連載1「クロマグロの一生」
日本人とクロマグロの関係は今から11,000年前の縄文時代初期まで遡ることができる。そんな昔から日本人はクロマグロを食していたのだ。

クロマグロの寿命は25年くらいだが、そこまで生存できるのはごく一部。一番の天敵は人間である。

2019年5月、国際水産資源研究所を訪問した。クロマグロなどの広域回遊魚の調査、研究を水産庁の委託を受けてやっている。

クロマグロの研究に関して、最先端のお話を聞かせていただいた。

これが標準サイズのアーカイバルタグ。内部にデータを蓄積できる電子タグの一種で1本19万円くらい。

最近はさらに小型のアーカイバルタグも開発されている。これだと0歳魚、200グラムくらいのマグロに使うことができる。

生まれて1~2年以内にかなりの個体がアメリカ西海岸まで移動する。西海岸で数年(3年前後)を過ごす。西海岸は餌となるサバやアジなどが豊富なのでクロマグロも食事に困らない。ただし、餌環境が良いのが原因なのか、近年は5年以上西海岸で過ごすクロマグロも増えている。
2018年までで1064本の電子タグがクロマグロに埋め込まれてリリースされた。そして2018年までに277本が再捕されている。なんと26パーセントも再捕されているのだ。これからもクロマグロのリリース後の生存率の高さがわかる。
さらに、アメリカ側からリリースされたクロマグロの再捕率は、日本側より高いというお話だった。

成熟すると日本近海に戻り、その後は台湾、沖縄あたりから、東北、北海道、千島列島あたりまでを往復しながら成長し産卵を繰り返す。7年で100キロ、11年で200キロ、15年で300キロに達する。3歳で20パーセント、4歳で50パーセント、5歳で100パーセントが成熟する。卵の数は250キロくらいのマグロで1000万個くらいである。
産卵場は主に沖縄近海と、日本海の若狭湾周辺。24℃が産卵の適水温。産卵は一度で終わらず、数回に分けて行う。
クロマグロは低水温に強く、水温2℃でも心臓は動き続ける。キハダは7℃で心臓が停止する。

クロマグロの仔魚を採取する。

採取された仔魚。1週間で3ミリまで成長する。

2019年7月に海洋生物の調査研究では世界トップクラスと言われているモントレーベイ水族館を表敬訪問する。中央の女性がパッカード館長。周りは研究者。左側は通訳をお願いした富田さん(シリコンバレー在住)。

マグロ、カメ、クジラ、サメなど、多くの大型海洋動物の研究では世界最先端を行く。

アメリカ西海岸で衛星タグを付けられたクロマグロの回遊経路。最後が北朝鮮と韓国の中間くらいの沖になっている。

アメリカは日本より10年以上も前からタグによる調査を始めている。そのデータは莫大である。

アメリカ西海岸沖でのクロマグロの釣果。アメリカのバッグリミットは1日1人2匹である。一つの船が1日に1トン以上釣ることもある。そして近年は大型化している。

そして日本。2010年ごろから青森、九州まで遠征しても坊主で帰るのが当たり前だった。

ところが2018年ころから目に見えて資源が回復。魚が減れば釣り人も減る。魚が増えれば釣り人も増える。

釣り船もプレジャーボートも増え、旅館も予約でいっぱい、地元の居酒屋は毎日満員御礼となった。

釣り人による生態調査も始まった。サイズを測り、電子タグを埋め込む。

3年くらい前からリリースする人も増えている。資源が増えれば釣り人の気持ちも豊かになる。
20~25年で繁殖能力がなくなると、かなりの個体が赤道を通り越して南半球に移動する。ニュージーランド南島はそのクロマグロの終焉の場の一つである。

ニュージーランドではホキの大型トロール船の周りにクロマグロが近づく。

網からこぼれるホキをクロマグロが狙っているのだ。
アメリカの若い研究者ジョージ・シリンガーが2007年から2011年まで、毎年夏になると訪れて、釣り船に乗ってポップアップタグ(電子タグの一つ)を200本以上打ったが、日本に戻るクロマグロは1匹もいなかった。おそらくニュージーランド近海で一生を終えたのだろう。

我々日本チームもニュージーランドで22匹のクロマグロにタグを打った。
2007年から2010年までニュージーランドにマグロ釣りに行ったのでこの若い研究者の話は聞いていた。餌の豊富な北大西洋で余生を過ごさず、環境の厳しい南半球で一生を終える。子孫たちと争いたくないのかもしれない。
その後、ジョージシリンガーに会うことはなかったが、彼が所属していたモントレーベイ水族館を表敬訪問をし、その後の研究結果などを教えていただいた。
https://tagagiant.blogspot.com/2008/08/new-zealand-giant-pacific-bluefin-tuna.html

