロ前後である。


水産庁や漁業者から初期資源量に疑問の発言が相次いだ。そんな仮定の数字にこだわる理由がわからないというような発言だった。

俺は資源の豊かな海を世界中で見てきた。資源管理に成功した海はとにかく豊かである。カナダのプリンスエドワードでは沿岸から1キロ、港から10分くらいのところで300キロ以上のクロマグロが次々とヒットする。アメリカのケープコッド、ノースカロライナも100キロオーバーのクロマグロが行くたびにヒットする。マイアミでは150キロを超すグルーパー(ハタ)が毎日釣れる。

日本も江戸時代、明治時代のエンジンのない時代に大きなマグロがいっぱい獲れたという文献がある。東京大学出版会の「日本漁業史」には明治24年に沿岸で540万貫(約2万トン)のマグロが獲れたという記録が残っているのだ。そしてそのころからすでに乱獲という文字も使われていた。

「乱獲が進み、漁場は沿岸から沖合へと移っていった」

10_20170429063910c23.jpg



江戸時代のマグロ漁。こんな近くでマグロが獲れたのだ。

11_2017042906391165c.jpg


資源が増えれば漁師同士のもめ事も、釣り人とのもめ事も減るだろう。

豊かな海は人の心も豊かにする。

それはカナダの漁師から学んだことである。そこには漁師と遊漁、釣り人の間でトラブルはない。

初期資源量がデタラメだという科学的根拠はないのだ。


さて、水産庁の持論である「親と子の相関関係はない」だが、俺はこんな馬鹿げた話(屁理屈ともいう)といつまでもやりあうのは時間の無駄と感じている。親と子の相関関係がない生物なんてこの地球上に存在しない。親がいなければ子は産まれないのだ。

それよりも重要な問題は、経済的な有効利用である。限りある資源をいかに有効に使うか、それは何よりも大切な問題ではないのだろうか。

我が国の成魚(30キロ以上)の漁獲だが、昨年は4103トンの水揚げがあった。そのうち3122トン、なんと76パーセントが6月と7月の2か月に集中している。その2か月は産卵期である。昨年の7月1日は日本海側だけで約300トンのクロマグロがまき網で獲れた。たった1日で300トンである。日本海側で一番大きい境港では処理に4日間もかかった。当然境港では大暴落。3日は安値がキロ200円、4日は平均単価キロ384円だった。冷凍のキハダやメバチより安い。築地に送られたマグロも破格の安値、さらに売れ残りもあった。これを経済乱獲という。全くの資源の無駄遣いである。


昨年7月の境港の水揚げ単価。あまりにも安い。

12_2017042906391386a.jpg


築地でのキロ単価は2008年が1360円、2009年が1260円、2015年が1120円、2016年が1077円と年々安くなる傾向である。

13_20170429063914b19.jpg


売れ残り


14_2017042906391613f.jpg


美味しい時期に獲る、大きく育てて獲る、漁獲を集中しない、それが賢い漁業である。
美味しくない産卵期に集中して獲るのは一番愚かな漁業である。単価も暴落する。こんな誰でもわかることが日本では長年続いているのだ。


早期に確実に回復させるためにはすべての漁法において厳しい規制は必要である。そしてまき網に獲るなとは言わない。集中して獲るのは改めるべきだ。また船上で生きたまま処理をするなど、高く売る方法を考えて実行すべきだ。現状は同じ時期に同じサイズを獲ると、まき網と定置、はえ縄、一本釣りではキロ単価に3倍前後の開きがある。7月だとボストン産のクロマグロは国産まき網マグロの10倍くらい高い。

この産卵期のまき網漁に関して7名の外人に聞いてみたが、全員が「産卵期は保護もしくは規制すべき」「産卵場で規制すると他の場所で獲ることになるので期間を決めて禁漁、もしくは規制すべき」「日本はそんなにまき網会社が強いのですか?」と否定的な意見ばかりだった。

資源を増やすのは重要な課題だが、単価を上げて限りある資源を有効に使うことも重要なことである。


左から真田先生、PEWのAmanda Nicksonさん、俺、PEWのJamie Gibbonさん、右の二人は忘れました。

15_20170429063917793.jpg


EU代表のJosu Santiagoさん

16_2017042906391925c.jpg



最後に水産研究教育機構の宮原理事長(農水省国際顧問)の総括の一部を紹介します。

産卵期のマグロは経済的には価値がないわけだから、経済的に価値がある獲り方をすべきだということは論を待たないわけで、産卵に入った魚を獲るのは絶対に避けたほうがいい。
遊漁に関してはデータの収集が今後必要。(レギュレーションなど)前に進めたい。


17_20170429063920837.jpg


素晴らしいお言葉をありがとうございます。

18_20170429063922739.jpg

※この2枚は宮原さんが水産庁の次長だったころの写真です。


会合2日目の終了後はみんなで宴会&ミーティング。左から真田先生、森君、北海道の高松さん、壱岐の富永さん。

19_20170429063923468.jpg


最後は「イサリビ」(未来も魚を食べるぞ通信)の取材を受けました。次号にちょこっと載る予定です。

20_20170429063925aba.jpg


コメント

非公開コメント

No title

先を見るってことが全くできていないように感じますね
マグロは好きですけどこのような漁がされているなら食べたいとは思えないです

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです