ケープコッド沖キャスティングマグロ

7月2日に帰国して次の日に病院に行った。中指の力がほとんどないのでコーラの栓は抜けないし、税関申告書に文字を書くのにペンも満足に握れなかった。結果は骨折ではなくて靭帯損傷、全治2ヶ月だった。先生に人差し指と中指をテープで固定された。これで最低6週間は耐えなさいと言われた。無理をするとさらに長引くそうだ。パナマで怪我をした直後に病院へ行けばよかったと言われた。
原因はパナマでトローリングタックルで釣った100キロのキハダマグロである。ギンバル付きでないロッドベルトでやったので必要以上に力を使った。おそらくそのときに指をひねったのだろう。内出血がひどく、しばらくは激痛だった。3日間釣りをせず安静にしていると痛みが引いてきたのでマサチューセッツでマグロに挑んだ。それで更に悪化した。
2ヶ月釣りはドクターストップ。野球で言えば故障者リスト入りである(笑)
そんな指で挑んだマサチューセッツのキャスティングクロマグロです。
咳は相変わらず続いているが夜間に食べ物を吐くことはなくなった。
パナマからアメリカへ戻りサミーの自宅に泊まった。昨年もすっかりお世話になったが、今年もたっぷりとお世話になった。
27日は中休みとした。俺もび~るだ~さんも年寄りなので休養が必要なのである。
28日は悪天候で中止となった。指が痛い俺にはいい休養になった。
28日の午後5時過ぎにニューヨークからマサチューセッツに移動してボストンの南東側45キロにあるグリーンハーバー近くの近くのホテルに泊まった。
29日は朝の3時半ホテルを出発。4時を少し過ぎた頃に出港した。あたりはまだ薄暗い。ニューヨークからグレン・クロスが来て合流した。彼はアメリカを代表するジギング&ポッピングアングラーである。
ポイントまでは北東方向へ1時間半くらい走った。25~27ノットくらいで走ったから距離は60キロくらい。ケープコッドの湾側である。ボストン市内の高層ビルが左後方に見えていた。
最初はナブラ探しとなった。
しばらくすると大きな鳥山を発見。ボートは猛スピードで鳥山に近づいた。回りには漁船も釣り船も見えない。完全に我々で貸切である。
キャストを開始するとすぐにマグロが俺の投げたガンマに襲いかかった。1回目空振り、2回目空振り、3回目でがっちりとフッキングした。パナマに続いて1投ヒットである。サミーとグレンはミヨシで投げていたがノーバイトだった。

ロッドはカーペンターBLC83/40(プロト)、ラインはPE6号でドラグの初期設定は7キロくらいだった。中指に力が入らないので普段より弱目のドラグでファイトした。途中ドラグを2回締めて、最後は10キロくらいだった。後方でファイトしていたので2基の船外機がやたらと邪魔になった。船のフォローはいっさいない。グレンとサミーはその間にもずっとキャスティングを続けていた。
船下で回るのがマグロの特性。そのたびに船外機を避けて右に左にと移動した。やりづらかったが16分でキャッチ。リリースギャフを口に刺して写真を数枚撮ってリリースした。


重量:船長推定140ポンド(64キロ)
ロッド:カーペンターBLC83/40
リール:ステラ18000HG
ライン:サンラインPEジガー8HG・8号
リーダー:サンライン・システムリーダー(ナイロン)150ポンド、先端フロロ60号70センチ
ルアー:BC-γ90
ファイティングタイム:16分
船べりリリース
この海域でのレギュレーションは叉長73インチ(183センチ)以下はリリースである。このサイズは重さに換算すると120キロ前後である。日本では100年後もありえないようなレギュレーションだ。
1匹釣ったので俺はカメラマンに専念した。び~るだ~さんは30キロ以下が跳ねたら投げるらしいが、大型ばかりなので投げないで観戦ばかりだ(笑)
その後もあちこちでナブラが立つが、投げても投げてもヒットしなかった。

午後になりマグロの活性が更に上がった。
サミーにヒット!

凄い勢いでラインが出ていった。
走り方からしてかなり大型のようだ。すぐにボートはフォローに入った。
10分経過
20分経過
何度も残り20メートルくらいまで寄るのだが、そのたびに30メートルから100メートルくらい走られた。
水深は200フィート(60メートル)

船長「ここは浅いから簡単だよ」と言っていた。ケープコッドの外洋側は水深が800メートルもあるのでマグロを釣るのは数倍難しくなるらしい。
それでも簡単に釣れないのが巨大マグロ。
30分くらいで50メートルくらい離れたところに浮いた。大きさは150キロ以上は確実にありそうだった。
新しいレギュレーションになってから初めてのキープサイズだ。船長は手製のモリを組み立てて用意した。モリは打ち込んだら抜けるようになっていてロープの端にはブイが結んであった。

20分くらいからロッドをまっすぐにして休む場面が多くなった。サミーは腕力は強いけど腰が弱点らしい。

それでも座らず、誰の手助けも受けずに必死のファイトを続けた。
しかし47分後にフックアウトで終了。
キャスティングを再開すると、こんどはグレンにマグロがヒット!
ブラックマジックのロッドベルトを装着してファイト開始。

今度はさほど走らなかった。
それでもなかなか浮上しない。80キロ以上はありそうだ。

船の真下方向でのファイトが中心だった。
やはり腰が痛いのかグレンもこんなふうに休んでいた。ロッドをまっすぐにすることで腕を休めることができるし、腰も楽になる。

腕っ節の強いアメリカのトップアングラーでもマグロとの長時間ファイトは辛いのである。
グレンは走られるとスプールを抑えてプレッシャーをかけていた。
ところが強く抑えすぎて19分でラインブレイク。
※アメリカ人のファイティングタイムはかなりアバウトであることが今回わかった。俺はヒット時間を腕時計で確認している。その上に撮ったビデオで再確認する。アメリカ人の誤差は多いときは3倍以上もあった。
サミーは7.7フィート、グレンは7.5フィートのロッドを使っていた。サミー曰く「8フィート以上のロッドは腰が痛くなる」ので長いロッドはGT専門でマグロには使わないそうだ。
その後はナブラは相変わらずあちこちで立つもののヒットしなくなった。
俺はマグロの捕食シーンをずっと撮り続けた。でも何とか撮れたのは数枚だけ。跳ねてから撮ったのでは遅い。どこで跳ねるか予測して狙うのだが、ほとんど外れた。


そして3時半ごろストップフィッシング
1時間半ほどでハーバーに戻り、クラブハウスで夕食&反省会となった。マグロの話となると船長もアングラーも熱くなるのは世界各国どこも一緒である。

2日目(最終日)
人数が多いので2艇に分かれて出港。サミー、エイドリアン、ビッグマンが昨日と同じ船。俺とび~るだ~さんとポールは昨年俺が乗った船だった。
問題はクルーのジェイソンがミヨシに立って最初にキャステイングしてしまうことだ。俺はあまりにもずうずうしいので客だと思って注意しなかった。しかも投げるときに後方を確認しないので危なくてしかたない。
昨日と同じポイントは鳥がほとんど見えず、マグロもたまに単発で跳ねる程度だった。
たまに鳥をたくさん引き連れた漁船が通り過ぎる。

延々狙ったが、午前中はノーヒット。
午後、船は北へ向けて1時間くらい走った。そこは昨年攻めたポイントだった。
遠くに古い灯台が2本立っている島の沖である。歴史のある灯台で観光名所でもあるらしい。
昨年もいっぱいマグロは跳ねていたが、大きくて50キロくらいだった。ところが今年は小さくても80キロくらいだった。当然び~るだ~さんは見ているだけである(笑)
でも案外この人は掛けたら釣ってしまうのである。
4艇の突きん棒漁船が彼方に見えた。そのうちの1艇をしばらく見ていたが、漁師は長い船首の先端に立ち、いまにも突きそうな体勢だった。ここで捕獲されたマグロはすべて日本へ送られるそうである。

すると灯台のある島の近くでナブラが立ち始めた。しかも凄いナブラだ。船は全速でナブラに近づく。水深は85~90メートル。
また1投でマグロが俺のルアーに襲いかかった。1回目は空振り、2回目も空振りで3回目にがっちりとフッキングした。

投げたルアーはガンマの160だった。ロッドはDJ83MHである。かなりヘビーな部類に入るGTロッドだ。ドラグの初期設定は7キロ位だが、昨日よりはずっとヘビーに感じた。GTは基本的に走りを止めるゲームである。そのためマグロ用のロッドに比べて固くてヘビーである。魚には7キロのドラグは、7キロのプレッシャーだが、アングラーはロッドの長さと固さ、そしてテーパー率で感じる重さは大きく変化する。
この場所は、あちこちに何か仕掛けの付いたブイが浮いているので、さすがに大声でフォローを頼んだ。
途中、少しドラグを上げるとすいすいと浮いてきて12分でガイドにリーダーが入り水面に魚体が浮いた。日本ならここでモリかギャフを打つところだが、ここはリリースなので完全に浮ききるまでリーダーを掴まないようだ。船長は水中カメラを取り出して水中撮影を始める始末。もう一人のクルーは後方で見学しているだけだった。
そうこうしているうちに再びマグロは潜り始めた。最初はゆっくりとラインが出て行ったが、加速が付くとかなりのスピードで潜っていった。ラインは40メートルくらい出た。

そこから大きな円を描いて泳ぎはじめた。10キロくらいのドラグでは全然浮いてこない。10キロでもBLC83/40とDJ83MHではアングラーの負担は大きく違う。とにかく辛かった。ファイト終了後に計るまでは13~15キロくらいのドラグに感じていた。しかも右手は中指が損傷していてほとんど力が入らない。


ヒットしてから25分後くらいに完全に右手の握力がなくなり、肘でロッドを抱えてファイトを続けた。

30分くらいで右手全体が限界になりかけたので、スプールを指で押さえてポンピングした。


34分後、クルーがリーダーを掴んだ。最後までハーネスは使わず、一度も座らずファイトを続けた。






しかしギャフが打ち込まれた瞬間にルアーが外れた。

ギャフは皮一枚だった。

次にマグロが首を振ったら簡単にギャフが抜けた。

完璧な船べりリリースである(笑)
魚種:クロマグロ
重量:船長推定190ポンド(86キロ)
ロッド:カーペンターDJ83MH
リール:ステラ18000HG
ライン:サンラインPEジガー8HG・8号
リーダー:サンライン・システムリーダー(ナイロン)150ポンド、先端フロロ60号70センチ
ルアー:GT-γ160
ファイティングタイム:34分
船べりリリース
一応キャッチなので祝福を受けてます。


その後もナブラは延々と沸いたがポールとジェイソンにヒットはなかった。
2日間連続で船中1匹のマグロをキャッチしたが、マグロを抱えている写真がない。レギュレーションだから仕方ないことだが、やはり釣り人として写真がないと寂しい。
今回の俺はダントツのヒット率だった。それはルアー、ロッドにあると思う。やはり日本で認められているタックルは世界どこへ行っても通用する。
スポーツフィッシング先進国で2日間堂々とファイトした。体調は咳、痰、中指靭帯損傷などで最悪だったが、2匹ともアメリカ人に賞賛されるファイトができた。これから2ヶ月は釣りが出来ないけど10月に再び訪れるときは体調万全で挑みたい。
日本に比べてはるかにマグロは多く感じた。しかも釣り船も漁船もほとんど見ない。同じナブラを2艇以上で狙うことはまずない。
俺自身マグロキャスティング歴は14年になるが、国内で50キロオーバーを掛けたことは一度もない。14年で40回行ったとして300万円は少なめにみて使っている。
マサチューセッツで3日間釣りをして航空運賃、宿泊費、船代など全部込みでも30万円未満ですむ。今回は2日間で64キロと86キロを釣った。
かかった費用をキロで割る(30キロオーバーのマグロのみで計算)
国内キロ単価 39,473円(40回分300万円÷76キロ)
海外キロ単価 3,333円(2回分50万円÷150キロ)
いつも言っていることだがGTにしてもヒラマサにしてもマグロにしても、いっぱい釣ることが一番の上達方法である。
海外でいっぱい釣ってから国内の難しい釣りに挑んだほうがキャッチ率は数倍高くなるだろう。
そしてたくさん釣ることによってわからない部分が見えてくる。
何匹も釣ってわかった一番大事なこと・・・
それは
折れない心。