2017/04/29

豊かな海へ!(腐敗と戦う)

太平洋クロマグロは2014年に絶滅危惧種に指定された。

2014年の親魚資源量は推定17000トン。初期資源量(漁業が無かった場合の資源量)の2.6パーセントまで激減している。


会場は麻布十番駅近くの三田共用会議所
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ISC太平洋クロマグロステークホルダー会合に参加した。
参加にあたってはJGFAの若林事務局長から連絡を受け、参加を勧められて了承した。

ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)
http://isc.fra.go.jp/


会合は25日から3日間だったが、初日は俺自身が奄美大島に行ってたので、JGFAメンバーの森君にお願いした。初日に関しては森君にレポートをお願いしてます。彼は英語は堪能、とても資源管理に熱心な若者でレポートはとても期待できます。2日目と3日目はSFPCの片山君と某テレビ局の三澤さんが同行した。


ISC議長のGerard Dinardoさん

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写真撮影は初日の冒頭のみOK。

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世界の海はこのように分けられて管理されている。

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世界には5つの国際管理機関があります。

WCPFC 中西部太平洋マグロ類委員会
IATTC 全米熱帯マグロ類委員会
CCSBT 南マグロ保存委員会
IOTC インド洋マグロ類委員会
ICCAT 大西洋マグロ類国際保存委員会

さらに北太平洋には、北太平洋におけるマグロ類及びマグロ類類似種に関する国際科学者委員会(ISC)があります。これは国際条約に基づいた委員会ではありませんが、日本、アメリカ、カナダなどの加盟国の合意に基づきWCPFCに委託されてマグロ類の資源評価を行うなど、マグロ管理委員会に準じた活動を行っています。

参考サイト
http://www.gcoe-kinkiuniv.jp/iccat.html



2日目は資源回復に向け、たくさんのシナリオによるシュミレーションが提出され、それに対しての説明から始まった。これに関しては、専門の知識がない俺や漁業者のほとんどはチンプンカンプンだった。シナリオのことで質問をしてくださいと言われても基礎知識がないのでできないのだ。

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これを理解するためにはもう一度学生になる必要がありそうだ。

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さらに同時通訳がわかりづらかった。さらに徹夜で勉強してから来たので眠くてしかたない。

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ところが、このシュミレーションを見て、ふと思ったのは、禁漁にすれば2~3年で安定水準(初期資源量の20パーセント)に達するということである。
一番下の左から2番目シナリオ13が禁漁にした場合のシュミレーションである。最上列の左から2番目シナリオ2は小型魚、大型魚、ともに2010年から2012年の漁獲実績の平均から50パーセント削減した場合のシュミレーションである。

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難しい計算によるシュミレーションをいくつも出して、ややこしい複雑な資源管理を長期にわたってやるより、2~3年禁漁の方が早期に漁業者の生活を助けることになるのではと思った。その間だけ他の漁をやる、もしくは陸の仕事をやるという選択肢はないのだろうか?

魚が減ったのは漁業者にも責任はあるのだ。

資源管理の進んでいる欧米では、ここまで資源が減る前に禁漁にするだろう。ISC議長も言っていた「早い段階で手を打ち、早期に回復させること」と。病気に例えるなら、手遅れとならないよう早期に治療することである。

しかし、日本は資源回復スピードが最も早い禁漁という手段を使うことはまずない。


会議ではこのような漁業者の発言が多かった。

「資源は回復傾向にある」
「厳しい規制はやらないでほしい」
「魚は増えたが漁師がいなかったでは本末転倒だ」


はじめのころは「皆さん、礼儀正しい発言だな」と感心していたが、午後になって「なんでみんな同じことを言うんだろ?」と疑問を感じ始めた。

これが何を目的としているのか、すぐにわかった。
昨年12月にフィジーで開催されたWCPFCの国際会議で日本は袋叩きにされた。
それに対する水産庁側が考えた作戦だろう。もしくは全漁連あたりが作文を配ったのかもしれない。
「日本は資源が回復している。規制が長引けば日本の漁師は絶滅する。だから初期資源の20パーセントに回復させるというアメリカ案は辞めてほしい。」ということを漁業者に話させたのだ。

※後日、全漁連から全国の漁協などにフォームが送られていたことが判明。補助金など地方の漁業支援の金の動きを水産庁が握っているので逆らえない。言いなりになるしかないのだ。


WCPFCの会議では「日本は科学をマニュピレート(操作)するな」と言われた。
今度は「日本は質問をマニュピレートするな」と言われるかもしれない。


参考にしてください。
「国際会議で完全敗北後の水産庁」
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-456.html


俺は3回質問させていただいた。最後は「皆さん同じことばかり言いますね。作文でもあるんですか?」「今年2月に釣り人2229人のアンケートを取りましたが、漁業者の皆さんと全く反対の結果が出ています」と発言した。前列にいた外国の参加者の間から笑い声が聞こえた。振り向いて笑っている方も数名いた。皆さん気づいていたのだろう。


釣り人には圧力も利権も補助金もないので、真っ正直な結果がでる。

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もちろん参加者の中には自分の意見を堂々と話した人もいた。ただ、それが少数に感じたのは事実である。

こんな会議に何の意味があるのか?
疑問を感じたのは事実である。
そして水産庁「もしくは全漁連?」はこんなことをやって恥ずかしいとは思わないのか?

漁業者の発言には「お上には逆らえない」という空気を俺は強く感じた。

かつては巨大なクロマグロで栄えた漁港が、大きなクロマグロが獲れなくなりヨコワ(幼魚)専門の漁港になっていた。組合長「ヨコワを獲って生計を立ててます」。なんとも寂しい。

水産庁関係者も漁業者同様長期の規制、高い資源回復目標に否定的な意見が多かった。

目の前しか見えない日本人。
漁業者はもう余裕がないのかもしれない。
何か悲しく感じる会合である。



外国の参加者(ISC議長、各国代表、NGOなど)からは「増えたと言っても、それは一番悪いときから少しだけ増えたかもしれないが、それはまだまだ増えたと言えるものではない」「早期に目標値まで回復できれば漁獲枠を増やすことができる。まずは安全な初期資源量の20パーセントまで回復させるべき」「いま、枠を増やしたら、元の最悪の状態に戻ります」と長期展望にたった冷静な発言が多かった。

WCPFCの議長も「B020パーセントは国際合意です」とはっきりと答えていた。
B0(ビーゼロ):初期資源量、推定65万トン

もしかしたら幼魚(ヨコワ)は増えているかもしれない。でももう少し待てばマグロと呼ばれるようになるのだ。5キロのヨコワなんて5000円もしないだろう。3年待てば50キロになり、1匹が25万円以上になるだろう。3年で50倍になるのだ。もう3年待てば100キロになり、100万円くらいになるだろう。6年で200倍である。

あるマグロ漁師に聞いてみた。

俺「大きなマグロを釣りたいとは思わないのですか?」
漁師「大きいマグロを釣りたいのはマグロ漁師の本能です」



我が国の問題はクロマグロだけではない。かつてはニシン、そしてホッケ、スケソウダラ、カタクチイワシ、サバ、シシャモ、イカナゴ、サンマ、スルメなどなど、戦後大幅に資源を減らしている。

水産庁は1948年に誕生した。その目的の一つが水産物の資源管理であることは言うまでもない。

ところが水産資源は大幅に減り、水揚げの減少を止めることができない。

世界のほとんどの国の水産業は成長産業なのだが、日本は衰退産業なのである。

国連の食料農業機関(FAO)では以下のように定めている。※一部抜粋

第6条「一般原則」
魚を獲り過ぎたり獲り過ぎてしまうような漁獲能力を持ったりしないこと(第3項)
最良の科学的情報に基づき管理を行うこと(第4項)
予防的アプローチを適用すること(第5項)
小さい魚などは獲らないような選択性のある漁具を使用すること(第6項)
魚などの生息地を守ること(第8項)
ルール違反の漁業はしっかり監視し、取り締まっていくこと(第10項)
小規模で伝統的な漁業を大切にしていくこと(第18項)


果たして日本はこの一般原則をどこまで守っているのか?
俺の目にはほとんど無視しているようにしか見えない。


水産庁サイトからの発言には疑問に感じるものも多かった。

産卵場の規制に関して、このような発言があった。

1.「地中海は産卵場を保護してない。産卵期に待ち伏せて一網打尽である」
2.「日本海側で産卵期にまき網で漁獲される個体は3歳4歳が多く、ほとんどが初産卵であるという発言があったが、3歳から7歳ではないのか」


1に関しては水産庁所管の国立研究開発法人「水産研究・教育機構」から以下の現況報告がある。

平成26年度国際漁業資源の現況

ICCATでは様々な漁業規制を行っている(ICCAT 2014d [Rec.14-04])。禁漁期は、はえ縄については6月1日~12月31日(ただし、地中海及び東部大西洋の一部(西経10 度以西、北緯42度以北、及びノルウェーEEZ内)は2月1日~7月31日)、まき網は5月26日~6月24日以外(ノルウェーEEZ内は6月25日~10月31日以外)とする。

ようするにまき網は5月26日から約1か月しか漁ができないのである。これは規制であり、資源保護を目的としていると言って間違いないだろう。地中海でのまき網の漁獲も2007年は22000トン以上あったが、禁漁期間を設けた結果2011年は4300トンまで減少している。

2の日本海の3歳から4歳の個体が多いという根拠は、日本海側の産卵場で漁獲したマグロのほとんどが水揚げされる境港のマグロのアベレージサイズのデータを見ればわかる。
2007年 43.9キロ
2008年 50.0キロ
2009年 53.2キロ
2010年 37.6キロ
2011年 40.7キロ
2012年 65.0キロ
2013年 34.8キロ
2014年 35.6キロ

3歳は30キロ前後、4歳は50キロ前後、5歳だと70キロ前後である。


水産庁や漁業者から初期資源量に疑問の発言が相次いだ。そんな仮定の数字にこだわる理由がわからないというような発言だった。

俺は資源の豊かな海を世界中で見てきた。資源管理に成功した海はとにかく豊かである。カナダのプリンスエドワードでは沿岸から1キロ、港から10分くらいのところで300キロ以上のクロマグロが次々とヒットする。アメリカのケープコッド、ノースカロライナも100キロオーバーのクロマグロが行くたびにヒットする。マイアミでは150キロを超すグルーパー(ハタ)が毎日釣れる。

日本も江戸時代、明治時代のエンジンのない時代に大きなマグロがいっぱい獲れたという文献がある。東京大学出版会の「日本漁業史」には明治24年に沿岸で540万貫(約2万トン)のマグロが獲れたという記録が残っているのだ。そしてそのころからすでに乱獲という文字も使われていた。

「乱獲が進み、漁場は沿岸から沖合へと移っていった」

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江戸時代のマグロ漁。こんな近くでマグロが獲れたのだ。

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資源が増えれば漁師同士のもめ事も、釣り人とのもめ事も減るだろう。

豊かな海は人の心も豊かにする。

それはカナダの漁師から学んだことである。そこには漁師と遊漁、釣り人の間でトラブルはない。

初期資源量がデタラメだという科学的根拠はないのだ。


さて、水産庁の持論である「親と子の相関関係はない」だが、俺はこんな馬鹿げた話(屁理屈ともいう)といつまでもやりあうのは時間の無駄と感じている。親と子の相関関係がない生物なんてこの地球上に存在しない。親がいなければ子は産まれないのだ。

それよりも重要な問題は、経済的な有効利用である。限りある資源をいかに有効に使うか、それは何よりも大切な問題ではないのだろうか。

我が国の成魚(30キロ以上)の漁獲だが、昨年は4103トンの水揚げがあった。そのうち3122トン、なんと76パーセントが6月と7月の2か月に集中している。その2か月は産卵期である。昨年の7月1日は日本海側だけで約300トンのクロマグロがまき網で獲れた。たった1日で300トンである。日本海側で一番大きい境港では処理に4日間もかかった。当然境港では大暴落。3日は安値がキロ200円、4日は平均単価キロ384円だった。冷凍のキハダやメバチより安い。築地に送られたマグロも破格の安値、さらに売れ残りもあった。これを経済乱獲という。全くの資源の無駄遣いである。


昨年7月の境港の水揚げ単価。あまりにも安い。

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築地でのキロ単価は2008年が1360円、2009年が1260円、2015年が1120円、2016年が1077円と年々安くなる傾向である。

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売れ残り


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美味しい時期に獲る、大きく育てて獲る、漁獲を集中しない、それが賢い漁業である。
美味しくない産卵期に集中して獲るのは一番愚かな漁業である。単価も暴落する。こんな誰でもわかることが日本では長年続いているのだ。


早期に確実に回復させるためにはすべての漁法において厳しい規制は必要である。そしてまき網に獲るなとは言わない。集中して獲るのは改めるべきだ。また船上で生きたまま処理をするなど、高く売る方法を考えて実行すべきだ。現状は同じ時期に同じサイズを獲ると、まき網と定置、はえ縄、一本釣りではキロ単価に3倍前後の開きがある。7月だとボストン産のクロマグロは国産まき網マグロの10倍くらい高い。

この産卵期のまき網漁に関して7名の外人に聞いてみたが、全員が「産卵期は保護もしくは規制すべき」「産卵場で規制すると他の場所で獲ることになるので期間を決めて禁漁、もしくは規制すべき」「日本はそんなにまき網会社が強いのですか?」と否定的な意見ばかりだった。

資源を増やすのは重要な課題だが、単価を上げて限りある資源を有効に使うことも重要なことである。


左から真田先生、PEWのAmanda Nicksonさん、俺、PEWのJamie Gibbonさん、右の二人は忘れました。

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EU代表のJosu Santiagoさん

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最後に水産研究教育機構の宮原理事長(農水省国際顧問)の総括の一部を紹介します。

産卵期のマグロは経済的には価値がないわけだから、経済的に価値がある獲り方をすべきだということは論を待たないわけで、産卵に入った魚を獲るのは絶対に避けたほうがいい。
遊漁に関してはデータの収集が今後必要。(レギュレーションなど)前に進めたい。


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素晴らしいお言葉をありがとうございます。

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※この2枚は宮原さんが水産庁の次長だったころの写真です。


会合2日目の終了後はみんなで宴会&ミーティング。左から真田先生、森君、北海道の高松さん、壱岐の富永さん。

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最後は「イサリビ」(未来も魚を食べるぞ通信)の取材を受けました。次号にちょこっと載る予定です。

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2017/01/24

成果はあったのか?

国立研究開発法人「水産研究・教育機構」主催の成果発表会に行ってきた。
水産庁の影のドンと言われる宮原理事長がこの最高責任者です。国際マグロ会議(WCPFC)に政府代表で出席した太田審議官も来てました。

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俺の成果は宮原さんと対談の約束を取れたことです。いつでも来てくださいと言われました。俺は話し合うことがいつも一番だと思ってます。


開会の挨拶をする宮原理事長

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会での主なやりとり

質問1
「茂木陽一です。100以上質問したいことがあるんですが、時間もないので一つだけ質問します。マグロとカツオとメカジキのお話を聞きましたが、カツオとメカジキは電子標識(アーカイバルタグ)による回遊調査のお話がありましたが、クロマグロは増える増えないのシミュレーションが主で、タグによる回遊調査のお話がありませんでした。俺は何度もニュージーランドに行ってますが、アメリカからジョージ・シリンガーと言う若い学者が来て毎年40本のポップアップタグをクロマグロに打ってました。アメリカのノースカロライナでは釣り船でさえアーカイバルタグを打ってました。カナダのプリンスエドワードでは目の前で何匹もタグを打ってリリースしているのを見ています。アメリカの西海岸でもたくさんのクロマグロにタグを打ってリリースしています。その数は数千本になると思います。そしてその調査の結果をインターネットで確認することもできます。しかし、日本では打ってるのか打ってないのか、回遊経路はなど水産庁のサイトを見ても何も出てきません。
先ほど産卵親魚の話が出ましたが、3歳ころは日本海で、5歳ころから太平洋側という推論のお話でしたが、そんなことは産卵個体にタグを打って調べればわかると思います。また日本海も昔は5歳以上のマグロがたくさん産卵してました。乱獲で大型がいなくなり、3歳の大人になったばかりのマグロが産卵しているのではと考えてます。日本海のマグロと太平洋側のマグロの産卵個体にタグを打って調査するか、DNA鑑定など調べるべきだと思います。また日本海群と太平洋群で分けて産卵個体を調査したらどうですか?ところでいままでどれだけ打ってきたのですか?」
水産庁「マグロの報告ではそのような話はありませんでしたが、タグを打って調査はしています」
俺「ですから、どのくらいのタグを打ったのですか?」
水産庁「耳石などからもいろいろなことがわかってきています」
俺「そんなことは聞いてないです。何本打ったのですか?」「水産庁の偉い人が前の席にいっぱい座ってますから、誰か答えられると思います」
右側の最前列から「10本」
俺「わかりました。たったの10本ですね。ありがとうございます」

