2010/03/02

ウルグアイ川のドラード



ドラードという魚は開高健さんの「オーパ!」で知った。そして多くの釣り人が開高さんの影響を受けたように俺も大きな影響を受けた。アラスカでキングサーモンとハリバットを釣り、カナダでチョウザメを釣り、コスタリカでターポンを釣り、アマゾンでピラルク、そしてピーコックバスを釣った。これらの魚は開高さんのオーパを読まなかったら狙わなかっただろう。だいたい俺は海釣り師である。ピラルクもピーコックもチョウザメも川で釣る魚なのだ。

そしてアフリカではナイルパーチとタイガーフィッシュを釣り、アジアでは淡水魚最長と言われるヨーロッパ大ナマズ(名前はヨーロッパだが俺が釣った場所はカザフスタン)を釣った。
あと淡水魚でどうしても釣ってみたい魚はドラードだけになった。ドラードと言えばブラジル南部、ウルグアイ、アルゼンチン、ボリビアなどである。

1回目の挑戦は2007年2月だった。場所はアルゼンチンのイベラー湿原である。友人の情報ではかなりの高確率でドラードが釣れるということだった。しかし結果は撃沈。7名で行ったが3人が坊主という渋さだった。
イベラー湿原のレポートはここ
http://www.grouperboys.com/chokoki07b/ar0702/ar_a.htm

地球の裏側まで行って坊主に終わったのである。このままでは終わりたくない。いつか絶対に釣ってやると誓った。
しかしドラードを釣る良い情報はない。あったとしても予約が取れない。連絡が取れない。そんな情報ばかりだった。

2008年9月のオーストラリア・ジュエルリーフ遠征で一人のブラジル人と知り合う。聞けば世界中のいろんなところに釣りに行ってるらしい。そして彼からウルグアイ川ドラードの話と大きな写真を見せられた。25キロのドラードだった。さらに詳しく聞くと、この場所へは何度も行っていてマネージャーとも親しいらしい。同行に乾物屋さん(本名・増田)という英語ペラペラの友人がいたので会話には苦労しなかった。名前はアンドレ・ボトムさんという方だ。
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アンドレさんが2006年1月に釣ったドラードの世界記録24.1キロ
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そして6日間のジュエルリーフでしっかりと仲良くなり、ウルグアイ川の予約をお願いして別れた。
ジュエルリーフ遠征のレポートはここ
http://grouperboys.web.fc2.com/08report_e/10jewell_a/je_a.htm

帰国して一週間後、アンドレさんからメールが来た。空き状況やキャンセル状況を教えていただき2010年2月にウルグアイ川に行けることが確定した。人気のあるロッジなのでデポジット(予約金)はすぐに振り込んだ。そうしないと別の人にすぐに抑えられてしまうからだ。日本と違って白人圏はデポジットを払わないと予約とはならない。デポジットは総額の50パーセントだった。アメリカやオーストラリア、ニュージーランドは10~30パーセントくらいだが、ヨーロッパは50パーセント以上のところが多い。セイシェルは2回とも100パーセント(全額)だった。基本的にデポジットは返ってこない。もし都合が悪くなりキャンセルした場合、次回分としてデポジットは先方が預かることになる。どうしても行けなくなった場合は預けたままで終わることが多い。ようするに払ったら返ってこないのが常識なのだ。

秘境に行くということはいろいろなことを覚悟しなければならない。行けるのか?釣れるのか?安全なのか?お金を払ったけど騙されているのではないか?ちゃんと空港に迎えは来るのか?荷物は無事に届くのか?病気は大丈夫なのか?
現地の国内線や送迎バス、送迎船などが遅れることは珍しくない、というかほとんど遅れると思ったほうがよい。日本への帰国が1日くらい遅れることも最初から覚悟しておいたほうがよい。黄熱病、マラリア、破傷風、A型肝炎、狂犬病などなど、出発前に予防接種が必要な地域もある。

そして現地で少々のトラブルが起きても動じないことである。あまりギャーギャー騒ぎ立てたり、現地の対応に不満をグチグチ言うことは聞いている回りの人までイライラしてくる。釣れないからと愚痴るのも最低である。そのようなことをいちいち気にする人は秘境へ行くべきではない。
大金を捨てたと思って行く心境が必要なのだ。

今回のメンバーは遠征の常連で、長く俺と付き合っている人ばかりだから、気は楽だった。
メジ1号(本名・伊東):埼玉県在住。グルーパーの中で最初に5大陸で淡水魚メーターオーバーをキャッチした。アラスカ、カナダ、カムチャッカ、シベリア、アマゾン、アルゼンチン(イベラー)、エジプト(レイクナセル)、コスタリカ、モンゴル、カザフスタン、カナリヤ諸島、オーストラリア(モンテベロー、ノーザンテリトリーなど)、ニュージーランドなど海外遠征(特に秘境)のベテラン。
メジ2号(本名・疋田):北海道在住。与那国、トカラの常連。GTとマーリンが好きで遠征は南国がほとんど。最近はマグロも本格的に狙っている。海外遠征ではコスタリカでターポンの実績あり。
博士(本名・椎名):東京都在住。アマゾン8回、アルゼンチン2回、ベネズエラ1回という南米の第一人者。俺とはアフリカのタンガニーカ湖、カザフスタンのイリ湿原、アマゾンのイタパラ川に同行している。GTも大好きでモルジブなどへも出かけている。魚類にやたらと詳しいので博士と言うニックネームが付けられた。

1回目のドラード完全敗北から丸3年が過ぎた2010年2月、ウルグアイ川に向けて出発した。

アメリカのダラス空港で乗り継ぎ、アルゼンチンのブエノスアイレス空港に向かう。


アンデス山脈をチリ側からアルゼンチン側へ抜けるとき朝日が見えた。
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ブエノスアイレスで小型機に乗り換え、ウルグアイ川へ向かう。
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小さな空港に到着。
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送迎の車で15分ほど走ったところにロッジはあった。
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一人一部屋
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快適♪
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秘境大好きアングラー。
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ボート2艇で釣り場へ
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人生初ドラード!
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小さいけどメチャ嬉しかった。

連日の大雨で川は増水して流れも強かった。我々はときおり襲う豪雨に耐えながら釣りを続けた。

予想と違い、トップへの反応が良かった。ガンマやブルーイールが大活躍した。

ボロボロのブルーイール。
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初日と2日目は下流の小物ポイントだったが、3日目から本命の大物ポイントに入った。本命ポイントは一般の釣り人や漁師さんは入れない。ライセンスを取得した4名だけしか入れない。ボートも2艇しか入れない。そうやってポイントを守っているのだ。

本命ポイントに入るなり次々と大物が釣れた。
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4日目から天気が回復した。水位は下がり、釣れていた川岸は干上がって川幅はどんどん狭くなっていった。

トップがパタリと釣れなくなり、大型のドラードはディープダイバー系のミノーにのみヒットするようになった。圧倒的に強かったのはラパラのX-RAPマグナム30だった。

ドラードの口
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ドラードはすべてリリースです。
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5日目、6日目と30ポンドオーバーが続々キャッチされた。

トップが渋くなると俺は大苦戦だった(トップ中心でタックルを用意したので)。



博士は3日得連続で30ポンドオーバーをキャッチ!最大は36ポンドだった。
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メジ1号は順調に20ポンドオーバーをキャッチ。最大は27ポンド。
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メジ2号はしり上がりに良くなり、5日目、6日目は数え切れないほど20ポンドオーバーをキャッチ。最大は35ポンドだった。
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俺は100匹以上釣ったものの最大は24ポンド。まあ多くの時間カメラマンに専念しましたが。
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外道もいろいろ釣れました。

ガンマの90にピラニア
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これはサバロ。鯉に似ているけどカラシンの仲間。ブラジル名はクリマタ。コスタリカではターポンのことをサバロと言います。
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ブルーイールに鎧のような魚が。プレコの仲間らしいです。
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ウルグアイ側では密漁者を発見。どうやら警察に賄賂を払って釣りしているらしいです。どこにも困った人はいるもんですね。
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4人で500匹以上キャッチ!バレが多いのでバイトは3000発以上あったと思います。タイガーフィッシュと同じで8割以上が最初のジャンプでバレます。歯の鋭い魚は総じてフッキング率が低いです。ピーコックやナイルパーチなどベイトを吸い込むタイプの魚はフッキング率が高いです。

最高の釣果だったけど、なぜか日に日に感動が少なくなっていきました。

釣れすぎるのも良くないですね。


スタッフは全員親切でフレンドリーでした。
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ドラードのジャンプはいっぱい撮りました。ここを見てください。
http://grouperboys.web.fc2.com/10report_a/uru_j/uru_a.htm
一番のお気に入りは最初の写真です。

ウルグアイ川周辺の鳥たち、、アンデス山脈上空、日中のお月さんなどの風景写真はここです。
http://grouperboys.web.fc2.com/10report_a/uru_p/uru_a.htm
自分で言うのもなんだけど、きれいです(^^)


貴重な魚なので俺自身のドラード釣りは今回を最後とします。