クロマグロの寿命は25年くらいだが、そこまで生存できるのはごく一部。一番の天敵は人間である。

2019年5月、国際水産資源研究所を訪問した。クロマグロなどの広域回遊魚の調査、研究を水産庁の委託を受けてやっている。

クロマグロの研究に関して、最先端のお話を聞かせていただいた。

これが標準サイズのアーカイバルタグ。内部にデータを蓄積できる電子タグの一種で1本19万円くらい。

最近はさらに小型のアーカイバルタグも開発されている。これだと0歳魚、200グラムくらいのマグロに使うことができる。

生まれて1~2年以内にかなりの個体がアメリカ西海岸まで移動する。西海岸で数年(3年前後)を過ごす。西海岸は餌となるサバやアジなどが豊富なのでクロマグロも食事に困らない。ただし、餌環境が良いのが原因なのか、近年は5年以上西海岸で過ごすクロマグロも増えている。
2018年までで1064本の電子タグがクロマグロに埋め込まれてリリースされた。そして2018年までに277本が再捕されている。なんと26パーセントも再捕されているのだ。これからもクロマグロのリリース後の生存率の高さがわかる。
さらに、アメリカ側からリリースされたクロマグロの再捕率は、日本側より高いというお話だった。

成熟すると日本近海に戻り、その後は台湾、沖縄あたりから、東北、北海道、千島列島あたりまでを往復しながら成長し産卵を繰り返す。7年で100キロ、11年で200キロ、15年で300キロに達する。3歳で20パーセント、4歳で50パーセント、5歳で100パーセントが成熟する。卵の数は250キロくらいのマグロで1000万個くらいである。
産卵場は主に沖縄近海と、日本海の若狭湾周辺。24℃が産卵の適水温。産卵は一度で終わらず、数回に分けて行う。
クロマグロは低水温に強く、水温2℃でも心臓は動き続ける。キハダは7℃で心臓が停止する。

クロマグロの仔魚を採取する。

採取された仔魚。1週間で3ミリまで成長する。

2019年7月に海洋生物の調査研究では世界トップクラスと言われているモントレーベイ水族館を表敬訪問する。中央の女性がパッカード館長。周りは研究者。左側は通訳をお願いした富田さん(シリコンバレー在住)。

マグロ、カメ、クジラ、サメなど、多くの大型海洋動物の研究では世界最先端を行く。

アメリカ西海岸で衛星タグを付けられたクロマグロの回遊経路。最後が北朝鮮と韓国の中間くらいの沖になっている。

アメリカは日本より10年以上も前からタグによる調査を始めている。そのデータは莫大である。

アメリカ西海岸沖でのクロマグロの釣果。アメリカのバッグリミットは1日1人2匹である。一つの船が1日に1トン以上釣ることもある。そして近年は大型化している。

そして日本。2010年ごろから青森、九州まで遠征しても坊主で帰るのが当たり前だった。

ところが2018年ころから目に見えて資源が回復。魚が減れば釣り人も減る。魚が増えれば釣り人も増える。

釣り船もプレジャーボートも増え、旅館も予約でいっぱい、地元の居酒屋は毎日満員御礼となった。

釣り人による生態調査も始まった。サイズを測り、電子タグを埋め込む。

3年くらい前からリリースする人も増えている。資源が増えれば釣り人の気持ちも豊かになる。
20~25年で繁殖能力がなくなると、かなりの個体が赤道を通り越して南半球に移動する。ニュージーランド南島はそのクロマグロの終焉の場の一つである。

ニュージーランドではホキの大型トロール船の周りにクロマグロが近づく。

網からこぼれるホキをクロマグロが狙っているのだ。
アメリカの若い研究者ジョージ・シリンガーが2007年から2011年まで、毎年夏になると訪れて、釣り船に乗ってポップアップタグ(電子タグの一つ)を200本以上打ったが、日本に戻るクロマグロは1匹もいなかった。おそらくニュージーランド近海で一生を終えたのだろう。

我々日本チームもニュージーランドで22匹のクロマグロにタグを打った。
2007年から2010年までニュージーランドにマグロ釣りに行ったのでこの若い研究者の話は聞いていた。餌の豊富な北大西洋で余生を過ごさず、環境の厳しい南半球で一生を終える。子孫たちと争いたくないのかもしれない。
その後、ジョージシリンガーに会うことはなかったが、彼が所属していたモントレーベイ水族館を表敬訪問をし、その後の研究結果などを教えていただいた。
https://tagagiant.blogspot.com/2008/08/new-zealand-giant-pacific-bluefin-tuna.html
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