クロマグロを一番獲り、一番買って、一番食べている日本がたったの10本。ビックリしました。10年前から打っているとしたら年に1本です。そんな少ないタグでは産卵個体の回遊、生態、正確な親魚資源量の調査は出来ないと思います。アメリカは日本の100倍以上もタグを打ってます。



これはアメリカが調査した太平洋クロマグロの回遊経路。太平洋クロマグロは子供のころに一度だけアメリカ西海岸まで回遊することがわかっている(回遊するのはかなりの個体数と思う)。2~3年その海で成長して大人(3~5歳)になるころは日本近海に戻ってくる。そのあとは2度と渡らない。

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ソース
http://rtseablog.blogspot.jp/2011/06/tagging-of-pacific-predators-decade-of.html



これは大西洋クロマグロのタギング調査。産卵親魚の回遊だと思う。生まれたところに戻って産卵するというのがよくわかる。
※大西洋クロマグロの産卵場は地中海とメキシコ湾

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ソース
http://news.stanford.edu/news/2005/may4/tuna-042705.html



これはミナミマグロのタギング調査

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このように海外のサイトでは、タギング関係の報告を無数に確認することができる。
この二つで検索すれば、数え切れないほど出てくる。
Tuna Tagging

ところが日本が調査した太平洋クロマグロ産卵個体のタギング調査は一つも出てこない。

世界で一番クロマグロを利用しているのに、実に不思議である。



質問2

続いて将来予測の質問をしました。平均加入が続くと2032年には現在の20倍近い30万トンに達します。
俺「そのシミュレーションでは平均加入が続くと2032年には30万トンに増えるようですが、マグロが食べるエサはあるのですか?」「餌は大切です。毎年行っているカナダではニシンが回遊してようやくマグロ漁が本格的になります」「先ほどのお話ではサンマも危機的、そしてスルメも史上最低レベルまで資源は減っていると聞いてます。餌が無ければマグロは育ちません」「この数字が信頼できるならデモはやりませんけど」(笑)
水産庁「それは計算上だけのシミュレーションで、餌や環境のことは計算に入れてません」

そんなグラフを見せて、みんなが納得するのですかね?
30万トンのマグロのお腹を満たすには最低でも年間300万トンの餌が必要だと思います。ありえない数字です。



これが将来予測。単純に計算しただけである。

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初期資源量とか、歴史的中間値に関しても質問しました。初期と言うのは紛らわしい言い方で、正確には「漁業を止めればこのくらいまで増えるだろう」という推定値です。初期資源量65万トンは簡単に考えておかしな数字です。現在の餌の資源量を考えれば20万トンが限界だと思います。歴史的中間値というのも、1952年以降の中間値だから、1952年以降の中間値と言うべきです。マグロの漁獲規制の基準がいっぱい獲れていた2002年から2004年と言うのもおかしいです。直前の2012年から2014年の平均値にすべきです。こうした背景にまき網を擁護するという魂胆が俺には見えてきます。


サンマなどの漁場がどんどん東に移動しているのも、大きな問題です。もしサンマがEEZの外側にしか集まらないようになったら、クロマグロはそこまで食べに行くでしょう。そうしたら確実に中国のまき網、虎網が狙うと思います。EEZの中の水産資源を回復させないと日本の水産業はさらに加速して衰退します。せっかく世界で6位のEEZ(排他的経済水域)を持ちながら、まったく有効に利用してません。



標識タグからわかったカツオの移動

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カツオは20℃以下の水温を嫌う。

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沖縄方面から北上するカツオ

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電子標識で推定したメカジキの回遊経路

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サンマは日本から離れれば離れるほど小さくなる。漁期も早い。

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漁獲も減っているが、漁期も年々短くなっている。

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漁場はどんどん遠くなる。時間も燃料代も増え、サイズも小型が多くなる。

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2015年のサンマの漁獲はすべての国が減少している。

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人工衛星で漁船の動きや、どこの船なのかがわかる。

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我が国のEEZ外で漁をする台湾や中国の漁船。集合しているところの、どれがサンマ漁で、どれがサバ漁かなどもわかりつつある。

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全員の発表が終わって質疑応答が始まった。森君も質問した「回復目標の達成率をもっと高く設定するべきだ」

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終わったとは宮原理事長と中野さんにダイレクトに質問。そして宮原理事長に対談をお願いしたところ、喜んで受けていただいた。

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森君も熱心に聞いてました。実に頼もしい若者です。

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終わって一言。

やはり話し合うことが大切。

わからないことは聞くこと。

それにしても質問者が少ないのにも驚いた。疑問て感じないんでしょうか?


さて締め切りギリギリの写真集のキャプションを片付けなければ・・・
2016/12/18

国際会議での完全敗北後の水産庁

今年の7月3日に境港を訪れた。面と向かい合い、建設的な意見交換ができたと思っている。

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まき網関係者と水産庁は産卵期のまき網を強く擁護するが、俺はこれこそが資源崩壊の主因だと考えている。

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まき網関係者「まき網は産卵期しか獲れないんです」
水産庁職員「まき網は産卵期しか獲れないので、その邪魔をしないでください」
水産庁トップ「産卵期に獲ろうが、産卵後に獲ろうが、同じ1匹である。資源への影響は同じ」


俺「境港に水揚げされるクロマグロのほとんどが初産卵。1回も産まずに獲るのと、1回産ませてから獲るのでは資源への影響は当然ある」

そして、産卵期しか獲れないと言っていたのだが、9月以降、12月上旬にかけて、何度もまき網による大量の水揚げが確認されている。

6月から7月は産卵期なので、キロ単価は激安(境港の最安値はキロ200円)だが、12月でもまき網のマグロは1000円前後だった。
一本釣りや、定置、はえ縄で獲ればキロ5000円以上するのだが。


7月下旬は青森県一のクロマグロ水揚げを誇る深浦漁港を訪れた。マグロ釣り界の第一人者佐藤イチローと深浦組合長に会い、2時間ほどお話を聞かせていただいた。わかったことは深浦と言えども、経営は苦しく、組合員も漁船数も減少の一途であるということ。
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さて、ここからが本題である。

言い訳も逃げるのも見苦しい。

水産庁の国際会議(WCPFC西部太平洋マグロ類保存委員会)で孤立、敗北したことに関しての自己弁護です。

太田審議官「未成魚500尾を獲っても500倍の重さの成魚を1尾獲っても漁獲高は同じ」

未成魚の500倍のマグロって、いったい日本近海に何匹いるのか?
未成魚=30キロ未満

例えがぶっ飛びすぎて理解できない。


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太田審議官「2034年に親魚を初期資源量の20%水準、直近の7.7倍へ回復を疑問視」

アメリカ、EU、太平洋諸国は太平洋クロマグロの資源量を初期資源量の20パーセント(約13万トン)まで回復させるべきだと言ってるだけ。どこが疑問視(高い設定)なのか?
ところがカツオは60パーセントまで回復させるべきだと日本は主張している。ダブルスタンダードではないか。
太平洋クロマグロ=産卵場がほとんど日本のEEZ内で日本の漁獲が世界一。
カツオ=産卵場はほとんど日本のEEZ外で太平洋諸国の漁獲が多い。


太田審議官「当時の大西洋では科学者の勧告をEUが無視し、生物学的許容漁獲量(ABC)の倍ほどの漁獲量を設定。しかも違法漁業が横行し、実漁獲量はさらに倍近い値だった。一方、太平洋は科学者の勧告に従っており、大西洋のような違反操業はない。一緒くたにするなら乱暴だ」

大西洋は2008年ごろまで無報告の漁獲が多かったが、その後、大幅に漁獲枠を削減、まき網船や定置網の船にオブザーバーを乗せることを義務付け、マグロ一匹一匹に標識タグ(産地がわかるように)を付けるなど、徹底した管理で違法漁獲、違法密輸ルートを根絶させた。
その違法で獲ったマグロのほとんどが日本に入っていたことも調査でわかっている。
現在のウナギと同じように、違法マグロは簡単に日本に入っていた。ところが、ICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)はその違法ルートを断つことに成功した。

そんな違法なマグロを買っていた日本に何が言えるのか?
泥棒が盗んだ金をさらに金を払って受け取っているのと同じである。


なんで日本はウナギの違法ルートを規制できない。
なんで日本は産卵期のマグロを獲り続ける。
なんで日本はまき網船、定置網にオブザーバーを乗せない。

さらに、まき網が蓄養いけすに種苗を移すとき数を確認するのだが、その確認方法がなんと目視。しかもオブザーバーはいない。さらに蓄養中に死んだマグロの無報告海上投棄も業界では知れ渡っている。

大西洋は初期資源量の7パーセントまで減少したのを50パーセント以上まで資源量を回復するのに成功した(現在の親魚資源量は60万トン以上)
太平洋は初期資源量の2.6パーセント、1.7万トンしかいないのに、まき網に対しては実質獲り放題の規制しかやらない。
まき網の成魚の枠は3098トンだが、この10年間達したことがない。これは規制とは言わない。

漁業者をかばうような表向き発言は綺麗に聞こえるが、現実は漁業者をどんどん追い詰めている。
その言葉に騙されてはいけない。よく考えれば誰でもわかる。この言い訳はすべて天下りと境港のまき網擁護に繋がっている。

水産庁は会議では一度アメリカ案(2034年までに初期資源量の20パーセントまで増やす)を拒否したが、その後、大本営からの指示を受けて(たぶん)アメリカ案を受け入れた。あまりに強く非難され孤立したので、その場しのぎの受け入れだった。帰国後、言い訳とアメリカ案を否定するような発言を繰り返している。海外でどんだけ袋叩きにされても、日本に戻れば怖いものなしなんだろう。
こんなことでは、日本の未来は真っ暗である。

その場しのぎの日本。それが今の衰退した水産業に繋がっているのだ。

国際会議ではこんな発言があった。そのとき会場の拍手が最高潮だった。※音声は確認済み。

「日本の資源管理は赤ちゃんのよちよち歩き(baby steps)」
「日本は進んでいるというけど、カニと同じで横に進んでいる(Crab Step)」
「日本は科学を操作(Manipulate)するな」



世界は日本が失敗の連続だということをよくわかっているのである。



赤い太い線が今回要請されたアメリカ案。当初激しく反対していたが、袋叩きに遭い最終的に日本も賛成した。緑の線が日本案だが、世界は日本の失敗を見続けているのでまったく相手にされない。

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ICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)は2008年から厳しく資源管理を開始した。

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その結果、2010年ごろから急激に資源が回復。現在の親魚資源量は60万トン以上と推定されている。
ちなみに太平洋クロマグロの親魚資源量は17000トン。大西洋の40分の1である。


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我が国の成魚(30キロ以上)の漁獲枠は4882トンだが、2009年以降達したことがない。これで規制していると言っても誰も信じない。

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さらに大中まき網の成魚の漁獲枠は3099トンだが、10年間一度も到達してない。頑張っても獲れない数字は規制とは言わない。

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さらに一番美味しくない産卵期に大量に獲るので、値崩れ、売れ残りとなる。

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最後に参考資料として、クロマグロの成長スピード。
この成長の早さを見ると3年も禁漁にしたら、資源は一気に回復すると思うのだが。せめて産卵期くらいは禁漁にできないものか。
いまのままではクロマグロに限らず、サンマもサバもスルメもホッケもタラも、ほとんどの魚に明るい未来はない。


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我が国には一度資源を増やしたあとに、持続性を考えた漁業をやるという考えはないのだろうか?

日本以外のほとんどの国の漁業は成長産業なのである。

その違いだが、資源管理の差であることは間違いない。

世界の笑われ者になりつつある我が国水産業。

水産庁は、それを会議で身をもって感じたはずなのだ。

今からでも遅くない。